AD▲ADバン→AD→NV150 AD→ADと頻繁に車名を変えた日産のライトバン、ADシリーズ。バン登録以外にワゴン登録のモデルも存在した

日産 ADシリーズの中古車は今

積載能力や機動力、コスパに優れた日産の硬派ビジネスモデルといえば、ADシリーズ。

サニーをベースに生まれた小型貨物車「ADバン」に始まり、モデルチェンジで「AD」へ、さらに「NV150 AD」へと名称を変えていった。

乗用車登録の「ADワゴン」、上位グレードが独立して1車種となった「ADエキスパート」など、派生車種も豊富だ。

初代、2代目ADバンについては、流通している物件がごくわずか。年式も古いので、もし手に入れられたとしても修理、整備する前提としたい。

2006年から10年近く生産されたADは、流通量が豊富。上位車種のADエキスパートも含めて、今が狙い時だろう。

NV150 ADは、比較的新しい年式の物件でもリーズナブルな価格帯となっている。新車に近いコンディションの物件を手に入れることもできそうだ。

ここでは派生車種も含めてADシリーズの特徴、中古車を選ぶ際のポイントや現在の中古車相場について解説していく。

なお、正式には1982~1990年の間に生産されたADバンが初代とされているが、現在の中古車市場ではほぼ流通していないため、ここでは1990~1999年にかけて生産されたADバンを初代とする。
 

 

ADバン(初代)/ADワゴン(初代)の特徴と中古車相場

ADバン ▲バンの廉価グレードと、上級グレード&ワゴンで異なるフロントデザインが与えられた初代。写真はADバン

■ADバン/ADワゴン(初代) DATA
生産期間:1990年10月~1999年5月
中古車流通量:5台以下
中古車価格帯:10万~50万円
 

■ADバン/ADワゴン(初代)の特徴
1990年、7代目B13型系サニーの登場と同年にデビューしたADバン/ADワゴン。

シャシーやエンジンなど基本設計はサニーをベースとしている。

エンジンは、1.3L & 1.5Lの直列4気筒ガソリンと、1.7L 直列4気筒ディーゼルという設定だった(後にディーゼルは2Lへと排気量アップ)。
 

AD ▲サニーをベースに、商用車としての利便性を重視して開発された初代ADバン/ワゴン。バンのクオーターウインドウには破損防止のバーが入る(写真はバン)

小型貨物登録(4ナンバー)の「ADバン」と小型乗用登録(5ナンバー)の「ADワゴン」があり、バンの廉価グレードはヘッドライトが角形、バンパーは未塗装という質素な仕様。いっぽうバンの上級グレードとワゴンはヘッドライトが異形となり、バンパーもカラードとなるなど、異なるデザインが与えられた。

バンの後席は角度固定式だが、ワゴンの後席はリクライニングが可能だった。

姉妹関係に当たるサニーカリフォルニアとADバンの上級グレード&ADワゴンのデザインはほぼ共通。サニーカリフォルニアの装備を簡素にしたような内容だった。
 

AD ▲初代ADバン/ワゴンのインテリアは商用車らしく、極めてシンプルなもの。スイッチ類の操作性は良い

■ADバン/ADワゴン(初代)の中古車相場
商用車として人気だった初代ADバン/ADワゴンだが、今や流通している中古車はほとんどない。

今、あえて初代を手に入れ、カスタマイズして乗るのもアリだとは思うが、あまりにも台数が少なすぎる。

もしも程度の良い物件と出合えたらラッキーだ。
 

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ADバン(2代目)の特徴と中古車相場

■ADバン(2代目) DATA
生産期間:1999年6月~2008年12月
中古車流通量:約20台
中古車価格帯:10万~50万円
 

AD ▲2代目となって、姉妹車ウイングロード同様のスッキリしたフォルムになった。未塗装のバンパー、ドアミラーがいかにもビジネスバンらしくて格好いい

■ADバン(2代目)の特徴
ボディサイズは全長4370mm × 全幅1695mm × 全高1475~1510mmと初代より全長で295mm、全幅で30mmほど大きくなり、居住性や積載性を大幅にアップ。外観や内装のデザインも一気に洗練された。

初代で基本設計を共有していたのはサニーカリフォルニアだったが、途中で廃盤となったために、このモデルでは2代目ウイングロードと共有となっている。外観も2代目ウイングロードと共有しながら、バンパーやフロントグリルを未塗装としたシンプルな体裁となっている。
 

AD ▲2代目ADバンの設計は2代目ウイングロードとほぼ共通で、商用車として特別な設計にはなっていない

エンジンは1.3L &1.5L 直列4気筒ガソリン(FF専用)と1.8L 直列4気筒ガソリン(4WD専用)、そして2.2L 直列4気筒ディーゼルの4種類。2000年にはCNG(圧縮天然ガス)仕様が追加された。

初代には小型乗用登録のワゴンも存在したが、このモデルは小型貨物登録のバンのみ。2006年、3代目へとバトンタッチしたが、4WD仕様と5速MT仕様、CNG仕様だけは2008年12月まで継続生産された。
 

