▲昨年11月、マイナーチェンジした日産 ノートが突如として販売台数ランキングのトップに躍り出た。記録的ヒットはどのようにして生まれたのか。日産の技術者へのヒアリングから、その理由を考えてみた▲昨年11月、マイナーチェンジした日産 ノートが突如として販売台数ランキングのトップに躍り出た。記録的ヒットはどのようにして生まれたのか。日産の技術者へのヒアリングから、その理由を考えてみた。

近年、新車販売台数のトップはアクアやプリウスなどトヨタのHV専用モデルが安定的に占拠していた。
ところが昨年11月、マイナーチェンジした日産 ノートが突如としてトップに躍り出たのだ。見た目はフロントおよびリアのデザインを小変更している程度。もともと室内の広さに定評はあったが一体……、何が起きているのか。

ノートのパワートレインは1.2Lガソリンエンジン+スーパーチャージャーだったが、マイナーチェンジを機に「e-POWER」というラインナップが新たに加わったのだ。

e-POWERとは発電用のガソリンエンジン、駆動用のモーターを搭載した新しいカタチのHV。発電用エンジンはノートのガソリン車と同型で、モーターは同社EVのリーフと共通。ちなみに、ノートに搭載するためにリーフのモーターは、ほんの数ミリほどサイズを調整しているという。

日産によると、現在ノート全モデルにおける販売台数実績の70%を「e‐POWER」が占めているそうだ(2016年11月~2017年2月実績)。さらに、首位奪取の“立役車”となった「e‐POWER」が売れている理由を、これを作った技術者に説明してもらったところ、4つの理由が見えてきた。

▲基本のエクステリアデザインは、ベーシックなノートとほぼ変わらない。オプションでe-スタイリングパッケージというブルーのアクセントを加えることが可能 ▲基本のエクステリアデザインは、ベーシックなノートとほぼ変わらない。オプションでe-スタイリングパッケージというブルーのアクセントを加えることが可能

ノート「e‐POWER」がバカ売れの理由①
「モーターならではの力強く上質な走り」

HVやPHV、EVなどモーター走行ができる車の魅力は、エンジンのそれとは異なる「力強さ」や「加速力」と言えるだろう。

モーターはとにかくパワフルだ。コンパクトカーであるノートは元々車重が軽い。エンジンとモーターが搭載されることで、同車種のガソリンモデルに対して120kgほど重くなっているものの、それでも車重は1200kg前後。大型バッテリーを積むEVのリーフが1400kg以上あることを考えるとその軽さがわかる。その車体を2Lガソリンターボ車並みのパワーを持つモーターで走らせるのだから、どんな人でも、一瞬でその力強さを感じ取れるだろう。

加えて、モーターはトルク制御をかなり細かく調整できるそうで、運転しやすく、上質さを感じる走行フィールを生み出すことができたというのだ。

▲日産 リーフで培った先進のモータードライブシステムと発電用エンジンを組み合わせた新時代のパワートレイン ▲日産 リーフで培った先進のモータードライブシステムと発電用エンジンを組み合わせた新時代のパワートレイン

ノート「e‐POWER」がバカ売れの理由②
「2クラス上の高い静粛性」

モーターが動力の場合、最大の特徴はその「静粛性」だろう。エンジンの場合は回転数の上昇とともに音も大きくなっていく。ところが、モーターはほとんど音を発しない。

e-POWERの開発では、ノートの2クラス上に位置する2.5Lエンジン搭載のセダン「ティアナ」レベルの高い静粛性を目指したという。プレミアムカーならば、静粛性を高めるためのコストをかけることが可能だが、ノートe-POWERはこのレベルの静粛性を達成しつつもコンパクトカーらしい価格に抑えていることに驚く。

発電用エンジンは、始動すると発電効率の最も良いといわれる2000rpm強を維持するのだが、これはノートのガソリン車で高速道路を100km/h前後で走行しているときくらいの回転数。この回転数で発するエンジン音を消すための工夫が、「木を隠すなら森の中」という発想なのだという。

