Q.2年前の車のメーター巻き戻しが発覚。もう時効なの?

購入から2年が経過したので車検に出したのですが、メーターの巻き戻しが発覚しました。販売店に文句を言ったところ、自分たちも知らなかったし、そもそも2年もたっているから時効だとの対応。泣き寝入りするしかないのでしょうか?

A.時効は発見から1年。隠れた瑕疵か動機の錯誤にあたります

メーターの巻き戻しは、買い主(ユーザー)が通常の注意を用いても発見することはできません。これは隠れた瑕疵にあたります。隠れた瑕疵の場合、店側は瑕疵担保責任において修理や契約の解除、損害賠償などの対応が必要です。瑕疵担保責任は、無過失責任なので「自分たちも知らなかった」は通用しません

今回のケースでは、2年間乗っていたということもあり、契約の解除というよりは損害賠償の請求で解決することが現実的でしょう。購入時、巻き戻された状態での金額と巻き戻されなかった場合の実際の走行距離の相場の差額が賠償金額となります。知らずに乗っていた精神的苦痛などは含まれません。

時効の件ですが、除斥期間は民法での規定で、発見から1年となっています。ですから、販売店の「もう時効」という言葉は当てはまりません

注意しておいてほしいのは、瑕疵担保責任は任意規定ということです。もし特約に店側の瑕疵担保責任を免除する旨の記載があり、それに買い主(ユーザー)がサインをした場合には、店側は瑕疵担保責任を負いません。ただし、公正取引協議会や社団法人 日本中古自動車販売協会連合会に加入している販売店は、瑕疵担保責任を放棄することはほとんどありません。正式な団体に加盟をしているか、また契約書の内容はどうなっているかをしっかりと確認しておくことも重要です。

ちなみに、もしメーター巻き戻しが行われずに正しい走行距離が表示されていたら、おそらく買い主は走行距離が多いので契約しなかったであろうと考えられます。この状態のことを「動機の錯誤」と捉えることができます。この動機の錯誤の観点から今回の質問を考えてみても、上記の隠れた瑕疵と同じように、店側に契約の解除または損害賠償を要求することが出来ます。
第97回:販売店に預けていた車が全損。損害賠償はどうなる?|渋滞ができる法律相談所
illustration/もりいくすお

■ワンポイント法律用語■

隠れた瑕疵(かくれたかし)
売買の対象とされた特定のものに見つかった、取引の時点ではわからなかった傷や欠陥のこと。責任は売り主に発生する。代替性があるものなら交換すればよいが、Uカーは一物一価なので代替性がなく、損害賠償か契約解除による事態の解決が行われることが多い
動機の錯誤(どうきのさくご)
正しい情報を得られていた場合は、意思表示そのものを行わなかったと考えられる意思決定における錯誤。今回のケースでは、巻き戻された距離数ではなく、正しい距離数が表示されていれば契約には至らなかったと考えられる