▲北米ではベストセラーカーとして名を馳せるミディアムセダンのカムリですが、実は…… ▲北米ではベストセラーカーとして名を馳せるミディアムセダンのカムリですが、実は……

もう国別の属性は時代遅れかも

グローバル化が進んだ今でも「日本車」「アメ車」「ドイツ車」という単語は使われ続けています。でも、もはや○○車と呼んだところで、その国で作られているとは限りません。某有名ソフトドリンクのように、いわゆる地産池消こそが会社経営において理(利にも)に適っているからです。

それでも一般的には自動車メーカーが誕生した場所に「属性」を見出し「○○車」と呼びたがるものです。グローバル化がいくら進んだところで、実は人間は属性を見出したがるのかもしれませんね。

そんな中、アメリカの自動車サイト「Cars.com」が面白い調査結果を発表しました。お題は「アメ車指数」です。ここ数年、続けられている調査でアメリカで生産・販売されている車のアメ車指数を測ってランキングにする、というものです。

アメ車指数と聞いてシボレー コルベット、フォード マスタング、キャデラック エスカレードといった、様々なアメリカ車の名前が思い浮かんだことでしょう。しかしコレ、乗り味がアメリカン、ワイルドさがアメリカンなどといった感覚的なものではないんです。

なんと、アメリカで生産・販売される車のアメリカ製パーツの使用率でランキングが作成されているんです。しかも、このランキングの選考にあたっての前提条件として自動車構成部品の75%以上がアメリカ製であること、となっています。

5年前の同調査では、この前提条件をクリアする車は29台あったそうですが、今回はなんと……たったの9台。自動車生産台数は増えていますから、この結果はそれだけ輸入パーツが増えたことを意味しています。まさにグローバル化です。

さて、当のランキングは下記のとおりでした。

1位:トヨタ カムリ
2位:トヨタ シエナ
3位:シボレー トラバース
4位:ホンダ オデッセイ
5位:GMC アカディア
6位:ビュイック エンクラーバ
7位:シボレー コルベット


念のために販売台数ではなく生産台数で調べてみても、2位と3位が入れ替わっただけで、あとは同じ結果となりました。

▲ほぼ毎年のようにアメ車指数トップを維持しているトヨタ カムリ。貿易摩擦軽減のための涙ぐましいトヨタの努力の結果では? なお、写真はアメリカで放映されたカムリのCMの1シーンです ▲ほぼ毎年のようにアメ車指数トップを維持しているトヨタ カムリ。貿易摩擦軽減のための涙ぐましいトヨタの努力の結果では? なお、写真はアメリカで放映されたカムリのCMの1シーンです

このランキングを見ると、かつてアメリカ議会でトヨタリコール問題関連の公聴会がひらかれた際、エレノア・ホームズ・ノートン議員から飛び出した質問が思い出されます。

ノートン議員が「本当はアメリカ車を買いたかったんだけど、市販されているハイブリッド車はカムリハイブリッドしかなかった。今後、リコールされることはないと言い切れるか?」と質問。

これに対して当時の北米トヨタの稲葉社長は「まず言わせてください。カムリハイブリッドはアメリカ車です。パーツはアメリカで調達され、生産もアメリカでされています」と応戦。

しかし、ノートン議員はやや“キレ”気味に「だから何よ? トヨタのバッジつけてんだから日本車でしょ! それともアメリカで作ってるから、(リコール問題について)アメリカ人が悪いってこと?」って議論がどんどんズレていきました。

▲アメリカ車でハイブリッドモデルが見つけられないからやむなくトヨタ カムリハイブリッドを購入した、というノートン議員 ▲アメリカ車でハイブリッドモデルが見つけられないからやむなくトヨタ カムリハイブリッドを購入した、というノートン議員

実際には、どんなアメ車よりも“アメリカン”だったんですけどね、当時から……。もはや国名で属性を分類するのではなく、自動車メーカー名を用いるべきなんでしょうね。

text/古賀貴司(自動車王国)