機動性、モノスペースの広さ、ワゴンの使い勝手、がウリ

個性的なスタイリングや、いわゆるネコアシに代表される走りのテイストだけがモダンプジョーの魅力ではない。他のモデルにはないユーティリティの高さも挙げておきたい。それを体現しているのがSWシリーズだ。個人的には、どのモデルでもSWを選ぶのが今、最もプジョーらしさを満喫できる早道だとさえ思う。

Cセグメントの稼ぎ頭、308シリーズにもついにSWモデルが加わった。待望の、と言っていいだろう。先代307シリーズでは平均して4割強程度をSWモデルが占めていたからだ。ハッチバックの機動性と、モノスペースの広さ、ワゴンの使い勝手という3拍子揃った機能の高さがSWの見どころだ。ハッチバックよりも全長で200mm、全高で45mm、ホイールベースで100mm延伸されている。重量は+150kg。

スタイリッシュさはプジョーとして譲れないところだが、そこに無理なく3列シート(2/3/2の7人乗り)を飲み込んだ。VWトゥーランあたりがライバルになろうが、あれほどミニバンっぽくないのがいい。以前の307SWでは、2列目真中のシートが狭く、エマージェンシーにしか見えなかったが、ひと回り大きくなったボディサイズの恩恵か、今回は平等になった。もちろんシートアレンジも多彩だ。

加えて、2列目3列目シートの脱着も簡単。3列目を外せば500L以上、2列目も合わせて外せば最大1700L以上の荷室が出現する。ミドルクラスワゴン以上の包容力だ。開閉式のガラスハッチも“ワゴン派"には嬉しい。もうひとつ、ガラス部分がさらに拡大されたパノラミックガラスルーフ(標準装備)も人気のアイテムである。

さて。308SWの日本仕様に積まれるエンジンは1機種だ。BMWとの共同開発で生まれた、直噴1.6Lターボエンジンで、やや古くさいが4速ATが組み合わされる。2種類のグレード、プレミアムとグリフが用意された。試乗車は16インチタイヤを履くプレミアムだった。

走り始めのマナーに多少4速ATゆえのぎこちなさを感じるものの、必要十分な力を発揮するエンジンと動きのいいアシのおかげで、走りの質感には満足できる。特に、ホイールベースが延びたからか、乗り味により深みが加わって、これぞネコアシという趣だ。乗り心地もいい。さすがにハッチバックと同様の軽快さ、というわけにはいかないが、重量が増えたぶん、しっとりと走るのもいい。こちらのほうがプジョーらしいと思う。高速走行時の安定感も308シリーズの中で最も良好だ。

今回登場した車、メーカーたち

プジョー308SW

個性たっぷりの猫足はハッチバックから受け継いでいる

ライバルの車たち

アルファロメオアルファ159スポーツワゴン

イタリアンな雰囲気たっぷりで、走りもキッチリカッチリしてきた

アウディA4アバント

まだデビューしたてとあって、中古車物件は品薄

BMW3シリーズツーリング

セダンでもワゴンでもBMWのDNAである走りのこだわりは共通

シトロエンC5ツアラー

個性を維持しつつも、万人ウケする仕上がりに変革を遂げた

ジャガーXタイプエステート

ジャガーのステーションワゴン、というだけで風格を感じさせてくれる

フォトコレクション

写真:ハッチバック同様、アグレッシブ|試乗by西川淳

ハッチバック同様、アグレッシブ

フロントのエアインテークは、まるでライオンが口を大きく開けたかのような雰囲気。彫刻作品のような凹凸や曲線などは、ハッチバックと共通。写真ほどズングリした印象はない

写真:開口部は広く、7人乗車もOK|試乗by西川淳

開口部は広く、7人乗車もOK

3列シートを備えているとは思えないデザインになっている。全高を確保しながら、背高のっぽに見えないような工夫が随所に感じられる。ボディのプレスラインや窓枠の色使いが、賢い

写真:シートはもちろん可倒式|試乗by西川淳

シートはもちろん可倒式

2列目シート、3列目シートは可倒式なので、荷物の量によってフレキシブルに対応できる。3列目シートはちょっと小ぶりだが、決して窮屈ではないのがエライ。国産車を見習った?

写真:インテリアもハッチバック共通|試乗by西川淳

インテリアもハッチバック共通

特段、ワゴンモデルだからといって変わりはない。洒落た雰囲気に実用性の高さ。実にフランス車らしい車だと思う。シートは結構大きめで、長距離移動も疲れにくい

写真:この造形美は本当に凄い|試乗by西川淳

この造形美は本当に凄い

フロントグリルを間近で見ると、本当にアグレッシブでスポーツカーのようなデザインになっている。こんな凹凸や曲線美を実現させてしまうなんて、ちょっと感心させられます

Report / 西川 淳