「ビーエム=大定番?」のイメージをあえて捨てた冒険作

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↑高級なセダンや機能性の高いツーリング、多様性に富んだSAVの長所を一台に凝縮(左)操作性に優れた、シンプルで質感高いインテリア。計器には、ブレーキエネルギー回生表示メーターが内蔵される。標準装備に前後輪統合制御ステアリングシステムを採用(右)
BMWの大冒険、と言っておく。SUVのXシリーズで最初の冒険を見事クリアしたバイエルンの雄が、ついにサルーンの改革に着手した。

ご覧のように、ずんぐりとしたルックス。X6によく似ているも、もう少しサルーン寄りのクロスオーバー。“ ベンツ/ビーエム”にどこか古臭いイメージを抱く人たちを、まずは“ハッ”とさせるに十分なカタチである。

そう、人とは違う新しいモノを望む輸入車ユーザーのなかで、ばりばりの保守本命であるBMWやM・ベンツにとって、定番にすぎるイメージこそ最大の敵だったりするわけだ。

5シリーズ、とはいうものの、中身はほとんど7シリーズだと思っていい。それが証拠に、全長やホイールベースは7シリーズショート。カタチから想像するに、室内空間は7に勝りそう( で、実際に乗ってみると頭の周りが広いぶん、7よりリラックスできてしまう!特に後席、最高)。じゃあどうして5なの? というあたりが、BMWの“ 考え抜かれた戦略”だ。

要するに、ホントはでかい車に乗りたいけれど、面と向かって7だと言うと、今の時代、引く人も多いんじゃないか、ってこと。欧州ではフリートユース( 会社が地位別に与える車)の問題もあって、7だと大層すぎるというわけ。ホントは小さい車をデカくするんじゃなくて、大きいのを小さく思わせる。ある意味、ダウンサイジング時代の申し子かも。

BMWらしい最高の高速クルージングと車との一体感は魅力的

  • BMW 5シリーズグランツーリスモ リアシート|ニューモデル試乗
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↑7シリーズ同等の足元スペースを確保。後席は最大100mm、前後に移動できる(左)同社初搭載のツイン・テールゲート。4座の状態で最大590ℓの容量を誇る(右)
メカニズム的には8速ATと新しい直噴直6シングルターボエンジンに注目されたい。この組み合わせを積む535iで、まずは十分納得のパフォーマンスである。ゆっくり走っている際の、ボロボロしたエンジンフィールがいただけないだけで、その他はしっかりビーエム。アクティブステアリングもランフラットタイヤも、もうそれほど気にならないレベルまで使いこなしている。名前が示すとおり、特に高速クルージングが最高で、それもちょっと舵の当たっているくらいが気持ちいい。車との一体感も素晴らしい確かな手応え、踏み応え。これはもっともわかりやすいBMWらしさでもある。

直噴V8ツインターボの550iは、想像どおりに超ド級のパフォーマンスで大いに惹かれるけれど、この車のキャラにはちょっと贅沢すぎるだろう。X6なら間違いなく推すが。

いつまでも昔のイメージではいられない。そう思ったのか、どうか。このイメチェン、日本ではなかなか理解されないかもしれないなあ。

SPECIFICATIONS

主要諸元のグレード 550iグランツーリスモ
全長×全幅×全高(mm) 5000×1900×1565
車両重量(kg) 2150
エンジン種類 V8DOHCツインターボ
総排気量(cc) 4394
最高出力[ps/rpm] 407ps/5500rpm
最大トルク[kg-m/rpm] 61.2kg-m/1750~4500rpm
車両本体価格 1114万円
Tester/西川 淳 Photo/向後一宏