スバル ヴィヴィオタルガトップ

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?

漫画『頭文字D』がきっかけで軽オープンカーに興味をもった

生産台数が少ない車に限って、中古になってからもしぶとく生き残り、光り輝くものである。田代悠太さんの愛車、ヴィヴィオタルガトップのことである。

富士重工(現SUBARU)の創立40周年を記念して、1993年に販売された本車は3000台の限定生産だった。現行型スズキ ジムニーがコンスタントに月4000台を売っていることを考えれば、それがいかに少ないかが分かるというもの。

それなのに登場から30年近くたった現在でも、中古車のタマ数は希少性に比して意外なほど多い。そして、この手の限定車にありがちなプレミアム価格が付けられることもなく、普通の中古車として流通しているところが面白い。

そんなヴィヴィオタルガトップの独特の立ち位置が、今回紹介する田代さんの琴線に触れた。

スバル ヴィヴィオタルガトップ ▲タルガトップの車名からもわかるとおり、ルーフ部分を脱着できる構造になっている

「大学時代に、漫画『頭文字D』を読んだことが車好きになったきっかけです。なぜ軽自動車を選んだかというと物語に登場したスズキ カプチーノの影響なんです。拓海のハチロクと互角に渡り合うストーリーにビビッときました! それに軽スポーツカーなら維持費が安く、大学を卒業したばかりの僕でも何とか維持できるかもしれないと思って」

だが、カプチーノの中古車は若者が買うには高価になりすぎていた。そこで田代さんはカプチーノと同じように着脱可能なハードトップをもつ軽自動車を探すことにした。マツダ AZ-1はカプチーノ以上に希少で高価。ダイハツ コペンはタマ数豊富だが、これもやはり高価で手が出ない。

そうやって“中古車沼”を底深くまで潜って、ようやく探し当てたのがヴィヴィオタルガトップだったという訳だ。

「運よく走行距離が少なく、ガレージ保管の状態の良い個体が見つかり、乗り出し50万円で手に入れることができたんです。僕が生まれた年と同じ1994年式。運命を感じましたね」

「ダウンヒルなら負けねえぜ!」

ヴィヴィオタルガトップは、軽でありながら4座をもつオープンカーである。しかも、独立式のトランクスペースまで備える。そのおかげで、他に類を見ない凸型の独特なカタチになった。

いま改めて見ると、古い軽規格ならではの極端な小ささと相まって何とも言えない愛嬌がある。

「慣れれば屋根をあっという間に外せるので、天気の良い日はチョイ乗りでもオープンで走りますよ。リアシートは大人がまともに座れないぐらい狭いですが、荷物置き場として活用しています」

そう言って田代さんはアルミ製の屋根を手際よく外し、車内のボタンを操作してリアウインドウを下げた。新車が販売されていた当時から今日に至るまで、屋根を開けたヴィヴィオタルガトップを目にする機会はほとんどなかったが、クローズド状態よりもずっとバランスの良いスタイルに見える。

「この状態でワインディングを走るとメチャクチャ気持ちが良いんです。オープンエアで車体もコンパクトなので実際以上にスピード感があります。自分の中では、等身大で付き合える立派な“スポーツカー”ですね」

スバル ヴィヴィオタルガトップ ▲3分割で取り外したアルミルーフは、独立式のトランクに収納することができる
スバル ヴィヴィオタルガトップ ▲今となってはやや古く感じられるインテリアも、レトロな雰囲気があり気に入っている
スバル ヴィヴィオタルガトップ ▲車検証記載の定員は4名だが、後部座席に2人座るのはさすがにきつそう(笑)

ヴィヴィオタルガトップにはスーパーチャージャーを搭載したスポーツバージョンも存在するが、田代さんの愛車はNAのCVT仕様。軽自動車にしては贅沢な四気筒エンジンを搭載しているとはいえ、絶対的なパフォーマンスはたかが知れているだろう。

だが、オーディオでスーパーユーロビートをガンガン流しつつ峠を走ると、「ダウンヒルなら負けねえぜ!」と憧れのイニDの世界に浸れると田代さんはアツく語る。

高速道路を走るのは苦手だが、そういう大きな長所があれば短所はすべて「味」だという。

仲間と一緒に乗ってみると……

スバル ヴィヴィオタルガトップ

そんな田代さんは現在、多くの仲間とともに都内のシェアハウスに住んでおり、「いつかこの車でみんなと一緒に出かけてみたい」と話してくれた。

そこで予行練習(?)を兼ね、試しに仲間4人でヴィヴィオタルガトップに乗車してみることに。

「さすがにフル乗車は厳しいか(笑)!」

小さなオープンカーに若者がギュウギュウ詰めで乗り、屈託なく笑い合う様子は、これ以上ないぐらい楽しげだ。現代の大きな車では、なかなか実現できないシーンである。

先日、所有してから初となる車検を迎え、田代さんは大枚13万円を支払って通したという。立派だ。

少し古めの軽オープンカーは、これからもオーナー、そして仲間たちに囲まれながら、たくさんの思い出をつくっていくことだろう。

スバル ヴィヴィオタルガトップ
文/佐藤旅宇、写真/篠原晃一

スバル ヴィヴィオタルガトップ

田代悠太さんのマイカーレビュー

スバル ヴィヴィオタルガトップ

●購入金額/約50万円
●年間走行距離/約5000km
●マイカーの好きなところ/やっぱりオープンエアーなところ。風を感じられることはもちろん、オープンカーにはロマンがあります。
●マイカーの愛すべきダメなところ/馬力が足りないところ。ただ頭文字Dファンにとってはこれも魅力の一つですね……。
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/維持費は抑えたい……でも個性的な車に乗りたい! という方。

佐藤旅宇

ライター

佐藤旅宇

オートバイ専門誌『MOTO NAVI』 、自転車専門誌『BICYCLE NAVI』の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はボルボ C30と日産 ラルゴの他、バイク2台とたくさんの自転車。