Car sensor IN MY LIFE 送りたい毎日から考える、クルマ選び。

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

僕らが生きる世界は物質文明だ。だからモノにこだわるのは、この世界の真髄、醍醐味でもある。クルマは個人が選ぶ最も高価な「モノ」の1つ。ならば、そのこだわりはなおさらである。今回登場する岩田翼さんは、ヒットする商品やメディアを作るクリエイター。そんな彼がクルマを選んだら、流行り廃りとは無縁の古いアメ車にたどり着いた。この物語はクルマにまつわる、人間ドラマだ。

いつのまにか名刺代わり。そんなクルマある?

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

「聞いてますよ。マスタングに乗っているイワタさんでしょ?」

「あ、はい」

初対面なのにそう言われてドキッとした。

いまどきメルセデス・ベンツに乗っている誰それ……なんて、わざわざ言われないだろう。仮にフェラーリに乗っている……なんて噂が流れたら、それはそれで軽い営業妨害かもしれない(笑)。

とにかく予期しなかったことに、いつのまにか古いマスタングが僕の肩書きになっていた。

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

国道とバイパスに挟まれた、埼玉の小さな町に生まれた。当時は本当に何もなくて、子どもの頃の楽しみといえば、音楽とファッションだけだった。

ソウル、R&B、ヒップホップ、ニュージャックスウィング……。とにかく片っ端から聴いた。Sublimeや Red Hot Chili Peppersなどなど。少ない情報源でも「いいな」っと思うものは選り好みせず貪欲に聴いた。その流れは今も続いている。

当時身に着けていたのは、例えばRUDIE'S(ルーディーズ)。春日部発祥のオリジナルブランドだ。東京で服を買っている友達もいたが、どうにも馴染めない。もちろん憧れはあった。でも、僕は自分の物差しでジャッジしたかった。

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

18歳になるとクルマの免許を取るのがお約束だった。クルマがなければ、どうにも不便。モテないし(笑)。友達は高校を出てすぐ自分のクルマを持ち始めた。

「すっかり出遅れちゃったな」

周りを見ると当時で言うVIPカー、セダンが幅を利かせていた。人気があったのはセルシオだったが、僕が食いついたのはアメ車だった。

キャデラック、アストロ、インパラ……。乗せてもらうと“MVの中の人”さながらの気分。いいな、僕もいつか絶対アメ車に乗ってやる。

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

クルマへの情熱は押し隠したが、音楽とファッションはタガが外れた。欲しい服はたくさん。CDやヴァイナルも買いあさった。まだまだ吸収したいものがあり、湧き出る欲求を満たすために職に就いた。

月収が魅力で、スプリンクラーを施工する現場監督になった。勉強もしたが、素人の僕でも務まったのは職人たちと反りが合ったから。パッと見はとっつきにくそうだが、休憩中にクルマの話をするとメッチャ面白い。今風に言うとマイルドヤンキー? そこが合わなくて辞めていく同期や後輩もいた。でも僕にとっては、生まれ育った町の友達と付き合っているような感じだった。

毎日、深夜まで働いた。服と音楽への乾きは潤ったが、自分の時間はまったくない。本当に、これでいいのか?

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

転職することにした。服と音楽。ざっくり言えば、カルチャーの世界で生きていく道を探した。

「ん? これ、できそうな気がする」

ある求人を見て、そう思った。オリジナルのコラボアイテムの企画に携わる仕事。雑誌とアパレルブランドと読者を結ぶ。繋げるのは、自分の感性。正真正銘の業界未経験者だけど、根拠のない自信があった。

採用面接には、自作の拙いポートフォリオと、「本気でやってみたいんです!」という空回り気味の情熱を持ち込んだ。面接官と話が盛り上がって、その会社で働けることになった。

仕事に夢中になった。オンもオフも好きなものに囲まれる生活。朝から深夜まで働く生活サイクルは以前と同じだが、まったく苦にならない。

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

ある朝、家の外で町の空気を吸ったとき、企画がひらめいた。ところが、先輩たちからはダメ出しをされた。

「それ無理だよ、たぶんムリ」

それは「24カラッツ」。EXILEがよく着ていることで有名なブランドだ。ストリートカルチャーの一翼を担う「エクストララージ」とのコラボが実現すれば、今までにない特別感が出せると踏んだ。しかし、業界に詳しい先輩には両者の客層が違うため、異質に映ったようだ。

