▲日産 リーフのカーセンサーnet上での掲載台数は217台。中古車の車両価格帯は約67万~約369万円となっている(2015年5月20日現在) ▲日産 リーフのカーセンサーnet上での掲載台数は217台。中古車の車両価格帯は約67万~約369万円となっている(2015年5月20日現在)

EVの普及に欠かせないのは電池性能の向上とインフラの充実

2015年に日本国内での発売が予定されているVWの電気自動車、e-up!とe-Golf。また、テスラのクロスオーバーSUV、モデルXも今夏発売という情報が漏れ伝わっている。一見するとEV(電気自動車)の普及が着々と進んでいるよな印象を受けるが、実は、必ずしも当初の予想どおりというわけではない。むしろ、当初の見立てよりも普及が遅れていると言っていいだろう。実際、各国の販売台数におけるEVのシェアは1%を割り込むニッチな存在だ。

▲e-up!の満充電での航続距離は185km(JC08モード)。正直、もう少し頑張って欲しいところだ ▲e-up!の満充電での航続距離は185km(JC08モード)。正直、もう少し頑張って欲しいところだ

それでも各社がEVから撤退しないのはなぜか。ひとつに、電池性能の向上が加速していることが挙げられる。

VWは電池性能を今の約2倍に高めるメドを立てていると公言し、日産・ルノーも、遅くとも2020年までに航続距離を現行の2倍にあたる400km以上に引き上げると明言。東北大学とトヨタ自動車は次世代電池である「全固体電池」で、充電時間を従来の電池の1/10に短縮する実験に成功した。

また、インフラである充電スポットが充実しつつあることも、理由だろう。実際、充電器はトヨタ自動車と日産、ホンダ、三菱自の4社が会社を設立するなど、徐々に拡大している。

逆に言えば、より高性能の電池開発と充実したインフラ整備が、普及へのブレークスルーということだろう。

走りながら車を充電!? 電界結合方式ってなに?

そして、今注目されているのが次世代のインフラ研究。その代表格が「非接触充電」だ。メーカーによって方式に違いはあるが、ケーブルを使わずに充電する仕組みは同じ。

例えば、日産が採用しているのは「電磁誘導方式」だ。駐車場路面に設置した「地上送電ユニット」のコイルに電流が流れることで、地面と垂直方向に磁束が発生。磁界が車両に搭載した「車載受電ユニット」のコイルを通ることで、コイルが電圧が発生させて電気エネルギーを供給する。

トヨタは「磁界共鳴方式」を採用しており、地面に設置したコイル(送電側)と車両に設置したコイル(受電側)のコイル間における磁界の共鳴現象を利用して、電力を電送する技術を活用している。

磁界共鳴方式は、送受電装置間の距離が1~2mあり、位置ズレに強いという特徴がある。道路に埋め込んでも影響が少ないので、走行中の給電にも向いており、高速道路での走行中給電の研究が進んでいる。

▲トヨタの非接触充電システムのイメージ。駐車場の決まった位置に駐車すれば、コンセントなどを使用することなく充電できる。充電電力は2kWで、充電にかかる時間は90分となっている ▲トヨタの非接触充電システムのイメージ。駐車場の決まった位置に駐車すれば、コンセントなどを使用することなく充電できる。充電電力は2kWで、充電にかかる時間は90分となっている

さらに、豊橋技術科学大学では大成建設と共同で、走行中のEVへの給電を目的とする「電界結合方式」を開発。タイヤに埋め込まれた金属製のスチールベルトなどを利用して、高周波エネルギーに変換した電流を路面化に流し、タイヤを介して電力を供給するシステムだ。現在は人を乗せた電動カートを走行させている段階だが、将来は高速道路での給電走行等の可能性にもつながると考えられている。

電池の高性能化とインフラの充実に加えて、非接触充電が実現したら、EVは有望な次世代自動車になるだろう。現時点で経産省や環境省が考えているロードマップでは、PHEVやHVにお株を奪われがちだが、技術のブレークスルーによっては大化けするかもしれない。

text/笹林司