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運転中に竜巻に遭遇したときの対応と、命を守るための避難法

運転中に竜巻に遭遇したときの対応と、命を守るための避難法
日本でも竜巻は毎年発生。局所的に大きな被害をもたらしています。建物を倒壊されるなど危険な竜巻。その被害や事前の備え、運転中の対処などを解説します。

知っておきたい竜巻の予備知識

接近してくる竜巻


竜巻とは、発達した積乱雲にともなう強い上昇気流による、渦巻き状の突風のこと。竜巻の直径は数十~数百mが一般的で、風圧で車や建物を巻き上げるほど激しいエネルギーをもっています。

竜巻の特徴は、狭い範囲に短時間で甚大な被害をもたらすこと。日本で発生する竜巻の風速は小さなもので毎秒30m、大きなものだと70m。直径数十~数百mの範囲で建物などを破壊しながら移動していきます。

移動スピードは様々。一般的には時速40~50kmで、過去には時速約90kmを記録したこともあります。一方で寿命は短く、日本の竜巻は数分~30分ほどで収まる場合がほとんどです。

竜巻と同時に起こる自然災害

発達した積乱雲の付近では竜巻だけでなく、様々な自然災害が引き起こされます。例えば、下降気流が地表に衝突して突風が水平に吹き出す「ダウンバースト」や、冷たい空気が温かい空気に流れ出すことで突風が生じる「ガストフロント」などが発生します。

他にも積乱雲は豪雨や落雷も引き起こします。それらが同時に発生することも少なくありません。積乱雲を見つけたら竜巻とともに、これらの災害にも注意が必要です

竜巻が発生しやすい時期と場所

日本では毎年、平均25件程度の竜巻が確認されています。積乱雲が発達しやすい7~11月にかけて件数が多くなる傾向にありますが、年間を通じて発生。日本全国で見ると、竜巻が発生しない時期はほとんどありません。

発生する時間帯は夜間より昼間が多く、特に11~18時の間に集中。発生する場所は、東北地方の日本海側から北陸、本州と四国の南岸、九州、沖縄が多く、東北地方の太平洋側と瀬戸内海沿岸では少なくなっています。また、竜巻は平野部で発生しやすいともいわれています。

日本では竜巻の被害は局所的ですので、新聞などで過去の竜巻の被害を調べ、起きやすい地域を確認しておくと良いでしょう。

竜巻による事故と被害

竜巻による被害のほとんどは、瓦や看板、破片といった建造物の一部や樹木などが竜巻で巻き上げられることが原因。猛スピードで物が飛んできます。これらが人に当たれば箇所によっては命の危険がありますし、車に当たれば大きな損害を受けるでしょう。

風速毎秒50m以上の竜巻になると、車が横転したり、木造家屋などの建物が変形したりすることも。日本では大規模な竜巻が発生することは希ですが、2018年6月には滋賀県で風速65mと推測される近畿地方最大級の竜巻が発生。建物の屋根を吹き飛ばし、窓ガラスを割るなど大きな被害をもたらしました。

竜巻の発生を予測する方法

竜巻の兆候となる積乱雲


現代の気象観測技術でも、竜巻の発生は事前に予測できません。しかし、竜巻の発生源である積乱雲に注意すれば、いざ竜巻が発生したときにすばやく行動できます。

気象庁による「竜巻注意情報」は、ダウンバーストやガストフロントなど竜巻以外の情報も含まれおり、段階的に発表。積乱雲が発達する兆候のある半日から1日前に「竜巻などの激しい突風のおそれ」という表現で注意を呼びかけられます。

また、竜巻への注意喚起をともなう「雷注意報」が発表されたら、数時間後に竜巻が発生するかもしれないということ。すぐに避難できるよう準備しましょう。

いつもと違う形の雲を見かけたら警戒する

竜巻注意情報や雷注意報が発表されても、必ず竜巻が発生するとは限りません。また、竜巻は発達した積乱雲の下で局所的に発生するので、そのエリアから外れていれば被害を受けないでしょう。

だからと言って油断は禁物。積乱雲を見つけたら注意が必要です。「周囲が急に暗くなった」「雷鳴が聞こえる」「豪雨や雹、霰が降り出してきた」といった現象が起きたら積乱雲の直下にいる可能性大。巨大な「入道雲」や、上方が大きく拡がった形状の「かなとこ雲」も積乱雲が発達したものなので、警戒してください

いつもと違う変化を感じたら竜巻の接近を疑う

竜巻に遭遇した人たちは、直前に「急激な気圧変化で耳に異常を感じた」などの変化を報告しています。これは竜巻が迫っているサインです。

また「雲の底から地上に伸びる漏斗状の雲」「飛散物が筒状に舞い上がる様子」は、竜巻の特徴そのものです。このような変化を察知、目撃したら、周囲をうかがいつつ速やかに退避しましょう

