▲今回のレーシングギア選びでお世話になったディージャックの大嶺店長。参加しているモータースポーツの種類やシーン、レベルに応じたギアをアドバイスしてくれる頼れるアニキ的存在 ▲今回のレーシングギア選びでお世話になったディージャックの大嶺店長。参加しているモータースポーツの種類やシーン、レベルに応じたギアをアドバイスしてくれる頼れるアニキ的存在

「でぇーい! こうなりゃヤケだ!」のお値段16万5000円也!

当連載の第6回目で、「『レースに出たい!』を叶える7つのマストアイテム」と題し、レーシングギアについて簡単に説明した。そこでは、国内のサーキットでレースに参加するために最低限必要なアイテムをピックアップし紹介した。

記事を読み返してみると、まるで私物を紹介しているかのような書きっぷりだが、実は筆者がこれまで参加したレースや走行会で着用していたレーシングスーツやグローブなどのレーシングギアは、シューズ以外、すべてカーセンサー編集部の備品を借りていた。

1年に数回しか出番のない備品とはいえ、この連載がスタートしてからというもの、ほぼ筆者の私物と化していたレーシングギアたち。サーキット走行の経験がある方はご存じだろうが、一生懸命走ると、ものすごく汗をかく。いや、走っているのは車なのだが、運転しているだけですごく汗をかく。寒いころはまだ良かったが、5月を過ぎたあたりから気温が上昇し、汗の量もハンパない。これを「しれっ」と編集部の倉庫に戻すのはさすがに気が引ける。ということで、大変遅ればせながらだが、マイ・レーシングギアを一式揃えることにした。

レーシングギア購入を躊躇していたのは、他にも理由がある。それは値段。とにかく高いのだ。考えみてほしい。読者諸兄の周りにレースに出ている友人知人が何人いるか。まず、需要が少なくマーケットも小さいため、価格競争が起きにくい構造がある。しかもJAF公認レースに出るためにはFIA基準8856-2000などに合致していなければならない、いわゆる規格品だ。したがって値段を下げてまで消費者にアピールする必要性が低い。

そんなこんなで、つい二の足を踏んでいたわけだが、今回は最新ギアの性能や値段などなどを皆さんにお伝えする使命感と、備品を私物化していた罪悪感から、やけっぱちの自腹購入に至ったわけだ。

今回揃えたのは以下のアイテム。
・レーシングスーツ ・レーシンググローブ ・レーシングシューズ
・バラクラバス(フェイスマスク) ・アンダーシャツ ・アンダーパンツ
・ソックス ・ヘルメット(現在、納品待ち)

本当は頭部および頸椎の保護装置である「ハンス」もマストアイテムなのだが、安くても4万~5万円とお値段がかなり張るため今回は見送った。仮に汗をかいても拭けば何とかなるという判断から、しばらくは編集部の備品をお借りすることにする。

新たな発見こそ、大人の趣味の醍醐味

マイ・レーシングギアを揃えるにあたり、通販ではなく、専門ショップで対面で購入することを決めていた。なぜなら、筆者自身にギア関連の知識がほとんどなく、選び方が分からなかったからだ。

そこで、東京は八王子にあるショップ「ディージャック」の門をたたくことに。こちらはレース参戦マシンの製作やメンテナンス、セッティングなどを行うかたわら、レーシングギアも取り扱っているショップ。つまりレーシングギアを使うモータースポーツシーンの視点からアイテム選びを手伝ってくれる、頼もしい存在という筆者の勝手な見立てから、チョイスした。

「専門ショップで対面で購入」と「モータースポーツシーンに近いショップ」という2つの条件は、結果的に大正解だった。何しろ、これまでずっと借り物暮らし。自分の体にフィットしているかなんて、望むだけでもおこがましかったわけだが、ショップ店長の大嶺さんの見立てたサイズのレーシングスーツを着てみると……、とにかく楽なのだ。ずっと座った姿勢で手足だけを激しく動かすという特殊な姿勢で着用するレーシングスーツは、カタチが猫背気味に作られているのだそう。そのフォルムがフィットするものを選ぶのが肝心なのだとか。