でも確信があった。カルチャーやストリートを引率するエクストララージはもちろん、24カラッツも間違いなく“ホンモノ”だ。難しいのは重々承知だが、実現さえできれば「良いモノができる!」に違いない。

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

とはいえ業界にそんなツテも実例もない。ビジネス文書をメールで送っても何も動かない予感がした。そこで知り合いの、そのまた知り合いの……という、もはや知人でもなんでもないツテを使ってアタックした。普通に考えて無謀。無理筋だったけれど、出入りする店が同じだったり、共通の知人がいたりと、思わぬところから話題が盛り上がった。

数多くの人に協力してもらい、ついに「面白いですね、やりましょう!」の一言をもらえた。千載一遇の機会を逃さず、24カラッツ×エクストララージ×某ストリート雑誌のコラボが実現。金色のロゴが入った黒いジャージがリリースされ、誌面を賑わせた。

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

仕事が上手く回り出し、そろそろアメ車に乗る機が熟したと思えた。お金ではなく、完全に気持ちの話。すぐにネットで検索したら、いきなり意中のクルマにヒットした。まるで僕のことをずっと待っていたように……。

「なぜこんなところに?」

見つけたのは、濃いネイビーのマスタング。渋い。掲載していたのは正規ディーラーだった。1960年代の旧車が認定中古車であるわけもない。問い合わせると、ディーラーのメカニックが個人的に所有しているクルマだった。なるほど。

実車を見て即決した。

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

レロレロレロ……。

V8サウンドが優しくカラダをグルーヴさせる。お気に入りの音楽を聴きながら走る。それだけで平凡な道がお気に入りの道になった。終電がなくなっても家に帰れるのはありがたい。仕事の打ち合わせにも乗って行くようになると、アメ車好きが意外にも多いことに気づいた。

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

「これ何年式? 故障しない? メチャクチャ格好いいね!」

仕事の打ち合わせ以上に盛り上がることも。そんな流れから、仕事の紹介をしてもらう機会が増えた。先方に伺うと、ニコリと言われる。

クラシックカーは格好いいだけでいい。マスタングに乗って実感したこと|Carsensor IN MY LIFE

「聞いていますよ、マスタングのイワタさんでしょ!」

いつのまにか、こいつがボクの名刺代わりになりつつある。悪い気はしない。何を着ているかで第一印象が変わるように、乗っているクルマでセンスも推し量られる。だから、こいつはただただ格好よければ、それだけでいい。そう思っている。

STAFF
写真:杉田裕一[BGHE]、文:ブンタ 、モデル:岩田翼

CREDIT
LOCATION:GREASY Kids

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クルマ選びの最適解は既成概念にとらわれないこと

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細部にもハッとさせられる
フォード マスタング(初代)

フォード マスタング(初代)

平均価格帯:350万円~応談

「アメ車」というイメージでマスタングを見ると、全長が約4.6mとむしろ小さく感じる。長いエンジンフードと短いルーフラインが美しいシルエットを生み出している。ステアリングなど各部の造形は、もはや工業製品ではなく、アートを見ているような気分にさせられる。毎日眺めるだけで新鮮!

アメリカンマッスルカーの雄
シボレー カマロ(初代)

シボレー カマロ(初代)

平均価格帯:450万円~応談

マスタングの好敵手。日本でいえばかつてのハチロクとシルビアの関係にも通じるところがある。当然負けられないわけで、「Z28」というV8の5Lエンジンを積む希少なスポーツモデルを設定。マニュアルのみ、クーラー非装着というスパルタンな仕様となる。他にも排気量7LのV8エンジンもある。

オトコ心をくすぐるボディライン
シボレー コルベット(3代目)

シボレー コルベット(3代目)

平均価格帯:200万円~応談

コカコーラの瓶のように、くびれたボディラインはコークボトルとも称される。グラマラスな2シータークーペだが、コンバーチブルやTバールーフもある。リトラクタブルヘッドライトが埋め込まれたボンネットは長く、その下にV8エンジンが悠々と収まる。クルマ通は「コーベット」とも呼ぶ。

  • 【検索条件】フォード マスタング(初代)&シボレー カマロ(初代)&シボレー コルベット(3代目)×修復歴なし
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  • ※上記の平均価格帯は2017年8月23日現在のものです

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