▲くまモン保冷剤が100円は安い!(ような気がする!)ということで、人はついつい安さを過剰に求めてしまいがちですが、「すべてが最高なのに安い」という商品はあまりないものです ▲くまモン保冷剤が100円は安い!(ような気がする!)ということで、人はついつい安さを過剰に求めてしまいがちですが、「すべてが最高なのに安い」という商品はあまりないものです

少なめの予算で最高の中古車を求める困った人たち

みなさんこんにちは、特種モータージャーナリストの伊達軍曹です。「特種車両のジャーナリスト」ではなく、「特種な立ち位置の自動車ジャーナリスト」です。そんなわたくしに車の購入相談を持ちかける奇特な友人・知人もたまにいて、特に専門分野である中古車についてはしばしば相談を受けます。基本的にはわたしの知識・経験が及ぶ限りは真摯にお答えしていますが、なかにはどうにも答えようがない相談を持ちかける人もいます。「身の程知らず」というやつです。

知人 あのさあ軍曹さあ、2年落ちぐらいまでで、カッコ良くて性能が良くて、ボディカラーは白か黒で、そんでもって安く買える中古のガイシャってないかな?
軍曹 例えば○○は人気薄だから、新しくて状態もいいやつが比較的安く買えると思いますよ
知人 や、オレってそういうマイナーなのダメなんだわ。もっとこうビーエムとかでない?
軍曹 現行5シリーズは今、物件が比較的ダブついてるようなので割安ですよ
知人 いくらぐらい?
軍曹 走行1万km台の523iが総額440万円とか。新車は600万円以上でしたから、ホントお買い得ですよね
知人 や、言い忘れてたけど予算上限は300万円なんだわ
軍曹 ……じゃ、フォルクスワーゲンのup!なんてどうでしょう?
知人 ゴメン、オレああいう小さいのダメなんだ。だから5シリーズ、300万円にならない?

「ならない?」と言われても、わたしは車を売っているわけではないのでどうにもなりません。というか問題はそこではなく、「寝言は寝てから言え」ということです。知人の希望は要するに「年式的に新しい、車格的にもアッパーな人気モデルを、新品の半額以下で買いたい」ということですが、そんなウマい話があるわけがない。モノを安く買いたいなら、どこかに妥協するポイントを設定しなければなりません。しかし知人は一切の妥協をしたくないと言う。まさに寝言です。

……しかし、わたしもその知人のことをあまりとやかくは言えません。なぜならば、自分の専門分野である中古車についてはそういった当たり前の思考ができますが、さほど知識がない分野の品物を買おうとする際は、たぶんこの知人と同じようにメチャクチャなことをお店の人に言い、苦笑させているはずだから。

なので「できるだけイイものを、できるだけ安く買いたい」という煩悩は理解できます。誰だってそうです。でも実際はどこかで妥協せざるを得ない。……では「なるべく新しい年式の中古車を極力安く買いたい」という場合、どこをどう妥協するのが得策なのでしょうか?

上手に選べば過走行車も決して悪くはない選択

さまざまな妥協点が考えられますが、わたしから一つ提案したいのは走行距離です。要するに「過走行気味の個体を探してみる」ということ。

中古車の走行距離というのは年間8000kmぐらいを「標準的」考えることが多く、多めに考えたとしてもせいぜい1万km/年ぐらいがギリギリ標準的で、それを大きく超えると「この車は過走行気味ですから安くせざるを得ないですね~」という話になります。そしてもちろん、車というのは走行距離は短めであったほうが基本的には各部の傷みが少ない場合が多いので、その査定は理にかなっています。

でも実際は、仕事の都合か何かで1回運転するあたりの移動距離が極端に長く、結果として過走行とされる走行距離になったとしても、全体のコンディションが意外と悪くない車というのも結構あるものです。

「渋滞した市街地での短距離走行を繰り返す」というのは実は車にとってシビアコンディションで、そういった車よりも、「ズバッと長めの距離をややハイスピードで走りきる使い方がメインでした」という車のほうが、逆に状態は良かったりもするわけです(※2万km/年以上というのも、それはそれでシビアコンディションに該当するのですけどね)。

ということで、2年落ちすなわち2012年式ぐらいの、しかしすでに4万km以上走っちゃっているような中古車はどうしても低査定になりますから、車両価格はかなり安くなる。でも、なかにはかなりアタリな、全然悪くない過走行車もある。なのでそれをじっくり探してみる……というのが、「年式的に新しい、車格的にもアッパーな人気モデルを、新品よりもかなり買いたい」という寝言に対するいちおう有効な回答でしょう。

知人 なんだ、やっぱりウマイ話があるんじゃないか。早くそれを言えよ!

……アナタまだいたんですか? これだって、距離が多い分だけ安く買えるけど、売却するときもその分安いわけだから、決してウマい話というわけじゃな……あ、行っちゃった。

▲走行距離は中古車にとって確かに重要な数字の一つですが、そこだけにこだわり過ぎるのも考えもの。「全体としてのコンディション」を柔軟に判断したいですね ▲走行距離は中古車にとって確かに重要な数字の一つですが、そこだけにこだわり過ぎるのも考えもの。「全体としてのコンディション」を柔軟に判断したいですね

▲本稿公開時点でまだ残っているかは不明ですが、アルピンホワイトの2012年式BMW320iなのに、走行4万kmということでかなりお手頃価格になっている物件がありました ▲本稿公開時点でまだ残っているかは不明ですが、アルピンホワイトの2012年式BMW320iなのに、走行4万kmということでかなりお手頃価格になっている物件がありました

text/伊達軍曹