サイズ違いを2着ほど試したが、座った姿勢での肩や胸周りの“つっぱり具合”で微妙な着心地の違いが分かるなど、試着の重要性を実感。シューズやグローブも、スーツ同様、実際に試着してフィーリングを店長に伝えながら、ジャストサイズを見つけていくのも楽しい作業だ。

自分に合ったサイズを選ぶだけではなく、各商品の特徴やメンテナンス方法などを詳しく教えてもらえたのも、大きな収穫だった。また、大嶺店長からはレーシングギアの進化やモータースポーツ現場の最新事情なども教えてもらい、自分の知らない世界があることも分かった。こういった発見もまた、「専門ショップで対面で購入」と「モータースポーツシーンに近いショップ」ならではのメリットだろう。

▲マイ・ファースト・レーシングスーツ。「GP START SUIT」というアルパインスターズのレーシングスーツでは最廉価グレード。カラーはグレー×ブラック×レッド ▲マイ・ファースト・レーシングスーツ。「GP START SUIT」というアルパインスターズのレーシングスーツでは最廉価グレード。カラーはグレー×ブラック×レッド
▲最近のレーシングスーツは、生地が薄くて軽い。10年前の製品となる編集部の備品とは、着心地、疲労度、快適さなどすべての面において、格段に性能が上がっているようだ ▲最近のレーシングスーツは、生地が薄くて軽い。10年前の製品となる編集部の備品とは、着心地、疲労度、快適さなどすべての面において、格段に性能が上がっているようだ

レーシングスーツからシューズまで、ウェア関連はすべてイタリアのブランドである「アルパインスターズ」で揃えた。大嶺店長のアドバイスどおり、スーツは耐久性などを考え廉価モデルをチョイス。シューズは筆者にジャストフィットのサイズが存在した昨年モデルが残っていたため、それをゲット(ちょっと安くなっていたのもグッド)。

グローブは性能が格段に上がったという最新モデルをチョイス。ヘルメットを除くお値段の合計は、少しお値引きしてもらって16万5000円也。清水の舞台から飛び降りる覚悟のやけっぱち自腹購入だったのは間違いないが、意外や、プライスレスな新体験もできたので後悔はない。いやホントに。だからホントだって。

▲グローブは「TECH1-ZX GROVES」というグレード。アルパインスターズの最新カタログを見ると、唯一、外縫い構造を採用している。手のフィット感、ステアリングのグリップ感は非常に良い ▲グローブは「TECH1-ZX GROVES」というグレード。アルパインスターズの最新カタログを見ると、唯一、外縫い構造を採用している。手のフィット感、ステアリングのグリップ感は非常に良い
▲シューズは「TECH1-Z SHOES」の昨年モデル。カンガルーレザー使用。このモデルまで筆者のジャストサイズとなる10.5(USサイズ)が既製品として存在していたそうだ。スーツ、グローブ、シューズで偶然にもカラーが揃ってちょっぴりうれしい ▲シューズは「TECH1-Z SHOES」の昨年モデル。カンガルーレザー使用。このモデルまで筆者のジャストサイズとなる10.5(USサイズ)が既製品として存在していたそうだ。スーツ、グローブ、シューズで偶然にもカラーが揃ってちょっぴりうれしい
▲写真のバラクラバス(フェイスマスク)をはじめアンダーウエア(トップ、ボトム、ソックス)は黒で統一。すべて難燃素材で通気性も良いため汗をかいても快適だ ▲写真のバラクラバス(フェイスマスク)をはじめアンダーウエア(トップ、ボトム、ソックス)は黒で統一。すべて難燃素材で通気性も良いため汗をかいても快適だ

【CERCとは】
中古車情報誌『カーセンサー』の連載『CERC』のスピンオフバージョンである。カーセンサー本誌に収録しきれなかった話題を、同連載の語り手である本誌デスク本人が赤裸々に綴る。ちなみにCERCとはCarsensor Editors Racing Club(カーセンサー・エディターズ・レーシング・クラブ)の略。

【筆者プロフィール】
1970年生まれ。群馬県在住の編集・ライター。カーセンサー本誌の編集デスク担当。
2015年9月に参加したメディア対抗ロードスター4時間耐久レースでの惨憺たる結果から一念発起。運転技術を磨くべく、マツダ ロードスター(2代目)のNR-Aを購入した。

text・photo/編集部 中野