フォルクスワーゲン パサートオールトラック▲温泉は山あいにあることが多いし、キャンプ地もしかり。つまり道中は、山道=ワインディングが多く雨や雪との遭遇も多い。となると、オンロードもオフロードもこなせて、ラグジュアリーで乗り心地もよいワゴン型SUVってピッタリでは?

悪路よし、ワインディングよし、乗り心地よし……の万能モデル

雨や雪が降っても道が荒れていても、車高の高いSUVなら安心だ。荷物もたっぷり載せられるからキャンプだって行ける。もちろんデザインだって、迫力があってイケてる。だからこそ、昨今はSUVが人気なんだろうけれど、逆に街中に溢れかえるSUVにへきえきとしている人もいるのではないだろうか?

そこで注目したいのが、ワゴン型SUVだ。ステーションワゴンの最低地上高を高め、4WDシステムを搭載し、一般的なSUV同様の悪路走破性を確保。それでいて全高が低いプロポーションは、見た目からして他のSUVとの差別化が図れる。同時に、SUVのイカツさが薄まる反面ラジュジュアリーさが加わる。だから、高級ホテルや旅館に乗り付けても実にサマになる。

全高が低いことで、カーブでは車体が振られにくく、ワインディングの走りでは有利だ。全高の高いSUVのように、コーナーリング時の安定性を上げるために足回りを固める必要がないし、ステーションワゴンよりサスペンションのストロークが長いこともあって、乗り心地の面でも断然有利なのだ。

さらに、オーナーの身長によっては脚立を使わなくてもなんとかルーフの洗車が可能。コレ、地味だけど、洗車が面倒=洗車の頻度が減る=愛車が汚れっぱなしになりがち、なのが嫌な人にとっては見逃せないポイントじゃないだろうか。

一方で全高が低い分、SUVよりも室内空間は狭く積載容量は劣る。だが、逆にルーフに荷物を載せやすいというメリットも。

そんなワゴン型SUVだが、今のところまだまだ車種が限られており、スバル アウトバック以外は輸入車だけという状態。しかも、ステーションワゴンの派生くらいに思われているフシがあり、新車販売台数もたかが知れている。つまり、レア感が異常に高いジャンルなのだ。

安定したなめらかなコーナリング、心地よい乗り味、洗車はラク、ルーフに荷物を載せやすい、周りと被らないレア車種……。ほら、これだけの魅力的なポイントを備えている。新車時はベースのステーションワゴンモデルより高価だが、中古車ならグンとお手頃感のある価格に。しかもレアなせいか、現行型が新車時の半値以下の予算で狙えるというモデルも存在するのだ。ということで、ここはワゴン型SUVに狙いを絞って、アウトドアも家族との温泉旅行も何でもこなす万能モデルを手に入れてみてはどうだろう!
 

安全装備や快適装備が至れり尽くせりのラグジュアリーモデル
メルセデス・ベンツ Eクラスオールテレイン(現行型)

メルセデス・ベンツEクラスオールテレイン▲Eクラスのステーションワゴンと比べ、全長は-10mmの4950mm、全幅は+10mmの1860mm、全高は+30mmの1495mm。ラゲージ容量は通常で640L、最大で1820Lと申し分ない。バンパー下で足を振るとテールゲートを開けられる便利機能も備わっている
メルセデス・ベンツEクラスオールテレイン▲カーナビゲーションやオーディオなどを一括管理するコマンドディスプレイに、ステアリング角度、車高、前後および左右の車体の傾き、ブレーキとアクセルの状態、コンパスを表示する専用画面が表示される

2017年9月に登場したEクラスオールテレインは、同社初のワゴン型SUV。とはいえ、4WDやSUVを昔から作っている知見もあり、その性能の高さは言うまでもない。エンジンは2Lディーゼルターボで、9速ATが組み合わされる。4WDシステムは、走行状況に応じて前後のトルクを自動で可変してくれる。

最低地上高はEクラスワゴンの+25mmとなる140mm。さらに、電子制御式エアサスペンションを備えているので、路面状況や乗員や荷物の積載状況に応じて、車高を通常時から+35mmまでの間でスイッチひとつで3段階の設定が可能。また、走行モードは「コンフォート」「エコモード」に加えて、Eクラスワゴンにはない「オールテレインモード」が加わる。これは、オフロード走行に適したトランスミッション特性に変更され、35km/h以下では自動で車高が20mm高くなる専用モードだ。

