▲走りもビジュアルも使い勝手も良好なアルファロメオ アルファGT。その中古車相場はずいぶんお手頃になってきたが、購入前に考えておくべき問題が一つだけある ▲走りもビジュアルも使い勝手も良好なアルファロメオ アルファGT。その中古車相場はずいぶんお手頃になってきたが、購入前に考えておくべき問題が一つだけある

「輸入クーペ」のなかでは異例の割安感

輸入中古車評論家を自称するわたしだが、自慢じゃないがカネはない。いや日々の食事に困窮するほどの貧乏しているわけではないが、「車購入予算はおおむね100万円ぐらいまで!」と心に決めながら、ニッポンの中流ド真ん中を生きている。

さて、そんなわたしでも洒落っ気の一つや二つは持ち合わせており、シュッとした感じの輸入4シータークーペをサラリと乗りこなしてみたいという欲望はある。なんかモテそうだし。詳しくは知りませんが。

しかし残念なことに「シュッとした感じの輸入クーペ」というのはたいていの場合、なかなか高額だ。例えば登場間もない現行メルセデス・ベンツ Cクラスクーペは新車価格547万円~であり、中古車にするとしてもおおむね420万円以上。もう少し古いところでアウディ A5の中古車を探すにしても、ボリュームゾーンは220万~260万円付近。……お手頃といえばお手頃なのかもしれないが、中流ド真ん中を自負する者としてはやや微妙である。

こうなるともう、セクシーな中年紳士に見える(かもしれない)輸入4シータークーペの購入はあきらめるほかないのか……と悲嘆に暮れていたとき、一つの素晴らしい選択肢に思い至った。

アルファロメオ アルファGTである。

アルファGTとは、同時期のセダン「156」をベースに作られた5名乗車のクーペモデル。販売期間は04年6月から12年4月で、クーペでありながら「フル4シーター」と言える広々とした後席と、ハッチゲート付きの大きな荷室、そして老舗カロッツェリア「ベルトーネ」がデザインしたエレガントな造形が特徴の車であった。搭載エンジンは156の後期型から採用された2L直噴のJTSと、高性能モデル「GTA」のそれをデチューンした3.2L V6。変速機は2.0JTSがセミATのセレスピードで、3.2V6 24Vは6MTのみだ。

で、その2.0JTS系が今、非常にお安いのである。

▲アルファ156をベースにベルトーネ社との共同作業で作られた流麗な2ドアクーペ、アルファGT。2L仕様は右ハンドル+セレスピードで、3.2L仕様は左ハンドル+6MTのみという設定 ▲アルファ156をベースにベルトーネ社との共同作業で作られた流麗な2ドアクーペ、アルファGT。2L仕様は右ハンドル+セレスピードで、3.2L仕様は左ハンドル+6MTのみという設定

使い勝手は良好で故障も少なめ。しかし「セレ問題」は付きまとう

V6系はまだ180万~210万円付近となるのが一般的だが、直4の2.0JTS系で構わないのであれば、下は車両価格30万円程度から探せてしまう。まぁそのあたりの物件はさすがに走行距離がかなり延びている場合が多いが、走行4万km台のモノでも車両価格70万~100万円程度で探せるのが、現在のアルファロメオ アルファGTを取り巻く市況だ。これがなかなか狙い目なのではないかと思うのである。

とはいえ「中古のイタ車」となると、いろいろと不安もあいるだろう。まずは使い勝手の部分として「クーペの割に後席は広いというが、本当か?」と。そこに関しては「本当なんですよ!」と答えるほかない。

車検証上は定員5名だが、後席に大人3人が乗ると正直ツラい。しかし後席2名であれば本当に楽勝だ。さすがにセダンほどではないが足元も頭上もかなり余裕があり、大型のアームレストも備えているためなかなか快適でもある。そして走行中のノイズも小さめで乗り心地もまずまず良好なので、いわゆるファミリーカーとして使用するのも十分可能。ていうかコレをファミリーカーにしている人はけっこう多い。加えていえば荷室容量も320Lと、ちょっと前のフォルクスワーゲン ゴルフ並みだ。

