トヨタ ハチロク▲『頭文字D』といえば、独特の擬音表現!(写真はイメージです)

おかげさまで大好評発売中!

現在発売中のカーセンサー3月号(2022年1月20日発売)にて、巻頭の『頭文字D』特集を担当した、編集部の高橋“亮”介です。名前が惜しいのが自慢です。

実はこの『頭文字D』特集がものすごい売れ行きでして……! 『頭文字D』ファンの皆さま、ありがとうございます。気位の高い涼介に代わり、私から御礼を申し上げます!


今回はその感謝のしるしに、急きょ、身体を張った企画を実行することにいたしました。

ファンの皆さんが長年気になっているであろう(?)マンガ『頭文字D』に登場する擬音についての調査です。擬音というのは、「ドン」とか「バーン」とかマンガ内の音を表す描写のことで、イニDだと、車の走行音の表現が印象的ですよね。バトルシーンは特に、あの擬音の描写があるからこそカッコイイ!

アレをひたすら数えてランキングを作ってきました。
 

表紙▲好評発売中の『頭文字D』特集のカーセンサーはこの表紙が目印! 税込100円でしげの先生の特別インタビューも読めます

ちなみにこの集計作業、思ってた20倍大変でした。単行本を1ページ1ページ見ながら擬音を書き出すのですが、2時間でようやく1巻。さすがにこのペースだと丸3日くらい仕事中にマンガ読んでるだけの人になってしまう……。涼介ばりのさえた集計理論も浮かばなかったので、編集部9人がかりの総力戦となりました。
 

集計様子▲スパイラル・ゼロ池田さんを見習い、無(ゼロ)の境地で数えていきます

結果発表! 1位に輝いた擬音は…・・・。

それでは、本題のランキング発表です!

なお、集計対象は「車の音」のみで、語尾の繰り返す文字については一定「同じもの」として集計しています。(例:「コァァァァ」は「コァァ」に含む)

また、「ア」と「ァ」など、大文字か小文字かの判断が難しいものも一定マージしていますのでご了承ください。

まずはトップ10!!

結果

擬音総数:7445個
バリエーション:847種類
登場回数1位:1526回「ギャアアア」


栄えある1位は「ギャアアア」!! おめでとうございます!! 5回に1回前後の頻繁な登場は見事というほかありません。

皆さま、予想どおりでしょうか? 冷静に考えると、日本人が表す車の音は「ブ~ン」が定番だと思うのですが、イニDの世界線はそんな甘っちょろい音は全然出てきません。

そして、とにかくバリエーションが豊富。全部で847種類の車の音が存在していました。スゴイ。

さすがに847位まで紹介すると絵的にしんどいので、ここでは30位までご紹介します。

結果▲意外なランクインはありましたでしょうか?

ちなみに1回きりしか登場していない表現も実は多くて、半数以上の496種類がオンリーワンの存在でした。

そんな貴重な1回きり登場の擬音も、私の好きなやつだけ一部、表彰させていただきます。完全な独断と偏見です。

●MVP  …『ギョオェアア(1回)』
●準MVP …『ワ゛ァシャア(1回)』
●特別賞  …『ギョパウ(1回)』、『ホリシャ(1回)』


講評も聞いてください。

まずMVPについて。学生時代に習ったドイツ語は子音が続きすぎて読みにくいと思ってたのですが、母音が3つ続くこの「ギョオェアア」は、まったく逆の印象を受けます。国産スポーツカーばかりの頭文字Dにおいて、擬音がドイツ語の読みにくさに対する日本語からのアンサーを想起させるとは……。これが意図したものだとしたら相当なことだと思い、MVPとさせていただきました! てかこの音が車から出てたら単純にやばい。

そして準MVPの「ワ゛ァシャア」は、もう「ワに点々」という発音の仕方がわからない文字なのですが、だからこそ「そんなこと気にしてられねーよ」という気合いが「車の勢い」に転換されているようで、読んでいてグッときました。

特別賞の「ギョパウ」と「ホリシャ」に関してはもう、なんていうんですかね、たぶんしげの先生の中でもだいぶ擬音がゲシュタルト崩壊してきて、ふと出てきてしまったんだろうなという感じがして、愛さずにはいられません。だって、ギャアとかゴァァとか強めの音ばっかり描いていたら、たまにはホリシャのようなコケティッシュな擬音を書いてみたくなるのが人情というものじゃないでしょうか?
 

シート▲あくまで車から発する効果音です

活用変化する擬音

擬音同士のつながりについても少し見ていきましょう。

まず、圧倒的1位だった「ギャアアア」ですが、その活用形も多く存在しています。

例えば「ギィャア」も29回と頻出。「ィ」でワンクッションすることにより、シンプルな「ギャアアア」よりもタイヤのグリップをさらにグッと利かせて走っているような印象を受けます。また、「ギャアオ」(3回)は「オ」が付くことで、コーナーからの立ち上がりの加速感も同時に感じさせます。

他にも、「ギャアアワオ」(1回)「ギャアオゥブ」(1回)なども、ギャアアの活用の一形態と見ていいでしょう。前者はワオと驚くギャラリーの歓声も兼ねた音と見ることができるんじゃないでしょうか。はい、きっと茂みにいたのでしょう。後者は、わたしの知覚できる次元ではないかもしれません。2次元の世界で生きるアリに、人間と同じ3次元の世界が知覚できないのと同じです。悔しいですが。

「ギョワンゴ」「ゴアンゴ」「ゴロンゴ」(各1回)などの「~ンゴ」系も散見されます。コーナーでゴロンと転がった……ではなく曲がった後に、ゴッ!と立ち上がるまでの一連の流れが1擬音で表現されているのだと思います(たぶん)。

そして、五十音順に並べてみると、擬音の活用がより一層味わい深くなります。


ドア
ドァウ
トァウア
ドァギャアア
ドアシャア
ドアシャオン


ズッ
ズア
ズァァ
ズァオオ
ズァギャァァ
ズァギャオ
ズキトアン

英語の動詞のように活用変化していく様子が見て取れて、ますます魅力が引き立ちませんか? eat→ate→eaten みたいな。あるいは、サイン・コサイン・タンジェントみたいな。まぁとにかく学生時代を思い出して甘酸っぱいです。

まとめると、イニDの擬音はまさに声に出して読みたい擬音だということです。

いかがだったでしょうか? 少しでもイニDファンの皆様の疑問解消のお役に立てていれば幸いです。そして、これから『頭文字D』を読む方には、ぜひ音読をオススメしたいと思います!

あと、『頭文字D』特集のカーセンサーも買ってね!!

文/高橋亮介(編集部) 写真/柳田由人、編集部
高橋亮介

カーセンサー編集部

高橋亮介

カーセンサー編集部員。「楽しそう」という理由で営業から異動してきたゆとり世代。『頭文字D』に登場する知的キャラ高橋涼介と同じ名前なのにまったく理論派じゃないのが悩み。愛車はポルシェ ボクスター(986)