▲たとえ安価な中古車であっても、乗っているだけでなぜかセレブか芸能人に見える……。それが、輸入4座オープンカーの隠れた魅力なんです! ▲たとえ安価な中古車であっても、乗っているだけでなぜかセレブか芸能人に見える……。それが、輸入4座オープンカーの隠れた魅力なんです!

重度のマニアも格安オープンを「セレブの乗り物」と誤認

過日の夕刻。自宅近くの目黒区碑文谷を走行中、筆者の背後にセレブリティまたは一流芸能人が運転すると思しき高級輸入4シーターオープンカーがピタリと付いた。やや夕暮れ時であり、その車のドライバーは濃い色のサングラスをしていたため、車種と顔はイマイチわからなかった。しかし場所柄、そしてルームミラーに映る輸入4シーターオープンの強烈なオーラからして、セレブまたは一流芸能人に違いないと確信したのだ。

しかし赤信号で停止した際によくよくミラーを見てみると、その車は今や格安プライスで買える旧々型BMW 3シリーズのカブリオレであり、運転している男性も、たぶんだが「ちょっとおしゃれな一般人」にすぎなかった。

この出来事から筆者が学んだのは、以下の事実だ。

「Dセグぐらいの輸入4シーターオープンをなるべく小ぎれいにして屋根を開け、小ぎれいな服を着て運転すれば、仮に安い中古車であっても、それだけで人は誰しもセレブか一流芸能人に見える」

さすがに赤信号や駐車場などで止まっている際は、セレブにも芸能人にも見えないだろう。それどころか筆者のような重度の中古車マニアからは「あぁ、E46のカブリオレですか。……現在の中古車相場はおおむね100万円前後ってとこですね」などと5秒で見破られてしまう恐れもある(厭味ったらしいマニアですみません)。

しかし走ってさえいれば(特に夕暮れ時や夜間であれば)、そんな重度の中古車マニアの目すら騙すことができるのだ。ましてや前述のとおり「車の内外装をなるべく小ぎれいにして屋根を開け、小ぎれいな服を着て」運転すれば、ドライバーはどこからどう見てもセレブか芸能人である。かように輸入4座オープンというのは(ある種の)破壊力が高い、錯視を誘う乗り物なのだ。

▲某日夕刻、筆者の背後に付いた旧々型BMW 3シリーズの同型車。写真は新車時の広報画像だが、仮にこの車が100万円ぐらいの中古車だったとしても、モデルの女性はモナコかどこか在住のセレブリティに見えるはず。これが輸入4シーターオープンの破壊力だ! ▲某日夕刻、筆者の背後に付いた旧々型BMW 3シリーズの同型車。写真は新車時の広報画像だが、仮にこの車が100万円ぐらいの中古車だったとしても、モデルの女性はモナコかどこか在住のセレブリティに見えるはず。これが輸入4シーターオープンの破壊力だ!
 

オススメは250万円以下ぐらいのDセグオープン

「……この錯視を利用しない手はない」と筆者は考えた。

無論、自動車趣味として邪道かつ軟派なことは承知だ。しかし、たまにはこういった「遊び」にハマってみたっていいじゃないか、悪くはないじゃないか! と、そんな自己弁護に基づき、筆者は今後買うべき「なんちゃってセレブ」な格安輸入4シーターオープンカーの吟味を開始した。

まず、セグメント的には前述のとおりDセグメント(BMW 3シリーズやメルセデス・ベンツ Cクラスぐらいのサイズ)が適任だろう。女性ドライバーの場合はCセグ(フォルクスワーゲン ゴルフぐらいのサイズ)の4座オープンでも逆にセレブ感が出て、長身痩躯の女性であれば「パリコレモデルが帰国したのか?」と勘違いされることもあろう。しかし筆者のようなおっさんの場合は、やはりある程度のボディサイズはあった方がオーラは出るように思う。

「ではEセグ(メルセデス・ベンツ Eクラスとか)やLセグ(BMW 7シリーズなど)じゃダメなのか?」という意見もあるだろう。無論ダメではなく、特にEセグメントはなかなか適任かもしれない。しかしEセグメントには4座オープンカーの選択肢がそもそも少ないという問題点がある。そしてLセグメントのオープンカーすなわちロールスロイスやベントレーのオープンモデルだと、セレブや芸能人ウンヌンではなく、もっと別の何らかの職業人に見られてしまう恐れがある。それゆえ、やはり最適なのは「Dセグの4シーターオープン」なのだ。