もちろん衝突被害軽減ブレーキや、渋滞時対応の全車速追従アダプティブクルーズコントロール(ウインカーを上げるだけで車線が変更してくれる機能などが付く)など、メルセデス・ベンツの最新安全運転支援機能を標準装備している。なお、2020年9月のマイナーチェンジ以降、音声であれこれと操作ができるMBUXが追加装備されている。

登場時の新車価格は861万円。原稿執筆時点で中古車流通量は21台と台数は少ないが、走行距離約6万kmの物件が新車時の半値に近い440万円前後から見つけることができる。
 

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メルセデス・ベンツ Eクラスオールテレイン(現行型)×全国

高速巡行時のフラットな走り味が思わずクセになる
アウディ A4オールロードクワトロ(現行型)

アウディA4オールロードクワトロ▲全長4750mm×全幅1840mm×全高1490mmと、Eクラスオールテレインよりも小ぶりなサイズ。ラゲージ容量は通常で505L、後席を倒すと1510Lまで拡大できる。なお、2020年10月のマイナーチェンジで、ラゲージ容量が少しだけ縮小している
アウディA4オールロードクワトロ▲8.3インチモニターを備えたインフォテイメントシステムは標準装備。スマートフォンインターフェイスが備わり、一部アプリの共有が可能だ。オプションで、メーターパネルにナビ画面を全面表示できるバーチャルコックピットも用意されている

2019年までは、A6アバントベースのA6オールロードクワトロも日本にラインナップしていたが、現行型の同社ワゴン型SUVは、A4アバントベースのA4オールロードクワトロのみ。ちなみに、本国ドイツでは2019年に、A6セダン、A6アバントとともに、A6オールロードクワトロもフルモデルチェンジを果たしている。

現行型のA4オールロードクワトロは、2016年9月に日本へ上陸。アウディ自慢の4WDシステム「クワトロ」を搭載するのはもちろん、アバントより最低地上高が30mm高い170mmを確保している。エンジンやトランスミッションなどの特性を複数の走行モードから選択できる「アウディドライブセレクト」に、常時4WDとなる「オフロードモード」が追加されるなど、悪路走破性が高められている。一方で、高速道路巡行時は自動的にFF走行となり、フラットで滑空するような走行が可能だ。

エンジンは2Lターボで、7速Sトロニック(デュアルクラッチ式2ペダルMT)が組み合わされる。衝突被害軽減ブレーキや渋滞時のストップ&ゴー機能付きACC、レーンキープアシストといった先進安全運転支援機能などはフルで標準装備され、最大8台まで使えるWi-Fi機能も用意されている。2020年10月のマイナーチェンジで、マイルドハイブリッドシステムが搭載された。

登場時の新車価格は658万~759万円。原稿執筆時点の中古車流通量は26台だった。登場後5年が経過したこともあり、走行距離7万kmの条件なら、新車時の半値以下となる本体価格260万円前後の物件を見つけることができる。走行距離5万km未満の条件でも、330万円ほどで物件を見つけることができる。
 

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モデルチェンジでスタイリッシュに生まれ変わった万能モデル
フォルクスワーゲン パサートオールトラック(現行型)

フォルクスワーゲン パサートオールトラック▲全長4780mm×全幅1855mm×全高1550mmと、EクラスオールテレインとA4オールロードクワトロの中間的サイズ。ラゲージ容量は通常で639L、後席を倒すと最大1769Lに。2021年4月のマイナーチェンジでフロントやリアまわりのデザインが変更されているが、見比べないと分からないレベル
フォルクスワーゲン パサートオールトラック▲カーナビを搭載するタッチパネル式の純正インフォテイメントシステム「Discover Pro」は標準装備。スマホ連動機能はもちろん、画面の前で手を振るだけで画面を切り替えられる機能も

2015年に日本へ上陸したパサート/パサートヴァリアントに続き、2018年10月から販売が開始されたパサートオールトラック。パサートヴァリアントより、最低地上高を30mm高めた160mmを確保。当然、同社4WDシステムの「4モーション」が与えられている。

任意で走行モードを選べるアダプティブシャシーコントロール「DCD」は、エコ、ノーマル、スポーツ、カスタム、コンフォートに加え「オフロードモード」を備えている。このモードは、滑りやすい急な坂道を一定速度で下れ、ラフロードで微細なアクセルワークが行えるというもの。

