▲「これは内緒だけどね……」といろいろな話を聞かせてくれたボブ社長。ちょっと怖いけれど仲間のことは本気で信頼し、なにがあっても助けてくれるという雰囲気です ▲「これは内緒だけどね……」といろいろな話を聞かせてくれたボブ社長。ちょっと怖いけれど仲間のことは本気で信頼し、なにがあっても助けてくれるという雰囲気です

嫌いなものは扱わない。これってものすごく勇気がいること

日本のヒップホップシーン最前線でフレッシュな名曲を作り続けているスチャダラパーのMC、Boseが中古車情報誌『カーセンサー』にてお届けする人気連載「Bosensor」。カーセンサー本誌で収録しきれなかったDEEPでUNDERGROUNDな話をお届けっ!!

今回はボブオートにお邪魔した記事(関連リンク参照)の後編です。

Bose:店頭に並ぶ車、一貫性が一切ないね。本当に好きな車だけ並べているって感じ。しかもお店には看板が一切なし。理由を聞いたら珍しい車に釣られてフラッとお客さんが入ってくると作業の手が止まり既存のお客さんに迷惑がかかるからだって。普通なら新規のお客さんは大歓迎でしょう。商売のやり方が普通じゃないんだよ。

ボブ社長:そんなこと言うんですか、Boseさん。それ、褒め言葉です(笑)。

Bose:ちなみに前回、社長の愛車はジムニーと言ってたけれど、お客さんも軽自動車に乗っている人が多いんですか?

ボブ社長:「軽自動車からスーパーカーまで」とうたう大型店があるでしょう。うちはお客さんから「軽自動車とスーパーカー」と言われます(笑)。普段はスーパーカーに乗っていて、軽自動車でレースを楽しんだりしている人も多いんですよ。軽自動車もいろいろありますが、うちは遊びの軽がメインだから。

Bose:じゃあ店頭に並んでいる日産 Be-1やプジョー 306は普段のお客さんとは違う人をターゲットにしているの?

ボブ社長:フランス車はまず扱わないんですけど、同業者に押し付けられて乗ってみたら、これ好きかも!って思って。新規開拓はあまり意識してないですね。

Bose:ところで社長が自分の城をオープンさせたのはいつなんですか?

ボブ社長:独立してお店を開いたのは7年前です。それまでいくつかのお店で働いて、レースをやったりもしていました。あとはキャンピングカーを作ったりね。やっぱり自分が好きな車だけを扱うっていうのはひとつの夢だったんですよ。うちは軽自動車とスーパーカーと言われますが、店頭に並ぶ“それ以外”のやつらも僕が好きな車です。

Bose:好きな車だけなら、当然お客さんも自分の趣味に共感してくれるってことになるもんね。逆に下取りで入ってきても、社長が嫌いな車は一切扱わないの?

ボブ社長:扱わないです(キッパリ)。

▲「好きな車しか扱わないと言って、こんなに古いアメリカンピックアップまで並べちゃうんだもん。ある意味すごい!」とBoseさん。普通の感覚だとボロボロにしか見えないと思いますが、「これのよさが分かる人が買ってくれればいい」とボブ社長 ▲「好きな車しか扱わないと言って、こんなに古いアメリカンピックアップまで並べちゃうんだもん。ある意味すごい!」とBoseさん。普通の感覚だとボロボロにしか見えないと思いますが、「これのよさが分かる人が買ってくれればいい」とボブ社長

流行とは関係ないところでお客さんと一緒に育っていきたい

Bose:好きなことだけをやるって口で言うのは簡単なんだけど、メチャメチャ大変なんだよ。そこについてきてくれる人がいなかったらプロじゃないからね。社長はどんな車が好きなんですか?

ボブ社長:僕は戦う自動車が好きかな。それがレースだろうと、峠だろうと何でもいい。車で戦う。そこに魅力を感じますね。スピード以外に、“孤高の一台”という感じの車も存在自体が戦っていているから好きです。逆にお揃いのTシャツを着たり、ルールを決めたりして「みんな仲間だよ」っていう感じのは苦手でね。

Bose:でもお店に置いてある306とかBe-1とか、どっちかというと「みんな仲間」っていう雰囲気の車じゃないの?

ボブ社長:新しいフランス車なんかは仲間系だけれど、ここまで年式が低くなれば十分孤高の存在ですよ。ビンテージまではいかないけれど、デビューから20年以上たっているから残存している車は少ないし、長く乗ろうと思ったらいろいろ手入れも必要ですからね。

Bose:そうだよね。さっき306を久しぶりに見たとき、真っ先に感じたのが「小さい!」だったの。90年代にデビューしたときは、下に106もあったからむしろ「大きい!」って思っていたけれど、時代が変わって車のサイズ感も変わっていることをあらためて思い知らされたもんね。

ボブ社長:変わるのはサイズだけじゃないですよ。車には時代ごとに流行があります。そうだな、じゃあBoseさん、モテる車と言われたら何を思い浮かべます?

Bose:モテるやつかあ。女の子の趣味にもよるから一概には言えないけれど、例えば今どきのプジョーやシトロエン DSシリーズなんか、女の子から人気がありそうだよね。

ボブ社長:Boseさん、それは少し前までの話ですよ。今、車でモテたかったら迷わず現行型のヴェルファイア一択です! これは僕がかなりの女の子にいろいろな店……いや場所でリサーチしましたから間違いありません。鉄板です!

Bose:いったいどこで聞き込みしてるんだか(笑)。でもたしかに今どきの女の子たちはあの豪華なシートに座りたいって言うかもしれないね。

ボブ社長:僕の調査はどうでもいいんですが(笑)、何が言いたいかというと、流行りがあるということは、いつか必ずそこは廃れて次の流行りが生まれるんです。例えばフランス車が流行っていろいろなお客さんが来てくれるとしましょう。僕らはお客さんと一緒に育っていこうといろいろなことをやっても、流行が変わりお客さんたちが別のところに行ってしまったらお店はお客さんと育つことができない。じゃあ次の流行を取り入れようと考えてたらまた一からやり直しです。これじゃいつまでたってもお客さんもお店も育たないんですよ。

Bose:たしかにね。それって音楽も一緒ですよ。

ボブ社長:だったら最初から自分が好きなことを押し通して、数は少ないかもしれないけれど流行は関係なく「俺も好きだ」というお客さんと一緒に育っていければと思っているんです。

Bose:なるほど。カーセンサーnetを見てくれている人も、それぞれ好きな車があると思うけれど、自分の好きなジャンルでポリシーを持ってやっているお店と出会えたら楽しいだろうね。そういうお店を探すのは大変だと思うけれど、見つけることができたら最高だよ。昔から“中古車選びは店選び”というけれど、気の合うお店を探すのも中古車の醍醐味だってあらためて思えたな。みんなもそういうお店を探してみよう!

▲「フワフワした雰囲気の車はどうも自分と相性が合わない」とボブ社長。社長の我を通すお店はひと癖ありますが、ハマれば最高に楽しいカーライフが待っているはずですよ! ▲「フワフワした雰囲気の車はどうも自分と相性が合わない」とボブ社長。社長の我を通すお店はひと癖ありますが、ハマれば最高に楽しいカーライフが待っているはずですよ!
text/高橋 満(BRIDGEMAN)
photo/尾形和美