そのなかで比較的安価なモノを探すのが最善の道である。別に高くたっていいのだが、このケースでは「実は安いのにセレブまたは一流芸能人に見える」というのがキモであるため、「壊れない程度に安いモノ」が望ましい。明確な基準はないが、ざっくり言って「車両価格250万円以下ぐらい」を目安にするのが良いのではないか。そして4座オープンカーの場合は内装がヤレていると途端にみすぼらしく見えてしまうため、「走行6万km以下ぐらい」というのも一つの基準にしたい。

▲こちらはE93こと旧型BMW 3シリーズカブリオレ。このあたりのモデルになるとさすがに中古車のボリュームゾーンは300万円以上だが、アンダー250万円でも探せないことはない ▲こちらはE93こと旧型BMW 3シリーズカブリオレ。このあたりのモデルになるとさすがに中古車のボリュームゾーンは300万円以上だが、アンダー250万円でも探せないことはない
 

選択肢は思いのほか豊富

以上の考え方に基づきカーセンサーnetで絞り込み検索をかけてみると、「錯視系輸入4シーターオープン」の選択肢は思いのほか豊富なことに気づく。

例えば、最も流通数が多いのはボルボ C70カブリオレだ。流通の中心は07年以降の最終型で、その相場はおおむね130万~190万円。なんとなく良家の子女っぽいたたずまいゆえ、芸能人というよりは老舗の土地持ちセレブに見られるだろうか。メタルルーフのいわゆるクーペ・カブリオレであるため、偽セレブを気取らないときはフツーに屋根を閉めておけば、ごくフツーのボルボ愛好家に見えるだろう。

しかし個人的には、受注生産だった初代ボルボ C70カブリオレも捨てがたい。今や流通量は少なく、屋根も古典的なソフトトップだが、逆にそこが名門っぽい気がするのだ。

▲06年12月から12年12月まで販売された第2世代のボルボ C70カブリオレ。初代のソフトトップから、リトラクタブルハードトップを備える流麗なクーペ・カブリオレへと変更された ▲06年12月から12年12月まで販売された第2世代のボルボ C70カブリオレ。初代のソフトトップから、リトラクタブルハードトップを備える流麗なクーペ・カブリオレへと変更された
▲こちらは01年9月から06年11月までの初代ボルボ C70カブリオレ。まさにセレブの乗り物といったたたずまいだが、残念ながら今や流通量はきわめて希少 ▲こちらは01年9月から06年11月までの初代ボルボ C70カブリオレ。まさにセレブの乗り物といったたたずまいだが、残念ながら今や流通量はきわめて希少

その次に探しやすいのがメルセデス・ベンツ CLKクラス カブリオレ。流通の大半が03年5月以降の第2世代で、その中古車相場は140万~230万円といったところ。これまた芸能人系というよりは、つつましく暮らしている(でも資産はたっぷりな)老舗セレブ系か。

また本文冒頭に登場した旧々型BMW 3シリーズ カブリオレ(走行6万km以下車の相場は100万~180万円)も悪くないが、個人的なイチ推しはサーブ 9-3カブリオレだ。本当は初代サーブ 900のコンバーチブルを探したいところだが、今や流通量が皆無に等しいため、現実的には最終世代かその一つ前の世代の9-3カブリオレになる。今や消滅してしまったブランドということもあって、得も言われぬ謎のオーラと破壊力を備えているのがこの4座オープンだ。夕暮れ時に碑文谷か白金あたりを流せば、どこからどう見ても一流芸能人であろう。

以上、個人的な馬鹿話にお付き合いいただき大変恐縮ではあるが、このような楽しみ方もできるのが輸入車の、ひいては手頃な輸入中古車の魅力の一つだということで、どうかご容赦願いたい。

 

▲03年5月から09年4月まで販売された第2世代のメルセデス・ベンツ CLKクラス カブリオレ。AMGモデルもあるが、基本モデルのエンジンは前期が3.2Lで、後期が3.5LのそれぞれV6 ▲03年5月から09年4月まで販売された第2世代のメルセデス・ベンツ CLKクラス カブリオレ。AMGモデルもあるが、基本モデルのエンジンは前期が3.2Lで、後期が3.5LのそれぞれV6
▲筆者イチ推しのサーブ 9-3カブリオレ。今や亡きブランドゆえ、知らない人は全然知らないというその謎感が、どことなく「謎の芸能人」という煙幕を周囲に張りめぐらす(ような気がする) ▲筆者イチ推しのサーブ 9-3カブリオレ。今や亡きブランドゆえ、知らない人は全然知らないというその謎感が、どことなく「謎の芸能人」という煙幕を周囲に張りめぐらす(ような気がする)
text/伊達軍曹
photo/GM、BMW、ボルボ、ダイムラー