▲トヨタとマツダが業務提携に向けて合意したことは、2015年5月13日に発表された。周辺取材を行ったところ、少なくとも3年前から技術陣の交流が活発化していたことがわかった ▲トヨタとマツダが業務提携に向けて合意したことは、2015年5月13日に発表された。周辺取材を行ったところ、少なくとも3年前から技術陣の交流が活発化していたことがわかった

プラットフォーム共通化の可能性を模索か

トヨタが北米で展開している若者ターゲットのブランド、サイオンに初のセダンがラインナップされた。「iA」を名乗るこの新型車は、マツダ2(日本名デミオ)のセダンをベースにフロントまわりのデザインを変更したモデルだ。トヨタとマツダの提携に関してスクープ班は調査してみた。

▲トヨタが、北米専売ブランドのサイオンから発売したiAは、マツダ デミオのセダンをベースにしたOEMモデル。生産は2014年に稼働が始まったマツダのメキシコ工場で行われ、トヨタには年間5万台が供給される予定 ▲トヨタが、北米専売ブランドのサイオンから発売したiAは、マツダ デミオのセダンをベースにしたOEMモデル。生産は2014年に稼働が始まったマツダのメキシコ工場で行われ、トヨタには年間5万台が供給される予定

マツダを相手に選んだこの提携は、トヨタにとって方針の大転換とも言える。トヨタは2007年から北米にある富士重工のSIA(スバル・オブ・インディアナ・オートモーティブ)にカムリの生産を委託しているが、今回のサイオン iAは、いわゆるOEM供給だ。

つまり、「マツダが設計」して「マツダの基準」で部品を発注し、「マツダが組み立てる」車をそっくり受け入れて販売するというカタチなのだ。トヨタが創業以来かたくなに続けてきた『トヨタ・スペック(=TS)』の部品しか使わないという大前提を放棄したのだ。

今回のOEM供給は、2012年11月に発表された。この時点でトヨタはTS必須の大前提を破棄したと言えるだろう。これより遡ること2年半。2010年3月にトヨタはマツダへハイブリッドカーの技術を供与することを決めた。さらにそこから6年前の2004年2月、トヨタのネットワーク情報サービス、G-BOOKをマツダに提供することで両社は合意している。

こうした一連の発表内容を踏まえて考察を進めると、トヨタとマツダの接触は、2003年半ばに始まったようだ。当初はトヨタがマツダに「何かを提供する」関係だったが、9年後にはマツダがトヨタに車両をOEM供給する事態に変わった。そして、2015年5月、ついに両社が業務提携を発表した。

供給関係が入れ替わったトヨタとマツダの関係

スクープ班は、両社のプラットフォーム統合もありえるのでは? と予想する。すなわち、TNGA(トヨタ・ニューグローバル・アーキテクチャー)とスカイアクティブボディの合体だ。TNGAに関しては2015年8月4日の記事でお伝えしたとおり、構造的には真新しいものはなく、電子プラットフォームの刷新に重きが置かれている。

一方のマツダは、すでに現行スカイアクティブボディの限界を見切っている。2017年度から始まる新しい中期経営計画「構造改革ステージ2」を受けて登場する第7世代商品郡「SKYACTIV GEN2(スカイアクティブ第2世代)」では、プラットフォームの見直しが必須だという。引き続き、開発・生産・調達が一体となった総括企画で環境&安全対応に重点を置いた、コモンアーキテクチャーの実現を進めていく計画だ。

スクープ班の予想では、おそらくここにトヨタが合流し、ボディ設計と生産設備のあり方で、共同研究が行われるのではないだろうか。

▲TNGAの構造に革新的な部分は見当たらない。むしろ電子プラットフォームの刷新と軽量化、コスト削減に重点が置かれて開発されている。次期プリウスから採用される ▲TNGAの構造に革新的な部分は見当たらない。むしろ電子プラットフォームの刷新と軽量化、コスト削減に重点が置かれて開発されている。次期プリウスから採用される

トヨタ最新ディーゼルは、マツダと同じ技術を採用

情況証拠とも言えそうな密接な関係はすでに築かれつつある。トヨタが2015年6月にランドクルーザープラドに搭載した新しい1GD型ディーゼルエンジンは、マツダがスカイアクティブ-Dで採用したPCI燃焼を使っている。これは、燃料と空気をあらかじめ混合した状態を作り出してから着火させる技術で、異常燃焼が起きやすいディーゼルエンジンにおいてNOxとPM(粒子状物質)の生成を抑えることができる。

余談ながら、マツダはPCI燃焼を含むスカイアクティブディーゼルが評価され、2012年に日本燃焼学会から、技術賞を受賞している。

▲海外に続いて国内にも導入された、トヨタの新世代ディーゼルエンジンはまずランドクルーザー プラドに採用。マツダのスカイアクティブディーゼル同様、NOxとPMの発生を抑えるPCI燃焼が取り入れられる ▲海外に続いて国内にも導入された、トヨタの新世代ディーゼルエンジンはまずランドクルーザー プラドに採用。マツダのスカイアクティブディーゼル同様、NOxとPMの発生を抑えるPCI燃焼が取り入れられる

2.5L以上の大排気量ディーゼルを持っていないマツダは、今後トヨタ製ユニットを用いるかもしれない。このようにジワジワと強まっているトヨタとマツダの結束は今後も進展し、いずれプラットフォームの共通化へと発展する可能性もある。

※2015年9月16日現在における発表についての予測記事です。発表を保証するものではありません

text/マガジンX編集部 photo/マガジンX編集部、トヨタ