3Dプリンターから誕生したアメリカのスーパーカー「ブレイド」が話題。でもこれって……
2015/07/30
新しい車両軽量化の手段として普及するのか否か要注目!
「3Dプリンターを使って誕生したスーパーカー」という触れ込みで「ブレイド」という車両が話題を呼んでいます。アメリカの新興企業、DIVERGENT MICROFACTORIES(以下、DM社)が発表したもので車両の軽量化、車両生産時のCO2排出量の少なさをウリにしています。
ブレイドは車両重量が650kg以下、0→60mph(96km/h)が2.5秒以下、と発表されています。ただ、DM社はスーパーカーメーカーとなるつもりはないようで、「ノード」と呼ばれるカーボンロッドのコネクターがメインの商品となっています。
シャシーのコンセプトは、中空管材を組み合わせたチューブラースペースフレームに似ています。DM社が提案しているのは、中空管材の代わりに航空宇宙産業で用いられている軽くて強度のあるカーボンファイバーロッドです。中空管材は熔接できますが、カーボンファイバーは熔接できません。そこで投入されたのがノードです。
ノードはアルミの粉末を3Dプリントしたもので、レーザーで成型されています。3Dプリンターを使って誕生したスーパーカーとセンセーショナルに取り上げられていますが、3Dプリントされたのはこのノードだけです(笑)。このノードにカーボンファイバーロッドを差し込むだけで、シャシーが出来上がるんです。
ちなみに筆者はDM社の社長、ケヴィン・ジンガー氏を注目しています。元々はゴールドマン・サックス証券に勤務していた金融マンで、2009年には「CODAオートモーティブ」という電気自動車メーカーを設立。ジョージ・W・ブッシュ政権時の米国財務長官、ヘンリー・ポールソン(元ゴールドマン・サックス証券会長)をはじめとした錚々たる投資家から資金を集めました。
中国の自動車メーカー、バッテリーメーカーなどともジョイントベンチャーを繰り広げ、集めた資金は300億円を超えると言われています。電気自動車関連開発事業へのアメリカ政府の手厚い助成金もたんまりあったことでしょう。もちろん犯罪行為だと言っているのではなく“制度”を上手く利用しただけです。しかし、CODAオートモーティブから販売された電気自動車は約100台。やがて資金難に陥り、倒産しました。そういったことを踏まえると「失敗しても再チャレンジの土俵が常にある」ということをDM社が教えてくれているような気がします。
それにしてもジンガー氏は、センセーショナルな話題作りが上手ですね。しかもキーワードが常に最先端です。CODAオートモーティブのときは「CO2排出量削減」、「電気自動車」、「リチウム電池」、「中国」でした。今回は「CO2排出量削減」、「3Dプリント」、「生産時のCO2排出量削減」、「カーボンファイバー」です。
それにしても3Dプリントしたノードに注目を集めるために、スーパーカーを作るとは面白いです! 理屈は分かりますが、ノードが果たして実用に耐えうるのか、これからのニュースが見ものです。そして、今度はどのくらいの投資が集まるのやら……。
【関連リンク】
- DIVERGENT MICROFACTORIES社
- DM社が作ったノード解説動画(Divergent Microfactories - Blade|YouTube)
- FORBESが取り上げた動画(The First 3D-Printed Supercar|YouTube)
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