2.高齢者や障がい者を乗せる福祉車両の選び方

車の助手席や後席に高齢者や障がい者を乗せる場合、車いすからの移動時がポイントです。

ここでは高齢者や障がい者などを、助手席や後部座席に同乗させる福祉車両について説明します。
基本的に、高齢者や障がい者は、筋力の低下や座ったときのバランスが不安定である場合が多いので、交通事故の際に姿勢が保てず、想像以上のダメージを受ける可能性があります。ですから、使い勝手だけを優先するのではなく、安全性も考えて総合的に選ぶ車を判断するようにしましょう。
具体的には、3点式シートベルトがきちんと正しい位置でできるか、ヘッドレストが頭部に合うかなど確認しましょう。

購入時のチェックポイント

このタイプには、助手席または後席に乗せる2種類のタイプがあり、さらにシートが回転だけでなく昇降する車もあります。また、専用の脱着タイプの専用シートにあらかじめ乗り換え、そのまま助手席や後席の位置に固定できる車もあります。
下記で、タイプ別のチェックポイントを見ていきましょう。

1.助手席に乗せるタイプ

1.助手席に乗せるタイプ|2.高齢者や障がい者を乗せる福祉車両の選び方
写真はホンダフリード(現行)の助手席リフトアップシート車
このタイプはドライバー(介護者)とのコミュニケーションが容易です。また前方の景色が見やすいので、高齢者や障がい者も快適に過ごせます。
後席に乗せるタイプと比べると、頭上と足元が狭いのが一般的で、乗車する際に注意が必要です。

2.後席に乗せるタイプ

2.後席に乗せるタイプ|2.高齢者や障がい者を乗せる福祉車両の選び方
写真はホンダフリード(現行)サイドリフトアップシート車
このタイプは、助手席に比べて開口部が広いため、乗下車の介護が容易です。
ただし、ドライバーが運転中に目が届きにくく、コミュニケーションが取りづらくなります。

さらに、助手席・後席を問わず、シートには下記の種類があります。

1:助手席や後部座席に乗せるタイプ|2.高齢者や障がい者を乗せる福祉車両の選び方
写真はホンダフィット(現行)の助手席回転シート車

(1)シートが回転するタイプ

まず、車いすから乗り換えがしやすいかどうかを確認しましょう。車いすの座面と運転席のシートの座面とが、同じ高さだと車いすからの移動がしやすくなります。たいていの車いすは地面からの高さが50cm前後ですので、車のシートがそれ以上になると介護者が高齢者や障がい者をシートに「上げる」必要があります。
また、回転して助手席に乗車する際に、頭や足が引っかからないか確認しましょう。
2:車いすごと乗せるタイプ|2.高齢者や障がい者を乗せる福祉車両の選び方
写真は日産セレナ(現行)アンシャンテのスライドアップシート

(2)シートが回転して、昇降するタイプ

車いすと車のシートの座面が、移動しやすいよう、同じ高さになるか確認しましょう。それ以外は上記(1)と同じです。
3:ストレッチャー移動式|2.高齢者や障がい者を乗せる福祉車両の選び方
写真はトヨタアルファードハイブリッド(絶版)のサイドリフトアップシート車(脱着タイプ)

(3)脱着タイプの専用シートを使うタイプ

室内などで専用のシートに乗り換え、専用の装置を用いて車内へ移動できるタイプです。脱着式で、車外でそのまま車いすとしても使用できます。専用シートは3点式シートベルトがきちんと正しい位置で装着できるか、ヘッドレストが頭部に合うかなど、サイズが合うかどうかを確認してください。また、車内に乗車する際に、頭や足が引っかからないかも確認しましょう。

運転する際の注意点

ドライバーが普段と同じように運転すると、高齢者や障がい者がシートから転倒や転落する危険性があります。できるだけ急発進や急停止などを避け、カーブではゆっくりと曲がるようにしましょう。
また、高齢者や障がい者ができるだけ座面深くに腰掛け、背中と背もたれが密着するようにします。股関節屈折制限のある人や座った時のバランスが不安定な人は、背もたれをあまり倒しすぎるとシートベルトが体から離れてしまうことがありますから、注意が必要です。

たいていの車のシートは専用には作られていませんので、褥瘡(じょくそう。体と、この場合シート座面との長時間の接触により、血行不全で壊死を起こす)予防として、1時間に1回以上は臀部を浮かして血行を回復させましょう。

シートベルトの腰ベルトは、骨盤を巻くようにできるだけ低い位置に、肩ベルトは首や肩の端にずれないように装着できるか確認してください。
ヘッドレストの高さは、耳の高さにヘッドレストの中心が位置するように、距離は後頭部と10cm以内に位置するように調整できるか確認してください。


なお、販売店で実際に車を見る際には、高齢者や障がい者・介護者のどちらも出向いて確認をすると、購入後のトラブルを防ぐことができます。
また、正しい使い方をしないと怪我をする危険もありますから、取扱説明書があるかどうか確認し、使用前に熟読するようにしましょう。
監修/国立障害者リハビリテーションセンター熊倉良雄氏