▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!▲軽自動車からスーパーカーまでジャンルを問わず大好物だと公言する演出家のテリー伊藤さんが、輸入中古車ショップをめぐり気になる車について語りつくすカーセンサーエッジの人気企画「実車見聞録」。誌面では語りつくせなかった濃い話をお届けします!

あの日、一瞬で惚れたコルベット

今回は、「BUBU MITSUOKA BUBU横浜」で出合ったシボレー コルベット(C5)について、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。

~語り:テリー伊藤~

僕はC5コルベットに特別な思い入れがあります。

ちょうどC5が出た頃、フロリダに好きな女の子がいたんです。その子とフロリダ半島をレンタカーでドライブしているときに、C5が僕らを追い越していきました。ドライバーはセクシーな女性。そのとき、「なんてカッコいいんだ」と見とれてしまったんです。

日本に帰ってきてからも、その光景が忘れられない……。そこで僕は思い切ってC5を買うことにしました。まだ中古車がほとんど出回っていなかったので、ヤナセから新車を買いました。

選んだのは黄色いコンバーチブル。たしか800万円近くしましたよ。今思い出しても本当にいい車でした。なんだかんだで3年くらい乗ったのかな。

▲車を見ながら当時を思い出すテリーさん ▲車を見ながら当時を思い出すテリーさん

C5の何がいいって、このボディラインですよ。街で見かけてもほとんどの人は振り返りませんが、よく見ると今の車とは全然違う。

最新の車はボディサイドなどにエッジを効かせたキャラクターラインを入れて表情を作ります。プレスには高度な技術が必要です。しかし、C5のボディには突起物が見当たりません。遠目で見るとクジラみたいにヌメッとしています。これがいいんですよ。

そして薄くて長いボンネットの中に5.7L V8 OHVを詰め込んでいるのですから。こんな車はもう二度と生まれないでしょう。今乗ったら、かなりツウっぽいですよ。

▲流線型のシルエットをなぞるように照明の光が反射する ▲流線型のシルエットをなぞるように照明の光が反射する

そしてもうひとつ。C5は地球上で最後のリトラクタブルヘッドライト搭載モデルです。

1990年代までスーパーカーといえばリトラクタブルヘッドライトがお決まりでしたが、ご存じのとおり安全面の問題から消滅しました。そんな『車遺産』とも呼べるヘッドライトを地球上で最後まで搭載していたのが、このC5コルベットです(C6にフルモデルチェンジする2005年まで)。

もちろんモデルチェンジのスケジュールが絡むので一概に最後まで突っ張ったとは言えませんが、僕はC5に男気を感じています。

▲かつてスーパーカーの象徴だったリトラクタブルヘッドライト ▲かつてスーパーカーの象徴だったリトラクタブルヘッドライト
▲丸目4灯ランプを備えたリアも美しい ▲丸目4灯ランプを備えたリアも美しい

コルベットだったらC3のアイアンバンパーやC2がいいという人が多いでしょう。でもそのあたりは、例えるならオメガのスピードマスターのようなもの。乗ればカッコいいという“保証”があるんです。でもC5にはカッコいいと思ってもらえる保証がありません。C2やC3のような伝説がC5にはありませんからね。

ただ、C2やC3は、完全にビンテージの部類に入ってしまい、今やパレードカーになっています。とにかく華やかで、哀愁がまったくないんですよね。そしてパレードカーゆえ、どこを走っても人から注目されてしまいます。これってかなり疲れるもの。他にもパレードカーといえば1960年代のシボレー インパラやフォード サンダーバードなどがありますが、映画で見たアメ車に乗りたいとそのあたりに飛びついて、あまりの注目度に「もっと普通の車に乗りたい」とそれらを手放した人を知っています。

その点、C5はいいですよ。街を走っていてもまず注目されることはないですから。

テリー伊藤なら、こう乗る!

今は気楽に楽しめるC5ですが、僕はかつての“クジラクラウン”と同じようなにおいを感じています。

クジラクラウンも出たときは最大の失敗作と言われていましたが、今は人気がある。C5もきっと20年後には急激に評価が高まり、相場も高騰すると思いますよ。おそらく現在のC2やC3くらいの価格になっているのではないでしょうか。

幸い、取材でお邪魔した「BUBU MITSUOKA BUBU横浜」にあったC5は車両本体価格198万円(※取材時の価格)。これくらいの価格なら気合いを入れなくても手に入るはず。しかも塗装の艶が当時のまま残っている掘り出し物です。内装の状態もとてもいい! デビューから20年近く経った今、これほどのC5に出合える機会はめったにありません。

こういう車を今のうちに手に入れて、最初は気楽に乗る。そしていつか注目度が高まるのを夢見て、大事に付き合っていきたいですね。まずは僕が、取材終了後に店長と商談したいと思います(笑)。

▲カッコよさの保証が全くない!……そこがツウっぽくていいんです ▲カッコよさの保証が全くない!……そこがツウっぽくていいんです

シボレー コルベット(5代目)

1997年にフルモデルチェンジした5代目コルベット(C5)。それまでのコルベットがどちらかというと直線基調のデザインだったのに対し、C5はトレードマークであるリトラクタブルヘッドライトはそのままに空力を重視した流線型に変更。搭載されるエンジンは5.7LのV8 OHV。最高出力350ps、最大トルク49.7kg-mを発生する。



■ テリー伊藤(演出家)
1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『白熱ライブ ビビット』(TBS系/毎週火曜水曜8:00~)、『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)に出演中。単行本『オレとテレビと片腕少女』(角川書店)が発売中。現在は多忙な仕事の合間に慶應義塾大学院で人間心理を学んでいる。

text/高橋満(BRIDGE MAN)
photo/柳田由人