フォルクスワーゲン タイプⅠ ▲人気絶版モデルのフォルクスワーゲン タイプⅠ(ビートル)。これから所有して乗るには、いったいどんなことに気をつければいいのか? そして相場状況やいかに!?

令和のいま、ガチレトロなタイプⅠを所有する極意とは

10月20日に発売された『カーセンサー12月号』では、「丸目しか勝たん!」と題した特集を展開中。いま注目のヘッドライトが丸い形の車を多数紹介している。

本稿はそれ対する補足として、特集では残念ながら取り上げることができなかった丸目界の王者(?)、ビートルこと「フォルクスワーゲン タイプⅠ」について、その2021年的な買い方を専門家にみっちり尋ねてみることにしたい。

訪れた先は、「空冷フォルクスワーゲンの世界的聖地」とも俗称される専門店『FLAT4』である。
 

フォルクスワーゲン タイプⅠ ▲FLAT4の店舗。店の前にはタイプⅠがずらりと並ぶ。2021年11月下旬には、アメリカンカルチャーのメッカ横浜・本牧に移転予定
FLAT4

FLAT4 企画・広報係長

長岡健一さん

タイプⅠ(ビートル)やタイプⅡ(ワーゲンバス)など、ビンテージのフォルクスワーゲン車を取り扱う専門店「FLAT4」の企画・広報係長。個人的には、数年前にタイプⅡを手放してしまったものの、再び空冷VWを狙っている。

伊達軍曹

インタビュアー

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。

伊達軍曹
伊達軍曹

ということでFLAT4の企画・広報係長である長岡健一さん、今日はよろしくお願いいたします。

長岡さん
長岡さん

こちらこそよろしくお願いします。

伊達軍曹
伊達軍曹

まずいきなりですが、長い歴史をもつビートル(タイプⅠ)を世代別に分けるとしたら、どんな感じになるんですか?

長岡さん
長岡さん

ええと、細かく言うとキリがなくなってしまいますが……。

伊達軍曹
伊達軍曹

あ、ざっくりでけっこうです。超細かいことを言われても覚えられませんし、1950年代の「オーバルウインドウ」とかも、現実的にはちょっと高すぎて買えませんから。あくまでも、素人であるワタシが「初めてのビートル」として買いそうなモノの範囲内で、ざっくり教えていただければと。

長岡さん
長岡さん

あ、そういうことでしたら、まずは「1967年」でひとつのラインが引けますね。1966年まではヘッドライトが寝ているデザインだったのですが、1967年からは直立したデザインに変わっています。人気の面では、低年式といわれる「ライトが寝てるやつ」の方の人気が高いですね。

伊達軍曹
伊達軍曹

なるほど。

長岡さん
長岡さん

次にざっくりとラインが引けるのが「1970年代後半」でしょうか。ドイツのヴォルフスブルク工場での生産は1978年に終了し、それ以降はメキシコの工場で生産が続けられたのですが、メキシコ製のビートルは燃料供給装置が旧来のキャブレターではなく「インジェクション」に変わっています。またドイツ製のビートルも、1975年モデルからはインジェクションになっています。

フォルクスワーゲン タイプⅠ ▲1966年までのモデルはヘッドライトが寝ている
フォルクスワーゲン タイプⅠ ▲内装もこのようにクラシック感たっぷり
フォルクスワーゲン タイプⅠ ▲1967年以降のモデルはヘッドライトが直立に。さらに、1975年からはインジェクション仕様になる
フォルクスワーゲン タイプⅠ ▲内装もやや現代的。クラッチ操作不要な、AT限定免許で運転できる仕様もある
フォルクスワーゲン タイプⅠ ▲タイプⅠのレアモデルはリアウインドウを見るとわかりやすいとのこと。オーバル型の窓が分割されたようなデザインのこちらの2台は、1940~50年代のモデルで「スプリットウインドウ」と呼ばれる。分割されていない「オーバルウインドウ」よりさらに希少
伊達軍曹
伊達軍曹

インジェクション世代よりもキャブ世代の方が人気は高いようですが、ワタシみたいなド素人は「インジェクションの方が便利なのに、なんでキャブ車が好まれるんだろ?」なんて思っちゃうのですが?

