フォルクスワーゲンup!|伊達セレクション
写真の車両は15インチアルミホイールなどの装備が充実している4ドアのhigh up!。郊外の高速道路まで出張って結構な速度を出してみても、この軽自動車に毛が生えた程度のサイズのコンパクトカーはビクともせず。また、あえて鉄板むき出しの内装もセンス良好といえる。しかしそれでも、「所有するよろこび」のようなものに関しては、中古の輸入プレミアムコンパクトに軍配が上がると個人的には考える。
フォルクスワーゲンup! センス良好な内装|伊達セレクション
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移動手段としては世界最強に近いup! だが

各方面で「黒船襲来!」的に大絶賛のフォルクスワーゲンup!。ほとんどの小型車はこの超低価格なれど超高品質な車に駆逐され、今にもお払い箱になりそうな勢いのリポートが多いが、不肖わたしはそうは思わない。

結局は「車に何を求めるのか」という問題である。

「安いのに快適かつ安心な“移動手段”」を求めるのであれば、現時点ではup!以上の合理的選択肢はちょっと思いつかない。ちょっと気の利いた高年式輸入中古プレミアムコンパクトを「安いのに快適かつ安心な“移動手段”」として使うのも大いにアリだが、その場合の予算総額はup!のおおむね20万円増し以上にはなるだろう。

しかも新車のup!には、超ざっくり言って頭金97万円+諸費用だけで3年間乗れる「Get up! Smile」や、月々の支払額が3800円からとなる「Get up! Easy」などの専用購入プランがある。高年式輸入中古プレミアムコンパクトは、こと「安いのに~」という部分では新車のup!に太刀打ちしにくいのだ。

しかしup!にも弱点はある。それは「でも結局は“移動手段”でしかない」ということだ。確かに、サイズからはちょっとイメージできないほど長距離高速移動も得意とし、そして高速コーナーでも一切不安を感じさせず、そして価格を考えればまずまずな質感の内装ではある。だが、基本的には「それだけ」なのだ。

中古プレミアムコンパクトにあって、新車のup!にないもの

心躍るエンジンの回転感覚や、目と手で触れるたびになぜか涙が出るほど愛おしくなる内外装の造形や質感は、そこにはない。up!を運転していると、なんとなく「移動という“仕事”」をしているような気分になるのだ。あるいは、超機能的なキッチンで「移動」という名のまかない料理を作っているような。

いや無論、あの価格であの走りは大拍手モノであるし、やや無機質なデザインも今っぽくていい、という人もいるだろう。繰り返しになるが、「安いのに快適かつ安心な“移動手段”」としてup!は世界最強レベルである。

しかし、そうではない部分も車に求める者にとっては、言い換えるなら「効率的な“仕事”」ではなく「ごくつぶしで無駄な“遊び”の部分」を、割合はともかくとして車に求める者は、up!に若干の物足りなさも感じるだろう。

そしてそういった性向をもっていると自覚している者は、新車のup!ではなく、ほぼほぼ同予算で「中古の高年式輸入プレミアムコンパクト」を買ったほうがシアワセになれる。プレミアムコンパクトに「標準装備」される有機的でセクシーな内外装や肌触りの良いレザーシートなどは、「移動」それ自体には大して貢献しない。しかし、わたしを含むある種の者には、そういった「無駄」あるいは「遊び」が絶対に必要なのだ。

ということで、今回の伊達セレクションはずばりこちら。
新車のup!とほぼ同予算で狙う、無駄の多い(?)中古プレミアムコンパクト!


文・伊達軍曹 text/Sergeant DATE