AD ▲貨物車だけに、後席を倒したときのカーゴスペースは容量も使い勝手も抜群

■ADバン(2代目)の中古車相場
かつては街でよく見かけたが、生産終了から約14年以上(一部の仕様は12年以上)を経過して中古車流通量は少なく、20台前後となっている。

商用車だけに走行距離がかさんでいる物件が多いが、走行距離5万km前後の物件もぽつぽつ見られる。5速MT仕様、4WD仕様の比率が高いのも特徴だ。

もともと法人名義の車両だった場合、定期的なメンテナンスが実施されていた可能性が高く、そうした意味では年式が古かったり多走行車でもコンディションの良い物件に出合える可能性は高い。
 

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ADの特徴と中古車相場

■AD DATA
生産期間:2006年12月~2016年12月
中古車流通量:450台
中古車価格帯:10万~100万円
 

AD ▲3代目ウイングロードと共通の設計となり、車名も新たにADとなった。未来感のあるフォルム、だけどホイールはスチール、バンバー未塗装なのが新鮮!

■ADの特徴
2006年にフルモデルチェンジしたタイミングで、車名を「ADバン」から「AD」に変更された。切れ長ヘッドライトに大胆な面構成のボディデザインを採用し、質感も向上している。

ボディサイズは全長4395mm × 全幅1695mm × 全高1500mmと、2代目ADバンと比べて全長を25mm延長。小型貨物車登録(4ナンバー)のサイズに収まっているが、カタマリ感のあるデザインワークによって全体的にボリュームアップした印象を受ける。

独立した車種となったADエキスパート(後述)のバンパーはボディと同色だが、こちらは未塗装。いかにもビジネスバンらしい見た目が特徴だ。基本設計を3代目ウイングロードと共有するが、リアサスペンションについては荷台への出っ張りが少なくなる専用形状とし、床高も低床となっている。

また、インテリアについても、助手席の背もたれを倒すと出現するシートバックパソコンテーブルやインパネ備え付けのホワイトボードを採用するなど、営業車としての使い勝手にとことんこだわった作りが魅力だ。
 

AD ▲後姿も質実剛健な印象。リアゲートには大きなバックランプが内蔵されている

デビュー時に用意されたエンジンは1.2L & 1.5L 直列4気筒ガソリンの2種類。トランスミッションは4速ATのみ(後に1.5L車はCVTに変更)、駆動方式もFFのみと、ADバン時代に比べるとデビュー時のバリエーションはかなり絞られた。

デビュー2年後の2008年12月には4WDモデルを追加。2代目ADバン同様、リアデフ直前にカップリングを設けて適宜、後輪に最適な駆動力を配分するトルクスプリット型の4WDシステムだ。4WD仕様には専用エンジンとして1.6L 直列4気筒ガソリンエンジンが搭載された。

2009年5月には、これまで運転席側だけが標準だったエアバッグを助手席側も全車標準化。さらに2013年5月には、1.5L車のトランミションをCVTに変更し、エンジン本体も改良型に代えて燃費性能を向上させた。

なお、2016年11月のマイナーチェンジで車名が「NV150 AD」に変更されたが、2021年5月には再び「AD」の名前に戻っている。

復活後のADはアイドリングストップ機構(FFのみ)や自動的にヘッドライトの向きが切り替わるハイビームアシスト、坂道での発進を容易にするヒルスタートアシスト、USB電源ソケットなどを全車標準とし、装備内容が一気に充実した。
 

AD ▲リアサスペンションの設計を工夫し、積載の邪魔にならない形状としているところに商用車としてのこだわりが見える

■ADの中古車相場
生産期間が約10年と大変長いこともあり、中古車流通量は約450台と豊富。現時点の中古車平均価格は40万円弱だ。

通常、中古車ではデビュー直後や大規模マイナーチェンジ直後の年式ほど流通数が多くなるのが一般的だが、ADではモデル後期(2013年以降)の年式が圧倒的に多く、最も多いのは2016年式となっている。

最安値帯は総額20万~40万円で、このゾーンは2013~2015年あたりの物件が多い。走行距離10万km未満のものが多く、きちんと整備されていた車両ならまだまだビジネスシーンで活躍してくれることだろう。

程度の良い物件を狙うなら、流通量の多い2016年式がオススメ。この年式だけで100台以上の物件がヒットし、その約半数は走行距離5万km以下だ。予算の目安は40万~70万円となっている。

ウイングロードではなく、あえてADを選び、趣味のギアを載せるトランスポーターに仕立てるのも楽しいだろう。4ナンバーなので毎年車検の面倒さはあるものの、維持費はリーズナブルだ。
 

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ADエキスパートの特徴と中古車相場

■ADエキスパート DATA
生産期間:2006年12月~2016年12月
中古車流通量:約40台
中古車価格帯:10万~80万円
 

AD ▲バンパー、ドアミラーがボディ同色となり、3代目ウイングロードとほぼ変わらない外観のADエキスパート

■ADエキスパートの特徴
もともと、日産 アベニールの小型貨物車登録版として存在していた「エキスパート」。

それが2006年、新型ADの登場とともにADシリーズの一員に組み込まれ、「ADエキスパート」という単独の車種となった。

基本設計はADと全く同じだが、上位車種として乗用車に近い装備が与えられている。ADとの違いは前後バンパー、サッシ、ドアミラー、ドアハンドルなどがボディ同色になっているという点だ。

