匠塗 ▲マツダの塗装技術「匠塗」は何がすごいのか、歴代カラーも含めて改めてご紹介

匠塗の新色は「アーティザンレッドプレミアムメタリック」

マツダ独自の塗装技術である「匠塗(たくみぬり) TAKUMINURI」。

それを駆使した特別塗装色といえば「ソウルレッドクリスタルメタリック」や「マシーングレープレミアムメタリック」などがお馴染みなわけだが、同社はこのたび、匠塗としては第4弾にあたる特別塗装色「アーティザンレッドプレミアムメタリック」を開発。

それを初代アテンザ/MAZDA6セダンの誕生20周年を記念した特別仕様車「MAZDA6 20th Anniversary Edition」の専用色とするとともに、今後導入するラージ商品群(大きめサイズの車)および既存ラインナップの「上級感を際立たせる色」として導入すると発表した。

MAZDA6▲こちらが「アーティザンレッドプレミアムメタリック」のMAZDA6セダン

……「匠塗 TAKUMINURI」とはそもそも何なのか? 何がどう“匠”で、普通の塗装とはどう違うのか――ということは以下、順を追ってご説明申し上げるが、本稿の冒頭において筆者が申し上げたいことは、以下の1点のみである。

この「アーティザンレッドプレミアムメタリック」は、写真で見る限りでは「おとなしめのワインレッド」にしか見えないかもしれない。

だが、このワインレッドはフェラーリの「ロッソ・コルサ」にも負けない、そしてアルファロメオのカラーコード289「アルファレッド」にも負けない、いや負けないどころかむしろ上回っている可能性もある、“情熱の赤”なのだ。

情熱というフレーズがさほど似合わなそうにも思える、ワインレッドのメタリックではあるのだが……!
 

匠塗▲光の当たり具合によって色味が変わる「アーティザンレッドプレミアムメタリック」

匠塗とは? 歴史は2012年にまでさかのぼる

それではご説明しよう。

「匠塗 TAKUMINURI」とは、まるで熟練の塗装職人が手塗りしたような精緻で高品質な塗装を「量産ラインで実現させる」という、マツダ独自の塗装技術のことだ。その技術面の詳細は、後述する。

技術面の前に、「そもそもなぜマツダは、そんなめんどくさい塗装をしているのか?」という理由を説明すると、それは、マツダが「カラーも造形の一部であり、特別な造形美をより際立てせるためには、どうしたって“特別な色”も必要である」と考えているからだ。

後段についてもう少し言うのであれば、決して巨大な自動車メーカーとはいえないマツダが、巨大メーカーたちが群雄割拠する市場の中でプレゼンスを示すには、何かしらの“突出”した部分がないことにはどうにもならない。

そしてマツダは、そのあるべき突出の一部を「車の造形」であると考え、近年はそこに徹底的にこだわっている――というのは、車がお好きな人であれば誰もが気づいていることだ。

で、その造形美というマツダのエッジ(優位点)をより際立たせるために、ある意味必然的に生まれたというか必死に生み出したのが、独自技術である「匠塗 TAKUMINURI」だ。
 

アテンザ(3代目)▲「匠塗 TAKUMINURI」の第1弾モデルであったアテンザ(3代目)

「匠塗 TAKUMINURI」は、まずはマツダという自動車メーカーの根本的なメッセージである「弊社の車はスポーティで情熱的である」ということを象徴的に示すため、2012年登場の3代目アテンザに使われた「ソウルレッドプレミアムメタリック」が第1弾となった。鮮やかさと陰影感が両立している、見事な赤のメタリック塗装である。

だが、筆者のPC上で「鮮やかさと陰影感が両立している見事な赤のメタリック塗装」とタイプするには5秒もかからないが、その色を実際に作るのは至難の業だ。

なぜならば、自動車のペイントにおいて「鮮やかさ」と「陰影感」というのは、普通は両立しないものだからだ。

赤の鮮やかさを追求すれば陰影感がなくなり、陰影感を追求すると、今度は鮮やかさが失われてしまうのである。

そこでマツダがどうしたかといえば――技術マニア向けの媒体ではないため、細部はかなり端折るが――光の反射を担う反射層と、発色を担うカラー層の順番を、まずは一般的な塗装とは逆転させた。

匠塗▲匠塗の第1弾となる「ソウルレッドプレミアムメタリック」ではアルミの配向を工夫することによって、鮮やかさと陰影感を両立させた

そして、通常であれば上層部でけっこうランダムに並べられるアルミフレーク(メタリック塗装がキラキラしている原因になる物質)を超微粒子にして、下側に位置する超極薄にした反射層に、超水平に、超均一に、配置したのだ。

この手間ひまによって発色層と反射層の相乗効果が起こり、マツダのソウルレッド特有の「艶やかさと深み」が生まれたのである。
 

ポイントは「研ぎ」の技術力

……とはいえ、これまたPC上で「この手間ひまによって(中略)艶やかさと深みが生まれたのである」と打つだけなら10秒ほどしかかからないが、実際にそれを行うのは至難の業である。