エンジンは2Lディーゼルターボに6速DSG(デュアルクラッチ式2ペダルMT)が組み合わされた。衝突被害軽減ブレーキや全車速追従機能付きACCなど、先進安全運転支援機能は標準装備。2021年4月のマイナーチェンジではDSGが7速化された他、ACCがより緻密に制御されるようになった。また、ハイビームで走行していても先行車や対向車などを感知して自動で防眩するIQライトが備えられた。

登場時の新車価格は、509万9000~569万9000円。原稿執筆時点での中古車流通量は19台と少ない。登場から3年経たないため、さすがに新車時の半値以下とはならないが、それでも走行距離約5万kmの上級グレードの物件が本体価格310万円前後と、新車時の約46%オフで見つかった。さらに、走行距離1万km未満の条件でも、380万円前後の物件から狙うことができる。
 

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高い安全性能とスカンジナビアデザインが魅力の兄弟
ボルボ V60クロスカントリー(現行型)/V90クロスカントリー(現行型)

V60クロスカントリー▲V60クロスカントリー。サイズは全長4785mm×全幅1895mm×全高1505mmと、A4オールロードクワトロに近いサイズ。最低地上高はベースのV60より65mm高い210mmが確保されている
V60クロスカントリー▲V60クロスカントリー。インパネ中央の9インチのタッチパネル式センターディスプレイは、手袋をしていても操作が可能。スマホ連動はもちろん、目的地設定やエアコンの温度調整などは音声でも行える

世界初のワゴン型SUVは、1995年のスバル レガシィグランドワゴン(後のアウトバック)だが、これに続いたのが1998年に登場したボルボ XC70だ。現在、XCの名はSUVモデルに与えられ、ワゴン型SUVは車名の後ろに「クロスカントリー」と付けられるようになった。

現行型ではV60とV90の2車種にクロスカントリーが用意されている。いずれも同社ならではの先進安全運転支援機能がフル装備されている。トランスミッションは8速ATで、4WDが組み合わされている。
 

V90クロスカントリー▲V90クロスカントリー。全長4940mm×全幅1905mm×全高1545mmと今回紹介モデルの中では最も大きいサイズのモデルだ。最低地上高はV90より55mm高い210mm。世界初の大型動物検知機能をはじめ標準装備されている安全機能は十二分の内容だが、2019年9月に衝突回避ステアリング支援機能が追加されるなど、年々安全性は進化している
V90クロスカントリー▲V90クロスカントリー。9インチのタッチパネル式センターディスプレイを備え、スマホ連動はもちろん、目的地設定やエアコンの温度調整などは音声でも行える

エンジンは、最近の同社の電動化推進によって短期間で変更されているのが特徴。

2019年4月登場と比較的新しい現行型V60クロスカントリーは、当初2Lターボ(T5)を搭載していたが、2020年11月からマイルドハイブリッドの2Lターボ(B5)に変更された。

一方の2017年2月に登場したV90クロスカントリーは、2Lターボ(T5)と、2Lターボ+スーパーチャージャー(T6)の2タイプに加え、2018年7月に2Lディーゼルターボ(D4)が追加されている。さらに2020年10月、マイルドハイブリッドの2Lターボ(B5)と、マイルドハイブリッドの2Lターボ+電動スーパーチャージャー(B6)の2機種に整理されている。

登場時の新車価格は、V60クロスカントリーが549万~649万円、V90クロスカントリーが694万~819万円。どちらも登場からあまり年数が経っていないが、原稿執筆時点の中古車流通量は、V60クロスカントリーが61台、V90クロスカントリーが52台と、いずれも今回の紹介モデルの中では品揃えが充実していて選びやすい。

しかも、走行距離が少ない物件が多く、走行1万km以下の条件でも、V60クロスカントリーで51台、V90クロスカントリーで24台見つかった。この条件では、V60クロスカントリーなら2Lターボ(T5)の380万円前後から、V90クロスカントリーなら2Lターボ(T5)で480万円前後から狙える状態だ。

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ボルボ V60クロスカントリー(現行型)×全国

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ボルボ V90クロスカントリー(現行型)×全国
文/ぴえいる、写真/尾形和美、M・ベンツ、アウディ、フォルクスワーゲン、ボルボ

ぴえいる

ライター

ぴえいる

『カーセンサー』編集部を経てフリーに。車関連の他、住宅系や人物・企業紹介など何でも書く雑食系ライター。現在の愛車はアウディA4オールロードクワトロと、フィアット パンダを電気自動車化した『でんきパンダ』。大学の5年生の時に「先輩ってなんとなくピエールって感じがする」と新入生に言われ、いつの間にかひらがなの『ぴえいる』に経年劣化した。