原稿執筆時点でカーセンサーnetに1台のみ掲載されている希少車を紹介するこの企画。今回、2013年4月1日に発見したのは「シトロエン DS」です。1955年から1975年まで生産されたフランス屈指の高級車。「宇宙船」と呼んだ人もいれば「空から墜ちてきた」と評した人もいたほど何もかもが画期的でした。コアなシトロエンファンには根強い人気があり、現在1台しかカーセンサーnetに掲載されていないのが不思議なくらいです。それだけ市場に出回らないのか、出てきてもすぐに売れてしまうのでしょう。

個性的なデザインもさることながら、シトロエンが開発したハイドロニューマチック・サスペンション(油圧シリンダー、油圧ポンプ、そして窒素を用いたエアスプリング)はあまりにも有名です。独立懸架式サスペンションですらあまり採用されていなかった時代に、当時からすれば究極のフラットライドとハンドリングを実現。世界を震撼させました。ブランドに頼った表現はあまり好みではありませんが、「ロールスロイスがこのサスペンションを採用した」と言えば、そのすごさが伝わると思います。

DSでは、この油圧システムによってサスペンションのみならずクラッチ、ステアリングなども稼働させています。このシステムは「航空機を小型軽量化した高圧油圧制御システムを自動車に転用する」という着想で開発されました。今でも画期的なものですから、当時の衝撃は計り知れないと思います。それこそ、「パリサロン(モーターショー)会場でお披露目された日に1万2000台分のオーダーが入った」という逸話が残っているほどに。

当該中古車はDS21パラスと呼ばれるモデル。1972年式のいわゆる後期型で、2.2L4気筒エンジンを搭載したものです。フルレストアされただけあり、内外装は41年落ちとは思えません。皆さんが気になるのは壊れるか否かだと思いますが、たとえフルレストアされた車であってもノートラブルというわけにはいかないでしょう。こればかりは、購入する側の「愛」と「情熱」が試されると思います。

なによりも忘れてはならないのは、DSが単にクラシカルな車ではなく、たいへん画期的かつ斬新な車だということです。ここまで言っておけば、トラブルが起こっても「しょうがない」と思えるでしょうし、トラブルが少なければ「意外と付き合いやすい」と感じるのではないでしょうか(笑)。

シトロエンを表現するうえで最もよく使われる「唯我独尊」の神髄が、DSにはあります。クラシカルな雰囲気なのに41年という歳月を感じさせない斬新さも健在。かつてのオーナーたちがうなった「魔法のじゅうたん(フラットライド)」を味わい、後世に残す責務(?)も新オーナーは担うことでしょう。まさに“乗れる文化財”と言っていいほど、すごい車なんです!

Text/古賀貴司(自動車王国)

シトロエン DS (DS21 パラス)

シトロエン DS (DS21 パラス)

本体価格(税込)295.0万円
支払総額(税込)---万円
走行距離6.3万km
年式1972(S47)年式
車検
整備
保証
地域愛知