▲商用車など一部の廉価グレードを除き、現在ではほとんどの車にシートベルトの高さ調節機能が備わっている ▲商用車など一部の廉価グレードを除き、現在ではほとんどの車にシートベルトの高さ調節機能が備わっている

意外と使われていないシートベルトの高さ調節機能

いまや運転席&助手席エアバッグは当たり前。カーテンシールドエアバッグやサイドエアバッグが軽自動車にも搭載され、電子制御で車を安定させ、衝突被害を軽減させるブレーキサポート機能だって多くの車に標準装備されている。

そんな安全装備が百花繚乱の現在だが、最も基本的な安全装備といえば「シートベルト」であることに異論はないはず。

先日、某国産自動車メーカーが主催するペーパードライバー(運転初心者)向けドライビングレッスンを取材した。免許を取得してから50年間一度も車を運転していない人や、月に数回運転するものの「何度挑戦しても車庫入れがうまくいかなくて……」という人、子供が生まれ車が必要になった人など参加者の運転レベルはバラバラ。共通しているのは「車に慣れていないこと」だった。

講習では最初にシートやステアリングの位置を調整するところからスタート。シートを前に出したりハンドルの高さを調整して正しい運転姿勢を作っていたが、シートベルトのポジションを合わせる人は皆無。シートベルトに高さ調節機能(ハイトアジャスター)が付いていることすら参加者の誰もが知らなかった。

プロが語る、シートベルトの高さ調節の重要性

おそらくこのドライビングレッスンに参加した人は、ご主人など他の誰かが調節した高さのままシートベルトを使っているに違いない。ここにどんな危険が潜んでいるのか、日産自動車のプラットフォーム・車両要素技術開発本部 シート・安全装備開発グループに所属する小菅努(こすげつとむ)さんに話を伺った。

「シートベルトはハイトアジャスターを使って肩の中央を通るように高さを調節してください。首の方にかかっていたり逆に肩から外れそうになっていると、万が一の衝突時に上半身をきちんと拘束できない恐れがあります」(小菅さん)

シートベルトはシートを前に大きくスライドさせると首の方にかかる傾向があり、シートリフターでシートを上に動かすと肩から外れる傾向があるとのこと。したがって、まずドライビングポジションを合わせ、最後にハイトアジャスターでベルトの高さを調節する。これが正しい順番だ。

「ご主人が高さ調節した状態のまま奥さまがシートベルトを着用すると、ベルトが首にかかった状態になることが多いですね。反対に奥さまが高さ調節した状態のまま背の高いご主人がシートベルトを着用すると肩から外れてしまう可能性もあります。どちらも危険な状態ですので、運転前に必ずドライビングポジションとシートベルトの高さ調節を行ってください」(小菅さん)

▲ご主人の背が高い場合、シートの高さを低くして写真のようにシートベルトをいちばん上まであげていることが多いはず ▲ご主人の背が高い場合、シートの高さを低くして写真のようにシートベルトをいちばん上まであげていることが多いはず
▲その状態で背の低い奥さんが座ると……ベルトが首にかかっていたり、前が見にくいまま運転していたりする可能性が高い ▲その状態で背の低い奥さんが座ると……ベルトが首にかかっていたり、前が見にくいまま運転していたりする可能性が高い

シートベルトは正しく使うことで初めて効果が発揮されるもの。小さなお子さんにチャイルドシートが義務付けられているのも、シートベルトを正しく使うためだ。「シートベルトは付けておけば大丈夫でしょう……」と思っている人もいるかもしれないが、万が一の際に命を守る大切な機能だけに毎回しっかり調整し、正しく着用することを心がけたい。

▲高さ調整の仕方は取扱説明書に載っている。面倒でも確認し、ベルトやシートを都度調整する習慣をつけましょう! ▲高さ調整の仕方は取扱説明書に載っている。面倒でも確認し、ベルトやシートを都度調整する習慣をつけましょう!
text/高橋 満(BRIDGE MAN)