▲アルファGTのインパネまわり。90年代後半から00年代途中のアルファロメオ各モデルにほぼ共通するデザインテイストだ。写真は6MTのみの設定となる3.2V6 24V ▲アルファGTのインパネまわり。90年代後半から00年代途中のアルファロメオ各モデルにほぼ共通するデザインテイストだ。写真は6MTのみの設定となる3.2V6 24V
▲2ドアクーペとしては望外に広大なアルファGTの後席空間。普通体型の成人男性でも割と余裕 ▲2ドアクーペとしては望外に広大なアルファGTの後席空間。普通体型の成人男性でも割と余裕

もう一つの不安は「故障」だろうか。特に2.0JTS系に採用されたセミAT「セレスピード」は、アルファ156でも故障事例が多数報告されているだけに、なかなかビビるものはある。

まず全体的な話としては、アルファGTは故障問題についてさほど神経質になる必要はない。イタ車らしい(?)マイナートラブルはそれなりに発生するはずだが、前オーナーがちゃんと定期的に工場に入れていた個体でさえあれば、致命的な何かが頻発するタイプの車ではないのだ。もちろん購入前はタイミングベルトの交換歴を中心に整備履歴を十分確認し、そして購入後もエンジンオイル交換をこまめに行う必要はあるが。

やはり一番の懸念は「セレスピード」だろう。決して悪いトランスミッションではないのだが、これが場合によっては前兆なく壊れて走行不能になったりする。そのリスクをどう考えるか?

▲写真はセレスピードユニットではなくJTS(直噴)直列4気筒エンジン。前身であるツインスパークに劣らぬほどパンチの利いたいいエンジンなので、コレ+MTの仕様があれば一番だったが ▲写真はセレスピードユニットではなくJTS(直噴)直列4気筒エンジン。前身であるツインスパークに劣らぬほどパンチの利いたいいエンジンなので、コレ+MTの仕様があれば一番だったが

大切なのは「セレスピード貯金」を用意しておくこと?

……ここについては「賭け」と「保険」という考え方を同時に適用するしかないだろう。

「賭け」というのは、セレスピードが壊れない可能性に賭けてみるということだ。100台のアルファGTがあったとしたら、100台全部のセレスピードが必ず故障するわけではない。またセレスピード自体もその製造期間中に微妙な進化を続けたため、イタリア車専門工場にヒアリングした限りでは90年代の156に採用されたセレスピードと比べれば、00年代途中からのアルファGTのセレスピードの方が圧倒的に壊れにくいという。そこに賭けてみる価値はある。

しかし賭け事というのは当然負けることもあるわけで、「ま、大丈夫だろ」と思って購入したアルファGTのセレスピードがあっけなく壊れる可能性も否定はできない。そうなったときの「保険」として、あらかじめ「セレスピードの修理にかかる費用」を総予算に組み込んでおくという姿勢が、アルファGTの2.0JTS系を買ううえでは重要となるだろう。

専門工場にて格安予算で直す裏ワザもなくはないが(その場合は数万円で直るはず)、正規の手順でセレユニットを交換する費用はおおむね30万円ぐらい(※正確な金額は最寄りのディーラーにご確認ください)。つまりお手頃アルファGT 2.0JTSの車両価格が仮に80万円だったとしたら、それを脳内で無理やり「110万円」に変換したうえで購入するのだ。そうすれば、仮にセレスピードが故障したとしてもある意味「予定どおり」であり、仮に全然壊れなかったとしたら丸儲けである。

この「脳内車両価格変換」という技はけっこうな力技ゆえ、当然ながら誰にでもオススメできる購入手法ではない。しかしそれを押してでもなお「お手頃予算でシュッとした輸入4座クーペを手に入れたい!」と思うのであれば、トライしてみる価値は十分あると思うのだが、いかがだろうか。

▲得も言われぬニュアンスとなるアルファGTのリアビュー。唯一無二なこの個性はやはり魅力的だ ▲得も言われぬニュアンスとなるアルファGTのリアビュー。唯一無二なこの個性はやはり魅力的だ
text/伊達軍曹
photo/フィアット・クライスラー・オートモービルズ