▲「どうせ買うならより新しいものを」と思うのが人情だが、時と場合によっては「あえて古めの方を選ぶ」という行動が、結果としてシブさにつながることもある ▲「どうせ買うならより新しいものを」と思うのが人情だが、時と場合によっては「あえて古めの方を選ぶ」という行動が、結果としてシブさにつながることもある

気がつけば200万円台となった旧型レクサス RXハイブリッド

このところレクサス RXの先代ハイブリッドが、特にその前期型が、なかなか魅力的に思えてならない。そう思う理由は主に2つあるのだが、一つは単純に「プライス」だ。

今さら説明するまでもないと思うがレクサス RXとは、巨大なLXが15年9月に登場するまでは同ブランドのフラッグシップだったプレミアムSUV。現在は15年10月登場の現行モデルが新車として販売されているが、筆者がここで申し上げているのは09年4月から15年9月まで販売された旧型の、特にハイブリッドについてである。

この旧RX 450hは新車時から憎からず思っており、某売れっ子カメラマン氏が買ったばかりの黒い450hで撮影スタジオに現れたときには、思わず嫉妬の炎がメラメラと上がってしまったほどだ。しかしいくらメラメラと嫉妬したところで、当時の新車価格が車両本体だけで577万~695.3万円だったレクサスRX450hなど筆者に買えるはずもなく、また中古車を狙うにしても当時の相場は400万円台から500万円台。これまた手が出ず、ただメラメラするだけの毎日が続いた。

しかし気がついてみれば今、旧型レクサス450hは割と手が届く位置にまできている。

具体的には車両価格で299万円までを見込んでおけば、走行5万km以下の09~12年式450hを余裕で探すことができ、なかには「250万円以下」というシビれるプライスの5万km以下物件もそこそこの数が流通しているのだ。

それでももちろん安い買い物ではないが、日本が誇るレクサスの、個人的にはデカすぎてあまり興味が持てないLXを除けば最高峰にあたるモデルを、(中古だけど)我が物にできると思えば、自動車を愛する1人の日本人としてはグッとこないわけにいかない。嫉妬とは別種類の炎が、心の中でメラメラと燃え盛るのである。

▲高級セダンに匹敵する走行性能と快適性を誇るレクサスのプレミアムSUV、RX。旧型(日本における初代)は09年1月登場で、2.7L/3.5Lのガソリンエンジン仕様と、3.5Lエンジン+高性能モーターで4.5L並みのパワーを発揮するハイブリッドの2系統があった。写真はハイブリッド(450h)の海外仕様 ▲高級セダンに匹敵する走行性能と快適性を誇るレクサスのプレミアムSUV、RX。旧型(日本における初代)は09年1月登場で、2.7L/3.5Lのガソリンエンジン仕様と、3.5Lエンジン+高性能モーターで4.5L並みのパワーを発揮するハイブリッドの2系統があった。写真はハイブリッド(450h)の海外仕様

「古い」は「クラシカル」というホメ言葉(?)でもある

しかしここで当然のように出るだろう疑問が、「ていうか299万円以下で買えるのって旧型の前期でしょ? なんか前期って『今さら感』があるんで、後期型の方がいいんじゃない?」というものだ。

ご承知のとおり旧型レクサスRX/RXハイブリッドは12年4月にやや大がかりなマイナーチェンジを実施し、フロントフェイスをレクサスの象徴たる「スピンドルグリル」に変更した。で、スピンドルグリルになった旧型後期と、そうでない旧型前期を見比べてみると、確かに前期型からは「古さ」みたいなものが感じられ、逆に後期型からは「うん、今でもまあまあイケてるじゃん」みたいな空気を感じる。

それゆえ先の質問者は、「どうせなら旧型の後期がいいんじゃない?」と言ったのだろう。……その論旨はわかるが、しかし「だからこそ、逆に前期がイイんじゃない!」と考える筆者である。

なぜならば、「古さを感じる」ということは「クラシカルな味を感じる」ということでもあるからだ。

もしも旧型レクサス RXを買うならば、確かにスピンドルグリルになった後期型の方が現代的ではある。しかしそれはあくまでも「まあまあ現代的」なわけで、新型RXが完全に定着しはじめた今、もしもあえて辛辣に言うのであれば「中途半端に新しく、中途半端に古くさい」とも言えるわけだ。

それならばいっそ「完全に古くなった」旧型の前期に、ある種のネオクラシックを慈しむかのような感覚で乗る方が、物事は何かと楽しめるのではないか……というのが、筆者が「だからこそ、逆に前期がイイんじゃない!」と考える理由である。

▲こちらが15年10月登場の現行レクサス RX ▲こちらが15年10月登場の現行レクサス RX
▲そしてこれが12年4月からの、旧型RXの後期型(450h F SPORT) ▲そしてこれが12年4月からの、旧型RXの後期型(450h F SPORT)
▲で、こちらが旧型の前期450h(の海外仕様)。……筆者が言わんとしていること、何となくおわかりいただけるだろうか? ▲で、こちらが旧型の前期450h(の海外仕様)。……筆者が言わんとしていること、何となくおわかりいただけるだろうか?

そして「200万円台」というプライスはやっぱり魅力的

まぁ実際は、旧型後期のRXハイブリッドはまだまだけっこう現役感たっぷりなビジュアルおよびムードであるゆえ、筆者が言っていることは極論に過ぎるかもしれない。それゆえ、レクサスRXの旧型後期を買おうとしている人に対して、わざわざ「いや、やめといた方がいいですよ……」みたいなことを言うつもりは一切ない。むしろ「いい車ですよね、ナイスな選択だとは思いますよ!」と言うだろう。

ただどうしても気になるのは、旧型後期の中古車相場である。

走行3万kmまでのレクサス RXハイブリッド旧型後期は現在、330万~480万円といったあたりがボリュームゾーン。600万円級だった新車時価格を考えれば十分値下がりしたとは言えるが、それでも「なかなかのご予算」であることは間違いない。

で、そこまでの「ご予算」を投じるのであれば、「ならばいっそ現行型の新車とか認定中古車を、残価設定ローンで買った方が実は賢いんじゃね? リセールも高そうだしさぁ」みたいなことを、どうしても考えてしまうのである。

まぁこのあたりの価値判断というのは人それぞれなので、一概には言えない、しかし少なくとも筆者はそう思うわけであり、そしてある種の人には、まずまずの大穴として「200万円台の旧型RXハイブリッド前期型」をオススメしたい心境なのだ。ネオクラシックと呼ぶにはまだ早いが、その「候補」を青田買いするイメージで、ぜひRXハイブリッドの旧型前期にチラリとでもご注目いただけたら幸いだ。

▲インテリアは当時のレクサスを代表するテイストのシックで上質なもの。そしていまだ十分な現役感があると同時に、ほんの少々の「クラシカル感」も出てきたかも? ▲インテリアは当時のレクサスを代表するテイストのシックで上質なもの。そしていまだ十分な現役感があると同時に、ほんの少々の「クラシカル感」も出てきたかも?
▲ちょっと古めになってきた高級車というのは、写真のようにビカビカにして乗るのもいいし、逆にあまり洗車とかはせず、あえて道具っぽく使い倒すのもカッコいい。ぜひいろいろ試してください! ▲ちょっと古めになってきた高級車というのは、写真のようにビカビカにして乗るのもいいし、逆にあまり洗車とかはせず、あえて道具っぽく使い倒すのもカッコいい。ぜひいろいろ試してください!
text/伊達軍曹
photo/TOYOTA、尾形和美