※徳大寺有恒氏は2014年11月7日に他界されました。日本の自動車業界へ多大な貢献をされた氏の功績を記録し、その知見を後世に伝えるべく、この記事は、約5年にわたり氏に監修いただいた連載「VINTAGE EDGE」をWEB用に再構成し掲載したものです。

▲1967年から69年のわずかな期間で発売された、シボレーのFRスポーツクーペ&オープンカー。マスタングが開拓したポニーカーの市場にシボレーが投入した意欲モデルでエンジンラインナップは直6とV8の2種類。グレードはZ28、RS、SSの3種類が用意されていた。また69年には425psのハイパワーエンジンを搭載したモデルが69台製作され、その年のSCCAトランスアメリカン・チャンピオンシップの2.5L以上のクラスでは優勝を飾っている。今回の撮影車両は走行距離4万km、498万円という個体 1967年から69年のわずかな期間で発売された、シボレーのFRスポーツクーペ&オープンカー。マスタングが開拓したポニーカーの市場にシボレーが投入した意欲モデルでエンジンラインナップは直6とV8の2種類。グレードはZ28、RS、SSの3種類が用意されていた。また69年には425psのハイパワーエンジンを搭載したモデルが69台製作され、その年のSCCAトランスアメリカン・チャンピオンシップの2.5L以上のクラスでは優勝を飾っている。今回の撮影車両は走行距離4万km、498万円という個体

細部まで芸術品のように作り込まれた1台

徳大寺 今日はアメリカ車なんだろう? アメ車なら任せておけ。今はアメ車は窮地に立たされているから、我々もこういう場を使ってどんどん盛り上げなければならないな。
松本 巨匠は特に1940年代後半から1970年代のアメ車は得意ですよね。今回お邪魔するのは“BUBU HIGHLINE”という横浜にあるお店なんですけど“通”好みのアメ車がたくさんあるみたいですよ。
徳大寺 そりゃ楽しみだ!
松本 ココですね。大きなガラス張りのショールームですが、最新のアメリカ車が勢揃いしていますね。大本命はどこにあるのでしょうか?
徳大寺 新型車の裏にズラッと古いのが並んでるな。これは面白い。
松本 ホントだ。表に出していないところが憎いというか、ご時世というか、商売っ気がないような…。
徳大寺 これは間違いなく“通”好みだな。しかしどうして最前列ではなく2列目なんだろう?
松本 お店の方にちょっと聞いてみましょうか? この配列にはどんな意味があるんですか?
BUBUスタッフ 徳大寺さん、松本さん、ようこそいらっしゃいました。車の配列ですか? そうですね、やっぱりメインは新車なんです。これが動かないと商売になりませんし(笑)。うちでHIGHLINEと呼んでいる古いモデルは、趣味みたいなものなんですよ。
徳大寺 趣味のモデルを仕入れると商売にならないからな。そりゃすごくよく分かるよ。どうりで知る人ぞ知るモデルばかりだと思った。
松本 巨匠、今日の1台はどれがいいですか? ヴィンテージエッジの難しいところはここなんですよね。
徳大寺 個人的にはシボレーの“ノバ”がセンスいいな。これもいい! プリマスロードランナー。しかもマニュアルだ。これはけっこう速いんだよ。
松本 色々あって目移りしてしまいますね。コンディションもみんな良さそうだし。
徳大寺 コーベットのC1やスティングレーもあるな。当時はアメリカ車全盛期だから、とにかくカッコイイモデルがけっこうあるんだよ。50年代は細かいところが凝っていて、フェアレーンのコンバチもカッコイイよ。マフラーとか。
松本 パッと見て色とかスタイルでスタイリッシュなアメ車にしましょうか。そうなるとカマロSSになりますか? 5代目のカマロも登場したばかりですからね。
徳大寺 いいね。このカマロにしよう。この当時のカマロは3タイプあってSSとRSともう一種類あったよな?
松本 ハイチューンなZ28ですね。もっともオプションがいっぱいありますからオリジナルかどうか判断が難しいですね。
徳大寺 このカマロは69年だろう。フロントとリアフェンダーが張り出しているもんな。ファーストモデルとしては特にカッコイイよ。
松本 しかもこのカマロは正真正銘のSS350ですから価値も相当高いですね。メーター類などSS標準装備がしっかりと装着されていますし。エンジンはシリンダーヘッドをアフターマーケットのアルミに交換していますが、むしろいいんじゃないですか。
徳大寺 アメ車は部品がたくさんあるからオリジナルは難しいよな。通常は初期型が人気あるけど、カマロは発売3年目の“69”が人気がある。アメリカ車らしく、カッコイイモデルとはどんなものか。みんなちゃんと分かってるってことだな。
松本 ちなみにカマロはエントリーモデルは直列6気筒もありますが、ほとんどはV8ですね。しかも69のカマロはトータルで約24万台ですからSSは15%にも満たないんです。だから元々稀少なモデルですし、キレイな状態で残っている個体は少ないんですよね。つい最近まで、アメリカでは驚くような値段で取引されていたらしいですしね。しかしブルーにホワイトのオプションリボンがいいなー。
徳大寺 そうそう。アメリカンブルーに白いラインはお決まりだな。この色の組み合わせがアメリカなんだよ。このラインだけでスゴミを感じるんだ。ボディが引き締まっていてカッコイイよ。初代がこのようにカッコイイから現在もこのデザイン要素を上手に取り入れて作ることができたんだ。色々な意味で非常に優秀な車だな。
松本 確かにそういった意味では初代に冠を付けられたモデルは重要だということですね。
徳大寺 うん。今では簡単に名前を変えたり消滅させたりするけど、そういうことでは後世に伝えることができないんじゃないかと思うよ。そういう意味でもヴィンテージカーは重要なポジションにあると思うな。今までも、これからも。
松本 確かにそうですね。
徳大寺 だからこういうお店の存在は非常に大事なんだ。ぜひ頑張ってほしいね。本当にそう思うよ。

CHEVROLET CAMARO SS シート
CHEVROLET CAMARO SS フロント
CHEVROLET CAMARO SS エンジン
CHEVROLET CAMARO SS リア

【SPECIFICATIONS】
■全長×全幅×全高:4724×1890×1295(mm)
■車両重量:1380kg
■ホイールベース:2743mm
■エンジン:V型8気筒OHV
■総排気量:5735cc
■最高出力:-ps/-rpm
■最高トルク:-kg-m/-rpm

text/松本英雄 photo/岡村昌宏


※カーセンサーEDGE 2010年6月号(2010年5月10日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています