カーセンサーnet上には40万台以上の物件が掲載されている。物件チェックを日課とする筆者が、その中から偶然見つけた「なんだこの中古車は!!」という物件を紹介しよう!

▲今回紹介するのはこちら! クラシックカーとしての価値も上がってきている、W126型のメルセデス・ベンツ Sクラス。なんとこの物件……ピックアップトラックに改造されているのだ! ▲今回紹介するのはこちら! クラシックカーとしての価値も上がってきている、W126型のメルセデス・ベンツ Sクラス。なんとこの物件……ピックアップトラックに改造されているのだ!

高級セダンのSクラスを大胆に改造!

2007年、インターネット上ではアウディ TT ピックアップトラックの存在が話題を呼んだ。もちろん、カタログモデルではなく、ショップが改造したものだった。しかも驚くのは「100台以上のバックオーダーを抱えている」と、当時報じられていたことだった。

当時は、わざわざ美しいクーペであるTTをピックアップトラックにすることに理解を示す声は皆無だった。今でも「Audi TT pickup truck」で検索すると写真が出てくるだろう。

実はこれ、デンマークの話で普通乗用車の自動車税は180%で、商用車の税金は普通車の1/3以下といわれる税率の差に着目した改造だった。まぁ、世の中にはセダンやクーペをシューティングブレイク(ステーションワゴンのようなカタチ)にしたり、セダンをクーペにしたり、と富裕層による差別化需要は存在する。

そんなことを思い起こさせてくれたのが、今回フィーチャーするピックアップ仕様の1983年式のメルセデス・ベンツ Sクラス。

いわゆる、W126型と呼ばれるモデルで“ネオ・クラシックカー”としてぐんぐんと中古車相場が上昇しているものだ。

どういう経緯でピックアップトラックになったのか不明だが、ベースとなっているのは380SELのよう。ロングホイールベースのフルサイズ高級車セダンをあえてピックアップトラックに仕立ててしまう……って面白いじゃないか!


▲Bピラーより後ろの部分がバッサリと切られ、セダンの面影はない ▲Bピラーより後ろの部分がバッサリと切られ、セダンの面影はない
▲大きな荷室が広がり、もとがセダンだったとは思えない ▲大きな荷室が広がり、もとがセダンだったとは思えない

とにかく目立つこと間違いなし!

屋根、リアドア上部、Cピラーをぶった切り、ピックアップトラックに仕上げ、AMGホイールやエアロを取り付けたようだ。

内装はレカロシートが奢られていて、なかなかスパルタン。ただ、Bピラー部分でピックアップトラック化されているのでかなりタイトに見受けられる。

リアのトランクをどうピックアップトラックとして処理したのか気になっていたが、写真をジーッと眺めていたらトノカバーからうっすらトランクの存在が垣間見れた。ただ、荷室がどういう作りになっているのかは……分からない。

▲車内は見た目ほどカスタムされていないが、ステアリングやシートは社外品に交換されている ▲車内は見た目ほどカスタムされていないが、ステアリングやシートは社外品に交換されている
▲2脚ともレカロシートに変更されており、なかなかスパルタンだ ▲2脚ともレカロシートに変更されており、なかなかスパルタンだ

不思議なのは運転席側のリアドアはそのまま残されているのに、助手席側のリアドアは取り払われた後に“スムージング”されているように見えることだ。運転席側から荷室へアクセスするには、“かつて”のリアドアを開ければイイ、ということだろうか?

そんなことを書いているうちに思い出したのが、かつて雑誌版カーセンサーで取り上げた所ジョージさんの、Sクラス ステーションワゴンだ。

同じくW126のSクラス セダンをベースに、Sクラス クーペの顔を移植し、リアにW124型Eクラス エステートのリアゲートを移植した車だった。長年、カーセンサーをご愛用頂いている方なら、記憶に残っているかもしれない。


▲こちら側はスムージング処理されているようで、リアドアが存在しない ▲こちら側はスムージング処理されているようで、リアドアが存在しない

もとい。

自動車において「カスタマイズ」という言葉はあれど、その幅は広い。エアロパーツをまとわせたり、ホイールを交換したり、サスペンションに手を入れたり、はたまたカタログモデルとして存在しなかったカテゴリーの車を作ったり……。

Sクラス ピックアップトラックの注目度が高いことは言うまでもあるまい。それこそ、最新のSクラスよりも……いやっ、フェラーリやランボルギーニと並んでも目立つ。

荷室にバイクを積んでも面白いだろうし、サーフボード載せて海に出かけたらヒーローだ。

いやぁ、人生、一度くらいここまで“振り切った”カスタマイズをしてみたいものだ。そして、そこまでの情熱をかけることに自信がなければ、今回のような物件を手にするのもありだろう。

それにしても奥が深いぜ、中古車!

文/古賀貴司(自動車王国)、写真/カーセンサーnet
古賀貴司(こがたかし)

自動車ライター

古賀貴司(自動車王国)

自動車ニュースサイト「自動車王国」を主宰するも、ほとんど更新せずツイッターにいそしんでいる。大学卒業後、都銀に就職するが、車好きが講じて編集プロダクションへ転職。カーセンサー編集部員として約10年を過ごし、現在はフリーランスのライター/翻訳家として活動している。