▲ひょんなことから使う機会を得た24金(要するに純金)の抹茶碗。約500万円ということで筆者とはまったく無縁の代物だが、これを通じて空冷911やフェラーリ F355などを買うための「精神的極意」がつかめたかも? ▲ひょんなことから使う機会を得た24金(要するに純金)の抹茶碗。約500万円ということで筆者とはまったく無縁の代物だが、これを通じて空冷911やフェラーリ F355などを買うための「精神的極意」がつかめたかも?

まるで金のような希少価値を持つ車も世の中には存在する

話せば長くなるが、長い割にはつまらない事情により過日、某所にておよそ500万円相当の「純金の抹茶碗」で抹茶をいただく機会があった。純金の器で飲むからといって茶の味が向上するわけではなく(ただ、茶道とは器を目で楽しむものでもある……という観点からは若干の変化はあったかもしれない)、そもそも500万円の食器などド庶民たる筆者には完全無欠に無関係なのだが、「希少価値」というものについてはいろいろと考えさせられた。

言うまでもないことだが金(ゴールド)になぜ価値があるのかといえば、要するに「希少だから」である。基本的には埋蔵量がウルトラ限られており、今後急に大量生産される可能性もきわめて低い。もちろんそれに加えてというか、そもそも「あの輝き」が古来より人々を魅了してやまないわけだが、とにかくその価値の根本は「希少性」にある。

そういった金の価値と似た種類の価値は、一部の自動車にも見いだすことができるはずだ。

一部の自動車とは、「名車の誉れ高いものの今や絶版となり、そして社会情勢の変化などから、今後は同種または類似の魅力を持つ新車がリプロダクトされる可能性がほぼゼロな車」のことだ。つまりは金のように「今ある(ごく少量の)モノのなかから入手する以外、手に入れる方法が皆無」な車である。代表的なものが戦前のクラシックカーであり、そこまで古くなくても70年代のランボルギーニ カウンタックLP500やLP400、フェラーリ 365GT4BB、そしてトヨタ 2000GTあたりがその典型であろう。

で、そういった希少名車を手に入れられれば気分もよろしく、さらには金のように「世界的に相場が上がれば儲かっちゃうかも?」みたいな期待もふくらむわけだが、なかなかそう簡単にはいかない。なぜならば、そういった希少名車というのはざっくり言ってすでにバカ高く、また仮に入手したとしても、動かすだけで(いろいろな意味で)大変だからである。

▲写真はトヨタ 2000GT。こんな車をササッと買って、時おりサッと乗れたらかなりステキだが、中古車相場はモノにもよるが5000万~1億円ぐらい。……そう簡単に買って乗れる車ではない ▲写真はトヨタ 2000GT。こんな車をササッと買って、時おりサッと乗れたらかなりステキだが、中古車相場はモノにもよるが5000万~1億円ぐらい。……そう簡単に買って乗れる車ではない

比較的手頃(?)だが希少価値は増す一方のセミ名車たち

しかし世の中には、それらと比べればかなり手頃な価格で、そしてその気になれば毎日でも乗ることができる金(ゴールド)的な車も存在している。

それはポルシェ 911のタイプ964やフェラーリのF355、あるいは初代BMW M3やランチア デルタ インテグラーレなどの一群だ。
 

▲89年~93年まで販売された4世代前のポルシェ 911、タイプ964。エンジンは空冷の3.6L水平対向6気筒。ちょっと前までは300万円台で購入可能だったが、昨今のブームにより相場は1000万円付近まで高騰 ▲89年~93年まで販売された4世代前のポルシェ 911、タイプ964。エンジンは空冷の3.6L水平対向6気筒。ちょっと前までは300万円台で購入可能だったが、昨今のブームにより相場は1000万円付近まで高騰
▲こちらは94年~99年まで販売されたフェラーリ F355。3.5LのV型8気筒をミッドに搭載し、往年のフェラーリに通じる可憐なデザインにより今も絶大な人気を誇る。低走行物件は1300万円超となることも多い ▲こちらは94年~99年まで販売されたフェラーリ F355。3.5LのV型8気筒をミッドに搭載し、往年のフェラーリに通じる可憐なデザインにより今も絶大な人気を誇る。低走行物件は1300万円超となることも多い
▲ツーリングカーレースの公認取得のため作られた「闘う市販車」、初代BMW M3。2.3L直4DOHCの魅力もさることながら、強烈なブリスターフェンダーも大きな魅力。最近の中古車はほとんどが「応談」となっている ▲ツーリングカーレースの公認取得のため作られた「闘う市販車」、初代BMW M3。2.3L直4DOHCの魅力もさることながら、強烈なブリスターフェンダーも大きな魅力。最近の中古車はほとんどが「応談」となっている
▲80年代後半~90年代初頭の世界ラリー選手権を席巻したランチア デルタ インテグラーレの市販バージョン。最終型の良質物件は600万円~が相場。写真は15台のみ生産された希少限定車「クラブ イタリア」 ▲80年代後半~90年代初頭の世界ラリー選手権を席巻したランチア デルタ インテグラーレの市販バージョン。最終型の良質物件は600万円~が相場。写真は15台のみ生産された希少限定車「クラブ イタリア」