「竜巻発生確度ナウキャスト」の画面

(引用元:気象庁「竜巻発生確度ナウキャスト」)

「竜巻発生確度ナウキャスト」を活用する

竜巻注意情報は1時間以内の竜巻発生を予想するもの。情報の有効期間も当然、約1時間です。竜巻注意情報は、気象庁の「レーダーナウキャスト」内にある機能「竜巻発生確度ナウキャスト」で確認できます。

竜巻発生確度ナウキャストでは「竜巻が今にも発生する(または発生している)可能性の程度」を推定。突風が発生しやすい地域の詳細な分布と、約1時間先までの予報を知ることができます。前述した、竜巻の兆候を感じたときは必ず確認しましょう。

なお、竜巻注意情報や雷注意報は発生確度(予想の正確さ)が「2」になると発せられる他、目撃情報が得られて発生する可能性が高いと判断した場合にも公表されます。発生確度はほか2段階で、発生確度1は予想の的中率が1~7%、2は7~14%となっています。

運転中に竜巻が近づいてきたときの対応

走行中に接近してくる竜巻


風速毎秒30m程度の規模が小さい竜巻でも、そのまま運転を続けると突風を受けて車線をはみ出してしまい、事故につながる可能性があります。最悪の場合、車ごと横転する危険も。

竜巻の接近を感じたら落ち着いて車を減速。コンクリート造もしくは鉄骨造の建物下など、安全に退避できる場所を探しましょう

竜巻が目前に迫っても慌てて逃げない

竜巻が目の前まで来てから、車で逃げようとするのは危険です。竜巻の移動速度は一般的に時速40~50kmと速く、蛇行や反転を繰り返す複雑な動きしているので、進路を予測できません。また、慌てて運転すると交通事故に遭うリスクもあります。

駐車時に竜巻が近づいてきたときの対策

竜巻を避けて頑丈な建物に駐車


竜巻が発生したときは、コンクリート造や鉄骨造の頑丈な建物内に駐車すること。車を建物内に止めるのが難しい場合は、自分や同乗者だけでも頑丈な建物内へ避難してください。カーポートやプレハブなど建物の下、電柱や樹木の近くに駐車するのは、倒壊や飛来物の危険があります

頑丈な建物内に避難したなら、そのまま車内で竜巻が通りすぎるまで待機。竜巻は移動が速いため、通過時間は長くても数分程度と予測されます。

車内にいても絶対に安全とは限らない

路肩やカーポート下などに駐車した場合、車内にいた方が屋外よりリスクは下がります。しかし、100%安全とは言い切れません。窓ガラスの破損や横転といった事態に備えて、頭の位置をできるだけ下げ、手で頭部を覆うなど、身を守ることを最優先にしてください。

もし安全な場所が近くにない場合は、人が入れる大きさの側溝やビルの間など、できるだけ体を露出させない場所へ避難すること。また、自宅など建物内に避難できた場合も、安心するのは早計です。カーテンや雨戸を閉め、ガラス窓や薄い壁から離れた所にある頑丈な机の下などに身を潜めましょう。

車が竜巻の被害を受けた場合の対処

竜巻の被害を受けた車


車が竜巻に遭遇したら、パンクや、ガラスやボディの損傷などをチェックします。ただし竜巻が通過した後は、樹木が倒れていたり、建物の破片などが飛散したり、割れたガラス片などが落ちていたりする可能性があります。足元には注意してください。

竜巻が通過してしばらく時間がたった後でも、上空に積乱雲がとどまっていると豪雨や落雷に見舞われることがあります。必ず安全が確認できてから出発してください。

自走不可ならレッカー車を手配する

竜巻による破片の衝突などで車が大きく損傷した場合、そのまま走行するのはNG。危険なのはもちろん、ガラス窓に小さなヒビが入っていたり、ランプ類が割れていたりするだけで、道路交通法違反となります。迷わずレッカー車を手配し、整備工場などで修理してもらいましょう。

車が横転した場合は、むやみに車外に出ようとすると危険です。可能なら携帯電話などで連絡して救助を待ちましょう。

竜巻被害にも自動車保険は適用される

車両保険に加入している場合は、竜巻による車両への損害にも適用できます。ただし、加入しているプランなどによって金額や適用の可否は異なります。保険会社に詳細を確認してください。

その際、竜巻が発生した正確な日時と場所、損傷箇所の提出が必ず求められます。必ず被災直後に写真や記録を取っておきましょう。

監修
河田恵昭

河田恵昭(かわた よしあき)。京都大学名誉教授。関西大学社会安全研究センター長・特別任命教授。日本政府中央防災会議防災対策実行会議委員。人と防災未来センター長。日本における自然災害に関する第一人者であり、防災・減災・縮災の重要性を説いている