WRC▲欧州ではF1に勝るとも劣らない人気を誇るモータースポーツ、それがFIA世界ラリー選手権(WRC)。今では名車と呼ばれるマニア垂ぜんの車たちが、ターマック(舗装路)、グラベル(未舗装路)、スノーなど、世界中の様々なコースで激しい戦いを繰り広げてきた。今年11月には、12年ぶりに日本を舞台にしたラリージャパンが開催される

最も過酷で最も熱い戦いが世界中のコースで繰り広げられる

WRC(世界ラリー選手権)は、1973年に始まった世界最高峰のラリーイベントだ。FIA(国際自動車連盟)が主催する自動車競技の世界選手権としては、F1に次ぐ長い歴史を持っている。

競技車両は基本的に市販車をベースに作られるのだが、スペシャルなモデルを数台のみ作ってベースとするような過当競争を防ぐため、各メーカーにはいわゆるホモロゲーションモデルに年間500台や1000台といった最低生産台数が義務付けられている。

WRC黎明期には、複雑なレギュレーションの間隙をついて作られた伝説のマシンが誕生する。その代表的なモデルのひとつがランチア ストラトスで、回頭性の高さによってラリー界を席巻した。そして、1981年にはアウディが初めてフルタイム4WDを搭載したアウディ クワトロを投入。構造が複雑で重量がかさむと、それまで敬遠されてきた4WDの既成概念を覆し、WRCの新たな時代が始まるきっかけとなった。
 

WRC▲マルチェロ・ガンディーニがデザインしたランチア ストラトスは、WRCで勝利するために生まれたモデル。1970年代当時のWRCで主流だったミッドシップレイアウトを採用している。総生産台数は500台以下という超希少車
WRC▲1981年にデビューしたアウディ クワトロ。それまでミッドシップが主流だったWRCにフルタイム4WDで参戦し、初戦はリタイヤしたものの圧倒的な速さを見せつけ、翌年にはマニュファクチャラーズタイトルを獲得した

その後、1980年代のWRCの最上位カテゴリーは、グループBと呼ばれる過激なものだった。鋼管スペースフレームのシャシーを、市販車をモチーフにデザインしたFRPボディで覆い、ハイパワーなエンジンをミッドに搭載した4WDのモンスターマシンが数多く生み出された。アウディ スポーツクワトロやプジョー 205ターボ16、ランチア ラリー037、ランチア デルタS4といったホモロゲーションモデルは、いまやマニア垂ぜんの希少モデルである。

1980年代後半になると、安全面やコスト面などの課題から車両規定がより市販車に近いグループAに変更された。ランチア デルタHF インテグラーレがけん引するこの時代のWRCには、トヨタ、スバル、三菱、日産、マツダといった日本メーカーもこぞって参戦。トヨタがセリカで日本車として初となるドライバーズおよびマニュファクチャラーズタイトルを獲得している。

1997年に車両規定がWRカー(グループAよりも改造範囲が広い)へと移行するが、グループA時代から続いて、1995~1997年にスバルがインプレッサでマニュファクチャラーズタイトル3連覇。1996~1999年には、三菱がランサーエボリューションでドライバーズタイトル4連覇を果たす。ちなみに、このとき4連覇を果たしたドライバーが、2017年にWRCへと復活したトヨタのチーム作りを豊田章男社長から託された人物。2020年までトヨタワールドラリーチームの代表を務めたトミ・マキネン氏だ。
 

WRC▲グループA時代の初期にWRCをけん引したのが、ランチア デルタHF インテグラーレ。写真は1990年のモンテカルロラリー に参戦したランチア デルタHF インテグラーレ 16V。デルタHF インテグラーレは、わずかながら現在でも中古車市場に流通している

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ランチア デルタ × 全国
WRC▲1990年代後半のWRCで注目されたのは日本車。1990年代前半は前述したランチア デルタHF インテグラーレとトヨタ セリカが競い合い、1990年代後半になるとスバル インプレッサと三菱 ランサーエボリューションが熱い戦いを繰り広げた

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スバル インプレッサ × 全国
WRC▲1995年にスバル インプレッサがマニュファクチャラーズとドライバーズのダブルタイトルを獲得。そのまま3年連続でマニュファクチャラーズタイトルを獲得。三菱は1996年から1999年まで4年連続でランサーエボリューションでトミ・マキネンがドライバーズタイトルを獲得している

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三菱 ランサーエボリューション × 全国

1990年代後半のWRカー時代当初はトヨタ カローラ、三菱 ランサーエボリューション、スバル インプレッサなど日本勢が活躍するも、1999年にトヨタが、2005年には三菱が、そして2008年にはスバルもWRCでのワークス活動を終了。プジョー 206ベースの206WRCやシトロエン クサラWRC、C4ベースのC4 WRC、フォード フォーカスWRCなどが参戦するも、リーマンショックの影響もあって撤退が相次ぎ、WRC人気は下火になってしまう。2011年からはよりコストを抑制するために規定を改定。シトロエン DS3やVW ポロ、ミニ ジョンクーパーワークス、ヒュンダイ i20などをベースとしたマシンなどが参戦を開始する。
 

WRC▲1997年、車両規定がグループAよりも大幅な改造を可能としたWRカーとなり、欧州勢が復活。プジョーは206をベースにした206WRCで参戦して2000年から3年連続でマニュファクチャラーズタイトルを獲得している

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プジョー 206 × 全国
WRC▲プジョーの後に続いたのがシトロエン。不世出の天才ドライバーといわれたセバスチャン・ローブとクサラWRCのコンビは圧倒的な強さで、2004年と2005年にマニュファクチャラーズとドライバーズのダブルタイトルを獲得。2007年からは写真のC4 WRCにマシンを乗り替えて、2012年までダブルタイトルを獲得し続けた

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シトロエン C4クーペ × 全国

2017年、下火になったWRC人気を復活させるために、新たなWRカー規則を導入。時を同じくしてトヨタがヤリスでWRCへと復活する。伝説的な強さを誇るセバスチャン オジェを擁し、連勝を重ねていたVWとの戦いに多くのファンが期待を寄せるも、ディーゼルゲートの影響もありVWはWRCから撤退してしまう。そしてトップカテゴリーは、トヨタ、ヒュンダイ(現ヒョンデ)、フォードという3メーカーによって争われることになった。

2022年からは新規則Rally1(ラリー1)が導入されている。時代の潮流にマッチするサステイナブルなモータースポーツを推進するため、全車共通のハイブリッドユニットを搭載することになった。これには開発コストを抑え新規参入をうながす狙いもある。このユニットはドイツのコンパクトダイナミクス社製で、3.9kW/hのバッテリーとモーター・ジェネレーター・ユニット(MGU)からなり、加速時には最大で100KW(約134馬力)のパワーと180N・mのトルクを発生。

この共通ユニットを1.6L直噴ターボエンジンと組み合わせることで、各社のマシンはシステムトータルで最高出力500ps以上、最大トルク500N・m以上を発揮するという。

燃料に関しては100%持続可能な非化石燃料を使用。FIA世界選手権としては初めて、合成燃料とバイオ燃料を混合した再生可能燃料が使用されている。この再生可能燃料はいまF1や国内のスーパーフォーミュラなどでも導入に向けて準備が進められている。
 

WRC▲2017年、トヨタがヤリスでWRCに復活。2017年と2019年にマニュファクチャラーズタイトルを、2019年と2020年にはドライバーズタイトルを獲得している。今シーズンは7月時点でトヨタがマニュファクチャラーズとドライバーズのトップになっている

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トヨタ ヤリス&GRヤリス × 全国

トヨタの再参入によってWRCは今再び人気が再燃している。そして、今年11月10日(木)~13日(日)には、愛知県、岐阜県の両県にて今シーズンのWRC最終戦となる「ラリージャパン」が開催される。なんと12年ぶりとなる日本開催。世界のトップドライバーをはじめ、トヨタの育成ドライバーである勝田貴元選手の生の走りを見るためにも、現地へ足を運んでみてはいかがだろうか。
 

文/藤野太一、写真/TOYOTA GAZOO Racing、Stellantis、アウディ、スバル、三菱自動車、Newspress