マクラーレン 750S▲ラインナップの中心となるミッドシップ2シーターのスーパーシリーズで、720Sの進化版となるモデル。第2世代となる720Sを徹底分析し、約30%のコンポーネントを変更することでパワーとスピードの向上に加え、軽量化も果たしている

“マクラーレンらしい走り”に磨きがかかった

マクラーレン 750Sは、2017年に登場したブランドの中核モデル=スーパーシリーズである720Sの進化版だ。720Sはデビューからはや7年近く。そのスタイリングは新鮮さをほとんど失っていない。パフォーマンスだっていまだに一線級だ。とはいえ、そこはスーパーカーブランド、というか、根がサーキット生まれのレーシングチーム&マシンコンストラクターである。レースの世界で7年間のギャップといえば隔世の感どころの騒ぎではない。ロードカー部門でもその間、高性能版の765LTはもちろん、アルティメットシリーズなど多くの新型車を投入し、様々な知見を得ている。それらを中核シリーズである720Sにも適応させ、その進化を図るという姿勢はある意味、マクラーレンとしては当然のことだ。

車名の数字“750”はM840Tと呼ばれる4L V8ツインターボエンジンの最高出力を表している。クラス最強の数字を誇っているとはいうものの、スペックそのものは、マクラーレンがロードカーブランドを立ち上げた2010年以来、常に目指してきた“ドライバーとの一体感”をより向上させた結果でしかない。

エンジンスペックそのものはマクラーレンの本質的な魅力ではないと思う。それよりも基本フォルムを大きく変えることなく、エアロダイナミクスをさらに向上させたうえで、減量後のボクサーがサウナに入ってもう数グラム落とそうとする努力=軽量化と、発進から中間の速度域における気持ちよさをさらに強調するギア比、そして伝家の宝刀“プロアクティブシャシー”の最新アップデートなどによって、「マクラーレンらしい走り」に一層の磨きをかけたことの方が注目すべきポイントだ。馬力アップはあくまでもそれに見合ったエンジン出力を要求した結果であろう。

そんな750S(というかマクラーレン製のスーパーカーであればすべてなのだが)の真価を最もよく体験できる舞台は、公道ではなくもっぱらサーキットかクローズドコースである。今回、試乗会の舞台として選ばれた「MAGARIGAWA」はレーストラックではない。ドライビングを純粋に楽しむために専用設計された、競技をしない自動車専用コースだ。有名なサーキットや峠道から“楽しい道スジ”だけを選り抜いたような造りになっている。マクラーレンの新型モデルを試す場所として不足はない。
 

マクラーレン 750S▲720Sよりも30kg軽量化が図られ、乾燥重量は1277kgとなった。わずか30kgだが、その効果は絶大

ディヘドラルドアを跳ね上げ、腰をくの字に折り曲げて尻から乗り込んだ。豪華な屋内ピットレーンから陽光まぶしいコースへと出てアクセルペダルを軽く踏み込んだ瞬間に、「わ! 速い」と思った。もちろん、720Sと比べて、だ。さらに踏み込むとアッという間に100km/hを超える。そしていとも簡単に200km/hオーバー。加速の最中はというと、車体は安定しており、エアロダイナミクスの恩恵を全身で感じることができる。MAGARIGAWA名物の“蛸壺”に向かう長い下りのストレートでは軽く250km/hを超えていった。

印象的だったのが、加速中はもちろん、それにも増して減速中も安定していたことだ。軽い車体とよくできた空力デバイスを生かした制動の確実性は、ロードカー最高レベルになると言っていい。しかもなかなかへこたれない。
 

マクラーレン 750S▲フロントトレッドを6mm拡大、足回りには新しい油圧リンク式サスペンションのPCC IIIを採用する

ハンドリングパフォーマンスもまたマクラーレンの得意とするところで、旋回中は常に両手にしっかりとした手応えがあるのみならず、タイヤとダイレクトにつながっているような印象さえ受ける。上半身はステアリングを通じて前輪と一体となり、下半身は良くできたスポーツシートと2つのペダルを通じて後輪と一体化する。もちろんいずれも軽量かつ強靭なカーボンモノコックボディの恩恵であるとも言える。要するに、ドライバーを介して前輪と後輪とが一体となる感覚こそが750S最大の魅力であった。

もうひとつのMAGARIGAWA名物、まるで峠道のように曲がりくねった上り急勾配のパートで、狙ったラインをステアリングワークというよりもアクセルペダルの開閉で正確にトレースした。それはもうライトスポーツカーの領域だ。パワーウェイトレシオと前後重量配分にこだわって作られたカーボンシャシーのスポーツカーでしかなし得ない動きである。

750Sにはさらに別の付録があった。とても嬉しい付録。それは720Sに比べてエグゾーストサウンドがとても心地よくなったことだ。ドライバーの耳から入って頭と心を刺激するサウンドをV8ツインターボエンジンが奏でるのだった。
 

マクラーレン 750S▲インテリアは720Sとほぼ同様。メーターパネルの左右にはアクティブ・ダイナミクスの設定用スイッチが備わる
マクラーレン 750S▲インテリアはナッパレザーとアルカンターラ/ナッパレザーが選択可能
マクラーレン 750S▲コンポジット製リトラクタブルハードトップを備えた750Sスパイダーもラインナップ
マクラーレン 750S▲ブランドのアイコンとなるディヘドラルドアを採用する
マクラーレン 750S▲会場となったのは、千葉県南房総市にある会員制ドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」。ロードコースは全長3.5km、22のコーナーを有する
文/西川淳 写真/マクラーレン・オートモーティブ

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。

先代となるマクラーレン 720Sの中古車市場は?

マクラーレン 720S

マクラーレンの中核モデルとなるスーパーシリーズの第2世代モデル。P1で初採用された一体型カーボンモノコック(モノケージⅡ)を採用、V8ターボエンジンはパーツの41%を変更し3.8Lから4Lへと変更されるなど、先代の650Sから大幅な進化を遂げている。ベーシック仕様に加え、上級仕様のパフォーマンスとラグジュアリーが設定された。電動リトラクタブルハードルーフを備えた720Sスパイダーもラインナップ。

2024年4月上旬時点で、中古車市場には30台ほどが流通。価格帯は2400万~3600万円となっている。一方のスパイダーは15台ほどが流通、価格帯は3350万~3850万円となる。720Sは「パフォーマンス」が、720Sスパイダーは「ラグジュアリー」がそれぞれ半数程度を占めている状況。
 

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文/編集部、写真/マクラーレン・オートモーティブ