これらは、戦前のクラシックカーやカウンタックのLP400/500ほどではないにせよ、生産終了からかなりの年月がたっているため「埋蔵量」がもはや少なく、良質と呼べる個体の数はさらに少ない。で、その埋蔵量が今後いきなり増える可能性も限りなくゼロに近い。「オハイオ州の巨大な廃工場に、ほぼ未使用の初代M3が約3000台眠っていることが判明しました!」みたいな奇跡があれば話は別だが、まあ普通に考えてそれはないだろう。また今後ポルシェ社が「空冷エンジン搭載の911を再生産します!」という声明を出す可能性も限りなく0%に近い。

となれば、これらのモデル(の良質個体)は金に近い……とまではさすがに言わないが、それに似たニュアンスの希少価値を今後も維持するはずなのだ。や、万物は土に還っていくという世の摂理から考えれば、その希少価値は今後さらに増していくだろう。つまり、価値は上がる一方なのである(※もちろん、どうとでも変形させられる金と違って車は事故ればお終い……という大きな違いはありますが)。

「……ってことでこれらの車、すなわちポルシェ 911のタイプ964とかフェラーリ F355とか、あるいはデルタ インテグラーレとか初代M3の、状態のよろしい中古車をぜひ買いましょうよ」というのが本稿の趣旨なのだが、そこには大きな問題も残されている。

中古車相場がバカ高いということだ。

 

確かに高いが「金を買うようなもの」と思えばある意味安い?

世の中考えることは皆たいてい同じなので、このあたりのモデルの相場はすでに鬼のように高騰してしまっている。例えばポルシェの964は、最近はやや落ち着いたとはいえまだ800万円以上が一般的で、初代BMW M3はほとんどが「価格応談」であり、その実勢価格はおおむね1000万円前後。フェラーリ F355の低走行ノーマル車は1300万円以上となるのが昨今のトレンドであり、ランチア デルタ インテグラーレも最終EVO.IIの良質物件は600万~900万円といったところ。正直、昔と比べればクソ高い。

ということで「……高いな、今回はパスかな」と判断するのが普通のマトモな人間というものであり、筆者も基本的にはそのとおりかなと思っている。

だが、考え方を変えて「これらは一見、車に見えるけど、実は車ではないのだ。金(ゴールド)の一種なのだ! なんてたって超希少価値なんだから!」と(無理やり)思うことにしたら、どうだろうか? なんとなく「高いっちゃ高いけど、意外とそうでもないのかも……?」と思えるのではないだろうか。

まぁ金と違って車というのは派手に事故ればお終いであることは間違いなく、古い年代の車を車両保険でどこまでカバーできるかも甚だ謎であるため、けっこう無理筋な理屈を言っていることは自分でも承知している。また車というのは乗らずに置いとくだけでも金と違って劣化するものですしね。

が、もしもこれらの車に対して「欲しいんだけど、最後の踏ん切りがつかない……」と悩んでおられる人がいたならば、このような考え方で(無理やり)自分の背中を自分で押してみるのも一つの手なのではないか……と思った次第だ。お役に立てたかどうかは甚だ不明だが、もしもほんの少々でもお役に立てたならば、筆者としては大変嬉しく思う。敬具。

▲写真は筆者が数年前に売却した私物の94年式ランチア デルタ インテグラーレEVO.II。まるで金のように(?)希少なフルノーマルのデルタEVO.II、売らなきゃ良かった……と後悔することもしばしばである ▲写真は筆者が数年前に売却した私物の94年式ランチア デルタ インテグラーレEVO.II。まるで金のように(?)希少なフルノーマルのデルタEVO.II、売らなきゃ良かった……と後悔することもしばしばである
text/伊達軍曹
photo/トヨタ、ポルシェ、フェラーリ、BMW、フィアット・クライスラー、向後一宏、伊達軍曹