▲現行6シリーズをベースに作られた4ドアクーペ、BMW 6シリーズグランクーペ。まだまだ現役感たっぷりな1台であるにも関わらず、その中古車相場は今、妙にお買い得な状況になっています ▲現行6シリーズをベースに作られた4ドアクーペ、BMW 6シリーズグランクーペ。まだまだ現役感たっぷりな1台であるにも関わらず、その中古車相場は今、妙にお買い得な状況になっています

走行3万km台までの物件も余裕で400万円台

昨今、自動車の世界で隆盛をきわめているジャンルといえば当然ながらSUV(Sport Utility Vehicle)なわけだが、もう一つの雄として「輸入4ドアクーペ」があるように思える。さほど数がハケるジャンルではないためSUVほどあちこちで見かけるわけではないが、ある一定以上の収入を得ている自動車愛好家諸氏の心はガッツリつかんでいるジャンルであるはずだ。

そして数ある輸入4ドアクーペのなかで最も均整のとれた1台……と断定できるかどうかは不明だが、「いろいろな意味で最も均整のとれた輸入4ドアクーペの一つ」と言って差し支えないのが、12年6月に登場したBMW 6シリーズ グランクーペだろう。

6シリーズ グランクーペは、その前年8月に日本に導入された2ドア版6シリーズのホイールベースと全長を延長し、全高を20mm拡大することで4ドア化した流麗な4ドアクーペ。搭載されるエンジンは最高出力320psを発生する3L直噴直6 ターボと、同450psの4.4L直噴V8ツインターボで、トランスミッションは両者とも8速のスポーツATとなる。

で、その中古車が今、非常にお安い。

まぁお安いといっても注目の価格ゾーンは400万~498万円と、一般的な観点から見るならもちろん爆安プライスというわけではない。そしてこのゾーンで狙えるのは4.4Lツインターボの650i系ではなく、ダウンサイジングされた3L直6ターボ搭載の640i系が大半。しかしそれでも、新車時価格986万~1170万円だったモノの走行3万km台までの個体が、400万円台でイケてしまうという事実は、「お安い」と評しても決してオーバートークではないはずだ。

▲なんとも端正なスタイリングのBMW 6シリーズ グランクーペ。2ドアクーペと比べてホイールベースは115mm延長されており、延長分は主に後部居住空間の拡大に当てられている ▲なんとも端正なスタイリングのBMW 6シリーズ グランクーペ。2ドアクーペと比べてホイールベースは115mm延長されており、延長分は主に後部居住空間の拡大に当てられている
▲グレードやオプションにより細かな違いはあるが、6シリーズ グランクーペのインテリアはおおむねこのようなニュアンス。なんとも贅沢な気分に浸れる居住空間だ。写真は2015年モデル ▲グレードやオプションにより細かな違いはあるが、6シリーズ グランクーペのインテリアはおおむねこのようなニュアンス。なんとも贅沢な気分に浸れる居住空間だ。写真は2015年モデル

ただ、一部では早くも飽きられはじめているのかも?

さらにマーケットを細かく見てみると、2月17日現在、車両価格500万円以下かつ走行4万km以下のBMW 6シリーズ グランクーペは全国で計22台。うち19台が3L直6ターボ搭載の640i系で、3台のみが4.4L V8ツインターボの650i系だ。19台ある640i系のなかで人気の「Mスポーツパッケージ」は6台だけだが、残る13台のベーシックな640iにも「コンフォートパッケージ」などのパッケージオプションは装着されているケースが目立つ。

ということで、局地的に隆盛を極めているアッパーな輸入4ドアクーペのステキな1台を、極力お値打ち価格で手に入れたいという人は、ぜひぜひBMW 6シリーズ グランクーペにご注目ください、よろしくお願いいたします……ということで話を終えられればいいのだが、実はそうもいかない。

どういうことかと言うと、このところ6シリーズ グランクーペの流通台数は右肩上がりで増加しており、それに連動して平均価格は逆にやや「右肩下がり」っぽいニュアンスで下降トレンドに入っているからだ。要するにこれは「飽きられはじめた」「もはや古いという評価になった」ということを示しているのかもしれない。

その事実というか推測を、「これから6シリーズ グランクーペを買おうかしら?」と考えている人間はどう考えるべきなのだろうか。

▲初登場から5年近くが経過した今現在の視点から見ても十分「ステキ!」と思える造形およびパフォーマンスだと思うのだが、一部の愛好家はもうこのビジュアルに飽きはじめているということなのか? ▲初登場から5年近くが経過した今現在の視点から見ても十分「ステキ!」と思える造形およびパフォーマンスだと思うのだが、一部の愛好家はもうこのビジュアルに飽きはじめているということなのか?

要は考え方次第。ある種の人にとっては最高の選択となるはず

これは筆者の勝手な推測というか印象にすぎないが、BMWユーザーというのは比較的「新しもの好き」な人が多く、なかでも「イケてる感じ」が強い4ドアクーペを新車または新車に近いような認定中古車で買う人は、よりその傾向が強いように筆者には感じられる。

それゆえ、純粋な機械としてまだまだぜんぜん現役な走行3万km台までの6シリーズ グランクーペに対しても、「さすがにもう古いよね、オレに言わせれば」的な感慨を抱く人が多いのだろう。その結果、手放す人が増えたため市場の流通量は増加したが、そういった「新しもの好き」な人種は今さら(?)6シリーズ グランクーペはなかなか買わないため、困った販売店は在庫車の販売促進策としてじりじりと売価を下げていく……というのが現在の構図だと思われる。

で、もしもあなたが「新しもの好き」を自負している人であるならば、まぁ6シリーズ グランクーペはやめておいた方がいいのかもしれない。ボディタイプは異なるが、デビューしたばかりの新型5シリーズあたりを購入した方が、おそらくは心底満足できることだろう。

しかしあなたがそうではなく、「オレはオレが気に入ったモノであればそれでいいんじゃ! 中古の6シリーズ グランクーペ、何かとサイコーじゃないか!!!」と思える人であるならば、車両価格400万円台かつ走行3万km台までのBMW 6シリーズ グランクーペは今、この上なくステキでバリューな選択肢となるだろう。

もしもあなたが後者であるならば、ぜひぜひ6シリーズ グランクーペにご注目ください。よろしくです。

▲「最新中の最新」であることにこだわりさえしなければ、6シリーズ グランクーペの中古車とはおそろしいほどバリューな選択となるはず ▲「最新中の最新」であることにこだわりさえしなければ、6シリーズ グランクーペの中古車とはおそろしいほどバリューな選択となるはず
text/伊達軍曹
photo/BMW