エンジンはFF(前置きエンジン・前輪駆動)の1.5 L 直列4気筒ガソリン、4WDの1.6L 直列4気筒ガソリンに加え、ADエキスパート専用に1.8L 直列4気筒ガソリン(FFのみ)が用意された。登録区分はADと同じく小型貨物車(4ナンバー)である。
 

AD ▲ADエキスパートには専用の1.8Lエンジンが用意され、外観だけでなく走りも差別化されていた

マイナーチェンジの内容もADとほぼ同様で、2009年5月に助手席側エアバッグを全車標準化。2010年8月にはドアミラーをボディ同色に変更し、さらにADエキスパートはインテリジェントキーとイモビライザーが標準装備されている。

2013年5月には1.5L車のトランミションをCVTに変更し、エンジン本体も改良型に代えて燃費性能を向上させた。

2016年11月のマイナーチェンジにより、ADとADエキスパートを統合した「NV150 AD」となり、2021年にADの車名が戻った後もADのグレードに組み込まれて現在に至っている。
 

AD ▲デザインはADと共通だが、ADエキスパートには助手席にグローブボックスが装備されていた

■ADエキスパートの中古車相場
現在の中古車市場に流通しているのは40台前後。最安値帯はADとほぼ同程度の総額30万~50万円となっている。

年式ごとの流通量もAD同様に後期モデルが多く、2015~2016年式に約半数の物件が集中。1.5L車がほとんどで、1.6L車(4WD)、1.8L車はごくわずかしか存在していない。

小型貨物登録だが、プライベートユースで乗るのも、もちろんアリ。ちょっと豪華な外装で、価格はリーズナブルという状況なので、ADを狙っているなら、ADエキスパートも選択肢に加えてみよう。
 

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NV150 ADの特徴と中古車相場

■NV150 AD DATA
生産期間:2016年12月~2021年5月
中古車流通量:約140台
中古車価格帯:30万~140万円
 

AD ▲新たな車名、NV150 ADとなって顔つきもラギッドな雰囲気に。趣味の道具として乗っても違和感なし

■NV150 ADの特徴
日産ビジネスモデルの名称が「NV」シリーズに統一されたことを受け、2016年にADとADエキスパートを統合した車種として「NV150 AD」が登場した。

基本設計は全く同じで車名が変わっただけだが、バンパーおよびグリルデザインは刷新。同社のシンボルであるVモーショングリルが与えられ、よりスタイリッシュな外観となった。

インテリアではインストアッパーボックスの容量拡大や大容量グローブボックスを採用することで収納力を大幅に向上。500ml紙パックに対応したカップホルダーを設定するなど使い勝手の向上も図られている。
 

AD ▲インテリアのデザインはAD時代とほぼ変わらず。助手席側の小物入れは使い勝手が◎

また、これまでのビジネスバンでは縁がなかった、歩行者検知を可能とする「エマージェンシーブレーキ」、車線逸脱防止警報の「LDW」および横滑り防止装置の「VDC」などの先進安全装備も主要グレードに標準装備。乗用モデルと比べても全く遜色のない安全性能となっている。

エンジンはFF(前置きエンジン・前輪駆動)が1.5L 直列4気筒ガソリン、4WDが1.6L直列4気筒ガソリンで、ADエキスパートに設定されていた1.8Lエンジンは廃止された。

グレードも、従来のADに相当する「DX」と「VE」、従来のADエキスパートに相当する「エキスパートLX」と「エキスパートGX」に整理された。エキスパート系のグレードはバンパーなどがボディ同色となり、装備も上級になっている。

2021年5月には、再び車名がADに戻された。
 

AD ▲エキスパートはNV150 ADのグレードに編入。こちらはカラードバンパーとなっている

■NV150 ADの中古車相場
NV150 ADという名前での生産期間は4年半と短かったわりに、中古車市場での流通台数は140台前後と、まずまずの充実度。

その約8割が1.5L・FFの「DX」、または「VE」のグレードだ。

最安値帯は60万~80万円。デビュー直後の2017年式がメインになるが、走行距離は5万km前後が多く、コンディションはまずまずだろう。近い条件のAD/ADエキスパートとよく見比べて選択するのがオススメだ。

2019年式以降の高年式モデルは、多くが走行距離3万km以下で1万km以下の物件も多く、新車に近いコンディションで乗れる。予算の目安は80万~110万円となるが、新車時の価格帯は160万円前後であり、しかも長く乗れる商用車であることを考えるとお手頃と言える。

外装や内装のデザインこそ簡素だが、走行性能、安全性能は乗用車のウイングロードとほぼ一緒、ビジネスユースはもちろん、遊びのギアとして乗っても不満はないだろう。
 

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※記事内の情報は2021年7月7日時点のものです。
 

文/田端邦彦 写真/日産
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。