長岡さん
長岡さん

んー、そのあたりに“絶対の正解”はないかと思います。インジェクションには「滑らかに柔らかく動いていく感じ」という良さがありますし、逆にそこを「つまらない」と感じる人もいらっしゃいますし。

伊達軍曹
伊達軍曹

なるほど。で、結局はキャブ車が人気なんですね?

長岡さん
長岡さん

まぁそうですね。やはりキャブ車には「キビキビした動き」と「ガソリンを吸って、それを送り出して――という動きをダイレクトに感じられる」という良さがあります。また「自分で直せる楽しみ」もありますしね。

伊達軍曹
伊達軍曹

となると……比較的安く買えるインジェクションの「メキシコビートル」ではなく、けっこう高い「ドイツ製だったキャブ世代」を買わないと、ビートルの真髄は味わえないということですか?

長岡さん
長岡さん

そんなこともないと思いますよ! まぁキャブ車とインジェクション車を同タイミングで乗り比べれば、フィーリングの違いはわかると思います。でも「バタバタバタッ!」という空冷ビートルならではのエンジン音はインジェクション車でも同じですし、車内の雰囲気なども基本的には同じです。そのため「あぁ、ビートルに乗ってるな!」という感覚は、インジェクションの世代でも十分味わえると思っています。

購入時に気を付けるポイントは

伊達軍曹
伊達軍曹

なるほど、ちょっと安心しました。とはいえ、メキシコビートルの最終年式でも20年近く前の車ですから、正直“故障”については気になるところです。「初めてのビートル」を買うときは、どのあたりをチェックすればいいんですかね?

長岡さん
長岡さん

エンジンまわりで言うと、オイルのにじみや漏れ、過去にガソリンが漏れたことによるにおいなどがしないかを、さしあたってはチェックしてほしいですね。でも……。

伊達軍曹
伊達軍曹

でも?

長岡さん
長岡さん

ビートルの場合は交換部品が豊富にありますので、例えばエンジンオイルがにじんでいたとしても、ガスケット交換でサッと直せてしまったりもするんです。そのため、一概に「オイルがにじんでるからその中古車はダメ!」とも言えないんですよね。

伊達軍曹
伊達軍曹

なるほどそうですか。でも、さすがに「こういう中古車だけは絶対に買っちゃダメ!」みたいなのはあるんじゃないですか?

長岡さん
長岡さん

まぁエンジンの“内部”が壊れている個体は、直せますが、お金はかかりますね。エンジンの内部が怪しいビートルは、エンジンが暖まっているはずなのにかかりが悪かったり、アイドリングが安定していなかったり、アイドリング中に白煙を吹いたりします。そのため、できれば購入時は少しでも試乗をして、せめて1速の吹け上がりは確認したいところです。でも……。

伊達軍曹
伊達軍曹

でも?

長岡さん
長岡さん

ビートルに限っては、「この個体はアウト。もうどうにもならない」という個体に出会ったことがないんです。つまりどんな状態の個体でも、どうにかできちゃうんです(笑)。これだけ長い間作られてた車ですので、何かしら直す方法はあるんですよ。

伊達軍曹
伊達軍曹

そっか。そういえば「エンジン丸ごと」だって売ってますし、ビートルの場合はそれが――安くはないけど――バカ高くもないですしね。

長岡さん
長岡さん

そうなんです。それを直すのにお金がかかる・かからないという問題はありますが、「どうにもこうにも修理できない不動車」になる可能性はほぼないのが、ビートルという車なんです。

フォルクスワーゲン タイプⅠ ▲古い車にもかかわらず、壊れた際の交換用パーツも潤沢なのがタイプⅠの特徴。FLAT4では生産終了してしまったパーツのリプロダクトも精力的に行っている

維持していくコツは「始動前点検」

伊達軍曹
伊達軍曹

なるほど。買った後は、どんな感じで付き合っていけばいいんですか? というのもワタシの場合、古い中古車といってもせいぜい80年代のモノしか買ったことがないので、60年代や70年代の車は正直よくわかんないんですよね。

長岡さん
長岡さん

弊社でオススメしているのは、ご購入後、まず3000km走った時点でエンジンオイル交換に来ていただくことです。その後は「始動前点検」を走行前に必ず行っていただきつつ、まぁ3000kmから5000kmごとを目安にエンジンオイル交換をしていただければ、割と普通に維持していただけるはずですよ。

伊達軍曹
伊達軍曹

……今「始動前点検」っておっしゃいましたが、それって何ですか?