どういうことかと言うと、先に事例を挙げた高速道路の件がヒント。100km/h前後で走行中は、エンジン音よりも実は、風切音やタイヤを伝って聞こえてくるロードノイズの方が大きいそうなのだ。e‐POWERでは“基本的には”時速50km/hを超えてから発電用エンジンが始動する。これが風切音やロードノイズによって、エンジン音を打ち消すことを狙った「木を隠すなら森の中」的なセッティングだったのだ。

このEV的な静粛性も、コンパクトカーの価格で手に入れられるとなれば、お得と言えるポイントだろう。

ノート「e‐POWER」がバカ売れの理由③
「ラクで楽しい新感覚の運転操作」

モーターによる走行フィールの楽しさは、加速力や静粛性だけではない。e‐POWERでは減速でも新しい感覚が味わえる。急減速をするようなシーンがない限り、ブレーキペダルを踏まなくても、アクセルの調整だけで減速から停止までできてしまうのだ。

実際に筆者が試乗したところ、横浜から一般道と高速道を使った都心までの約40kmの道中、ただの一度もブレーキペダルを使わなかった。アクセルを離せば、回生システムで充電しながら減速を開始するのだが、感覚的には運転の上手な人が操作するMT車でエンジンブレーキを利かせて減速していくといった感じだろうか。

完全停止の瞬間も「カックン」ではなく「スーッ」と自然に止まる。ちなみに、上り坂でも下り坂でもアクセル操作だけで停止できるのだという。0.13G以上のGがかかる減速時はブレーキランプが自動点灯するそうだ。

こんな運転操作ができる車はいまだかつてなく、誰にでもわかりやすい新感覚操作に間違いない。

▲写真は、日産氷上試乗会。e-POWERの操作性は、雪道走行など、頻繁に微妙な加減速が必要なシーンでも頼もしい ▲写真は、日産氷上試乗会。e-POWERの操作性は、雪道走行など、頻繁に微妙な加減速が必要なシーンでも頼もしい

ノート「e‐POWER」がバカ売れの理由④
「トップレベルの燃費」

昨今、売れる車の条件として重要なスペックは燃費だろう。

低燃費なHVを設定する車種の増加と、新車販売ランキング上位勢の顔ぶれがそれを物語っている。e‐POWERもカタログ燃費は34km/L~37.2km/L(JC08モード)を誇る。使い方、走らせ方で実燃費に差は出るだろうが、トップレベルの低燃費車であることは間違いない。

さらにe‐POWERの場合、3種の運転モードが選択できるスイッチがついている。AT車に近い感覚で走行できる通常の「ノーマルモード」の他、鋭い加速と強めの減速が特徴でスポーティなレスポンスを味わえる「Sモード」、加速は緩やかだがアクセルオフで積極的に減速を行う「ECOモード」だ。走行シーンに合わせドライブモードを賢く選択しながら、低燃費のコツを探りながら走るのも新しい運転の楽しみ方かもしれない。

▲写真中央下に見えるのがモード切替スイッチ ▲写真中央下に見えるのがモード切替スイッチ

ノートe-POWERはライバル不在!?
指名買いの多さがハンパない!

今回、日産の技術者からノートe-POWERの“うんちく”を聞いてきたわけだが、一言で言うと「新しい走行フィーリング」という部分がユーザーの興味を捉えているように思えた。見た目は普通のノートのまま。でも中身は既存のガソリン車とは全く別物という、一風変わったデビューを果たしたわけだが、結果見事に世間の注目を得た。

一方、カーセンサーが今年3月に行った調査(対象は新車販売ランキングの上位数モデルを“新車”で購入したユーザー500人)によると、ノートe-POWERには他モデルとは違った傾向が見られた。

それは、並行して検討していた車種についての質問の部分。他の車種では、ほとんどのユーザーに比較検討していた車種があるのに対し、ノートe-POWERの購入者は、比較していたモデルが「ない」と回答している、いわゆる“指名買い”が約半数を占めているのだ。

この結果からも、「e-POWER」という新しいタイプのHVへの世間の注目度の高さが証明されていると言えないだろうか。 4月7日現在、カーセンサーnetを確認したところ80台超のe-POWERが流通している。新車はもちろんすでに中古車でも選べる状況なのは、検討していた人にはうれしいニュースだろう。

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text/編集部
photo/阿部昌也、尾形和美