▲「敷地に入って、駐車場から奥に抜けるようなリゾート施設のような家に…」というのがOさんの希望。1階と2階のイメージを分け、主に来客用に使用している2階は別荘風に。また、できるだけ部屋数を減らして、広い吹き抜けやホールを優先した作りを希望した。コンクリート打ち放しや丸い壁を採用したのは、奥さまのリクエストによるもの▲「敷地に入って、駐車場から奥に抜けるようなリゾート施設のような家に…」というのがOさんの希望。1階と2階のイメージを分け、主に来客用に使用している2階は別荘風に。また、できるだけ部屋数を減らして、広い吹き抜けやホールを優先した作りを希望した。コンクリート打ち放しや丸い壁を採用したのは、奥さまのリクエストによるもの

L字形の土地を生かし、ガレージスペースと住空間をバランス

一歩足を踏み入れると、そこは日差しがタップリ注ぎ込むリゾート空間コンクリートの壁、白いカウンタック、黒いBMW …それらのクールさと、自然光の明るさとのコントラストが魅力だ。

場所は東京都下、武蔵野の面影を色濃く残す緑豊かな住宅街の一画。コンクリート打ち放しの塀に囲まれ、一見閉ざされ重厚な秘密めいた空間を思わせるが、一歩敷地内に足を踏み入れると、外界からは隔絶されながらも明るく開放的な独特の世界が作り出されていた。

表通りから路地を入ってすぐ右側に設置された門をくぐると、建物の玄関に向かってまっすぐにアプローチが続く。高い塀で囲まれていることで、外界の人工物は目に入らない。見上げると円形の塔のような建物とヤシの木、そして青い空が見えるだけだ。目の前はバス通りなのだが、不思議と車が往来する音はほとんど耳に届かない。個人用住宅というよりもリゾートに建つプチホテルのようだ。

右手前方には、Oさんの愛車ランボルギーニカウンタックが、まるでガラスケースに入れられた実物大のモデルカーのような佇まいで格納されている。エントランスから見えるのはリアビュー。巨大なリアウイングや太いタイヤが単なる車とは思えない独特の凄みを放っている。

カウンタックの姿は、アプローチを進みながらでも確認できる。縦長のガラス窓が壁面に等間隔で埋め込まれているから、まるでコマ送りの映像のように断続的に見えるのだ。そして突き当たりのパティオに立てば、カウンタックの精悍なフロントセクションを堪能できる。取材時はちょうど晩秋。ハラハラと舞う落ち葉、ガラスケースとコンクリートの壁、そしてタイルのフロアなどが相まって、まるで美術館のワンシーンを目にしているような錯覚すら覚えるほど。このあたりも、愛車をドラマチックに観賞するための緻密な計算に基づいたものに違いない。

O邸の特徴の一つとして、敷地がL字形をしているという点がある。そのため、駐車スペースは表通り側に設定し、奥まった部分を居住空間にするなど、基本的なレイアウトは地形により無条件に決定。さらにOさんの希望として、部屋数はできるだけ減らし、広い吹き抜けやホールを優先したいという点が設計担当者に伝えられた。

この点に関して設計担当者は、「L字形の敷地形状に対して、駐車スペース、カウンタックの格納、各部屋の日当たりなどのバランスに苦労しましたが、光や風通しのためにテラスを配置することで、空間をうまく接合できました」。その言葉どおり、どの部屋も窓が大きく、かつ効果的にレイアウトされているので、どこにいても外からの視線を遮断しながらも明るく開放的な空間を実現している。

同時に、ほとんどの場所からカウンタックの姿を見ることができるということも、Oさんのこだわり。1階のリビングルームや2階へ続く階段などからも、チラリチラリと見えるその距離感が絶妙で、たとえ車に興味のないゲストが訪れたとしても、これ見よがしな印象は皆無だ。

また、外界から遮断されているのに閉塞感がなく居心地がいいのは、建物周囲を取り巻くテラスの存在が大きい。もちろんこれは120坪という恵まれた敷地面積がかなえるものだが、Oさんの「隣家との距離を保ちたい」という希望に沿っている。そう考えると、エントランスの広い駐車スペースも、カウンタックを収めるガレージも、そのいずれもがテラスと捉えることができる。この存在によりすべての空間がつながり、家族や仲間、そして車たちの気配をいつも感じていることができるのだ。