長岡さん
長岡さん

「今日はビートルで出かけるぞ」という日には、エンジンをかける前にエンジンフードを開け、まずはエンジンオイルの量をスティックで確認してください。そしてファンベルトの張り具合(テンション)が適切かどうかを、ベルトを手で押して確認してみてください。このあたりが、最低限やっていただきたい「始動前点検」ですね。

伊達軍曹
伊達軍曹

あ、そっか! 最近の車は、そのあたりのチェックは全部コンピューターが代わりにやってくれて、問題があれば自動的に警告してくれるけど、ビートル世代はそれを“人力”でやる必要があるわけですね?

長岡さん
長岡さん

おっしゃるとおりです。最初はちょっと面倒に感じるかもしれませんが、慣れればどうってことのない作業ですので、ぜひクセをつけていただきたいですね。始動前点検を必ずやるようにすれば、重大なトラブルに見舞われることはそうそうないのがビートルですし、逆にこの点検をやらないと、エンジンを焼き付かせてしまったりする可能性もあります。

伊達軍曹
伊達軍曹

そうか。ワタシが知ってる80’sな車は「購入後のノーメンテ」でぶっ壊れるわけですが、60’sな車は「運行前のノーチェック」でぶっ壊れるんですね?

長岡さん
長岡さん

そうなんですよ。逆に始動前点検以外は、オーナーさんがやることって基本的にはあまりないんです。まぁ走行中にヒーターホースやプラグコードが外れちゃったりすることも、たまにありますが(笑)。

伊達軍曹
伊達軍曹

ま、その場合はハメればいいだけですからね! ……ということでいよいよ本気でビートルが欲しくなってきましたが、中古車相場って今どうなってるんでしょう? やっぱり爆上がりしちゃってるんですか?

フォルクスワーゲン タイプⅠ ▲エンジンオイルの油面がスティックに刻まれた2本のラインの間にきていればOK。写真はベストな分量
フォルクスワーゲン タイプⅠ ▲エンジンのファンベルト
フォルクスワーゲン タイプⅠ ▲つかんでみて1cmほどたわめばOK。このぐらいの張り具合がベスト

手に入れるなら「まだリアリティある相場」のうちに

長岡さん
長岡さん

同世代の他車種と比べれば台数は豊富ですが、それでも海外のコレクター達からも、今、日本に現存するビートルが注目されていることもあって、上がってはきてますね。

伊達軍曹
伊達軍曹

具体的にはおいくらほどでしょう?

長岡さん
長岡さん

個人的にオススメしたい1960年代のキャブ車が「300万円台の半ばから後半」といったところで、比較的安価にイケるメキシコ製のインジェクションビートルが「200万円台後半」ぐらいです。

伊達軍曹
伊達軍曹

……メキビー(メキシコ製のビートル)って、その昔は100万円以下で買えませんでしたっけ?

長岡さん
長岡さん

買えましたね。でも、今はもうそのお値段では残念ながら無理です。

伊達軍曹
伊達軍曹

メキビーも、そして1960年代から70年代の普通のドイツ製ビートルも、高くなったんですね……。とはいえ、タイプⅡ(いわゆるワーゲンバス)やポルシェ 356のような「イッセンマンエン!」とか「ウン千万円!」という相場になってしまったわけでもないと?

長岡さん
長岡さん

おっしゃるとおりです。

伊達軍曹
伊達軍曹

ということは……もしもフォルクスワーゲン タイプⅠを買いたいのであれば、今ぐらいの「まだリアリティがある相場」のうちに手に入れておくべきなのかもしれませんね。もちろん、買うも買わないも各位のご自由ではあるのですが。や、本日はありがとうございました! 大変勉強になりました!

長岡さん
長岡さん

どういたしまして!

文/伊達軍曹、写真/阿部昌也

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