なぜならば、塗膜を薄くするということは、従来の塗装であれば許容される多少の凸凹や厚みの差すら許されなくなるからだ。また塗料成分の粒子を細かくし、さらにアルミフレークの厚みと大きさを均一にして、すべてのフレークを水平に並べるというのも、口で言ったりPCで打ったりするのは簡単だが、実際はどえらいレベルの無理難題である。

さらには「研ぎ」の問題もある。

車の塗装というのは、塗料が入った巨大な槽の中にボディを丸ごと浸透させて、外からでは塗りにくいパーツの内部まで塗膜を形成させるところから始まる。

これを「電着塗装」というのだが、この工程の中ではどうしたって処理中にゴミが混入したり、表面にごく小さな異物が付着してしまったりする。

自動車メーカーの車体工場では、そうして必然的に付いてしまったゴミや異物を人間の目で見つけ、専用の研磨紙を使って表面を平滑にする――という作業を1台ごとに行っている。これが「研ぎ」と呼ばれる工程だ。

……で、塗膜を薄くして超微細なアルミフレークを均一かつ水平に並べることで、一般的な塗装ではあり得ないほどの「鮮やかさと陰影感の両立」を実現させるには、「従来の研ぎ方では無理!」ということもわかってしまった。塗膜が乾燥したあとに、研ぎの跡が残って見えてしまうのだ。

そのためマツダの各部署は研磨紙メーカーと一緒に、そして工場のラインに立つ現場のメンバーたちとも一緒に、「研ぎ」に関しても超絶の検討と研究、そして練習と改善とを重ねた。その結果、なんとか「50秒に1台のペースで匠塗に耐えうる“研ぎ”を完了させられる技術と体制」を確立させたのだ。

CX-5(初代)▲匠塗の第1弾「ソウルレッドプレミアムメタリック」はCX-5(初代)でも採用された

この他にも「匠塗 TAKUMINURI」に関しては、涙なしには語れない(?)話は山ほどあるのだが、そのすべてをご紹介するには『プロジェクトX』ぐらいの尺が必要であろうことは間違いない。

それゆえ本稿では、失礼ながら若干端折らせていただくが、いずれにせよ、そのような「上層部や企画系、開発系の部署だけでなく、工場のラインで働く人々や様々なサプライヤー企業なども含めて、渾然一体となって進めたド根性プロジェクト」の帰結として、匠塗の第1弾となった3代目アテンザのソウルレッドは生まれた。

「……もしかして職人さんが10層ぐらいの手塗りを重ねたんですか?」と聞きたくなるほどのツヤと深みを、従来からある工場での「機械による3層塗り」で実現させたのだ。

ロードスター(現行型)▲ロードスター(現行型)の人気色となっている「マシーングレープレミアムメタリック」

匠塗の4色は中古車で多く流通

その後、2016年には匠塗の第2弾である「マシーングレープレミアムメタリック」が、3代目アクセラと3代目アテンザから国内市場に導入され、2017年2月の現行型CX-5で、ソウルレッドは「ソウルレッドクリスタルメタリック」に進化。

さらに、2022年には「日本的な引き算の美学」をテーマとするホワイト系の匠塗「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」がCX-60に採用された。

CX-60(現行型)▲新車販売の40%以上がこの「ロジウムホワイトプレミアムメタリック」というCX-60

そして2022年12月。これまでの3色(正確には4色だが)で用いた技術と情熱のいわば集大成として完成し、登場したのが、アテンザ/MAZDA6の20周年記念車の専用色となった「アーティザンレッドプレミアムメタリック」なのだ。

筆者がマツダの「匠塗 TAKUMINURI」から受けた感動を、どれだけおすそ分けできたかはわからない。もしも今ひとつ伝わっていないとしたら、それはひとえに筆者の力量不足である。大変申し訳ない。

だが、「アーティザンレッドプレミアムメタリックという一見地味なワインレッドメタリックが、実は“情熱の赤”なのだ!」という話の趣旨の一端は、ある程度伝わったのではないかとも期待している。

匠塗▲SUVでも採用が待たれる「アーティザンレッドプレミアムメタリック」

アーティザンレッドプレミアムメタリックは、今のところ「MAZDA6 20th Anniversary Edition」でしか見ることができないが、世の中には中古車市場という便利なものがある。

そしてそこでは2種類のソウルレッドとマシーングレープレミアムメタリック、そしてロジウムホワイトプレミアムメタリックという4種類の情熱カラーが、あなたを待っている。

もしもご興味があれば、ぜひ“市場”を訪問してほしい。

少なくとも筆者は、興味がある。特に「マシーングレープレミアムメタリック」には興味津々だ。

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文/伊達軍曹 写真/篠原晃一、尾形和美、マツダ
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。