家族、仲間、車…。みんなを一つに集めたい。そこは外界からは隔絶された居心地のいい空間。外からの視線を気にすることなく、楽しく過ごすことができる。まるで遊園地のような非日常の時間だ。そして、ひとたび門やガレージから一歩外に出ると、目の前の通りにはバスが走り、昔ながらの商店が軒を連ねるという、まさに現実の世界。そのギャップが、実に面白い。

▲パティオでは、仲間が集まり車談義に花を咲かせる。右手壁面のような窓が所々に設けられ、階段や廊下を移動中にも愛車が眺められる造形となっている▲パティオでは、仲間が集まり車談義に花を咲かせる。右手壁面のような窓が所々に設けられ、階段や廊下を移動中にも愛車が眺められる造形となっている
▲新車購入した645iカブリオレは22万㎞を走破。バットモービルをイメージし、数年前にマットブラックに塗装。エンブレムはすべてバットマンのロゴが冠されている▲新車購入した645iカブリオレは22万㎞を走破。バットモービルをイメージし、数年前にマットブラックに塗装。エンブレムはすべてバットマンのロゴが冠されている
▲パティオに面した和室では、アプローチに玉砂利を敷くなど洋から和への移行が考えられている ▲パティオに面した和室では、アプローチに玉砂利を敷くなど洋から和への移行が考えられている
▲カウンタックが格納されるガレージは、3方向が人の動線に面している。前後の扉はどちらも全開にできるので、車庫の自由度が高い▲カウンタックが格納されるガレージは、3方向が人の動線に面している。前後の扉はどちらも全開にできるので、車庫の自由度が高い
▲室内を移動していると、縦長の窓から愛車カウンタックの一部がうかがえる。その造形により切り取られたその様子は、まるで1枚の絵画を鑑賞しているように芸術的▲室内を移動していると、縦長の窓から愛車カウンタックの一部がうかがえる。その造形により切り取られたその様子は、まるで1枚の絵画を鑑賞しているように芸術的
▲「2階は別荘のようなイメージに…」というOさんの依頼。外界の人工物が目に入らないので、手軽に非日常が味わえる。広いテラスではBBQパーティも可能▲「2階は別荘のようなイメージに…」というOさんの依頼。外界の人工物が目に入らないので、手軽に非日常が味わえる。広いテラスではBBQパーティも可能
▲2階のゲスト用フロア。リビング、寝室、ダイニングが設けられている。「長期滞在も可能ですね?」との問いにOさんは笑って「そのとおり」と答えてくれた▲2階はゲスト用フロア。リビング、寝室、ダイニングが設けられている。「長期滞在も可能ですね?」との問いにOさんは笑って「そのとおり」と答えてくれた
▲知人からプレゼントされたというカウンタックは無垢の削り出しで製作された貴重な1台▲知人からプレゼントされたというカウンタックは無垢の削り出しで製作された貴重な1台

【武蔵野のプチリゾートホテル 設計・アーネストアーキテクツ】
■今回のこだわり:細部にまで念入りな作業を施し、高い完成度を実現
Oさんは知識や経験が豊富で洗練されたセンスの持ち主であると認識していました。そのためリビングルームなど、メインの壁の左官工事は特注でパターンを作成。キラキラと透明感のある骨材と刷毛引き模様のバランスにこだわって、何度もサンプルを作りました。この貝殻の粉末が混ざっている左官材は、1日で全面を塗るという施工計画を実施。8人の職人が横並びになって一斉に壁を仕上げたのですが、かなり神経を使い念入りに仕上げました
■主要用途:専用住宅
■構造:鉄筋コンクリート造
■敷地面積:398.82平米
■建築面積:222.67平米
■延床面積:317.82平米
■設計・監理:アーネストアーキテクツ株式会社 一級建築士事務所
■tel:03-3769-3333

text/菊谷聡
photo/木村博道


※カーセンサーEDGE 2014年2月号(2013年12月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています