テリー伊藤が「これで青山の街を走る女性がいたら惚れる」と断言するシトロエン BX
2018/02/22
29年分の走行記録が揃った愛情たっぷりのBX
今回は、「ガッティーナ」で出合ったシトロエン BXについて、テリー伊藤さんに語りつくしてもらいました。
~語り:テリー伊藤~
素敵な中古車、おもしろい中古車を日々探していると、希にものすごいドラマを持ち合わせた中古車に出合うことがあります。今回紹介するシトロエン BXは、まさに誰もがうらやむようなドラマを持ち合わせた中古車でした。
お邪魔したガッティーナの社長が僕に見せてくれたのは、前オーナーがつけていた走行記録です。
オイル交換や車検などの整備記録はもちろん、給油や毎回の走行場所まで、なんと29年前に新車で納車されたときから一度も欠かすことなく記録されていました。
奥様とドライブしたときのことなども書かれていましたよ。間違いなくこのBXはオーナーから家族のように愛されていたのでしょう。
外観や内装には29年間乗り続けたなりのヤレが出ていますが、丁寧にメンテナンスされていたことが容易に想像できます。
BXの販売台数は多かったと聞きますが、ちょっとモダンすぎて、保守的な人だと手を出しにくかったように感じます。同じモダンなシトロエンでも1970年代のGSの方が日本では人気があったのではないでしょうか。
でも登場から30年以上経過した今、モダンな雰囲気が適度に枯れてきてカッコよく見えますね。僕は最近、いすゞ ピアッツァに乗りたくて、本気でいい中古車を探しています。BXにはピアッツァと同じような優しさがありますね。
テリー伊藤なら、こう乗る!
BXが新車で日本に入ってきた頃、僕は代理店をやっていた西武自動車販売に行ったりしていたんですよ。まだ駆け出しだったこともあり、ちょうどシトロエンの新車が買えるか買えないかというくらいの収入でね。
最終的にはBXは買わずにヤナセでビートルを買いました。今思えば、あの頃に乗っておけばよかったなと。
この時代のシトロエンに今乗るのはそれなりの覚悟が必要です。しっかりメンテナンスされていたとはいえ、購入後はトラブルも出てくるはずですから。
僕自身、今BXを買うことはないでしょうし、仮に手に入れるとしても中身は現代のものに変えてしまいたい。外観をいじるならライトを黄色にして、内装はトリコロールカラーにしちゃうかな。
今となってはサーファーもBXのような車には手を出さないでしょうね。サーファーはとても合理的です。室内にウエットスーツを吊るせる。室内で着替えができ、そして街でも乗れる。1台ですべてを満たす車を選ぶから、必然的にミニバンになるのでしょう。
ただ、現役時代を知らない30代の人たちなら案外「カワイイ!」と飛びつくかもしれないですね。目つきが鋭くて威圧感を与える車が多い現代で、BXのような車を「カワイイ!」と言ってくれたらおじさんは嬉しくなります(笑)。
一途な人なら、きっと何があってもその車を愛し続けられるはず。案外そういう衝動で車に乗れるのは、男性よりも女性に多いのではないでしょうか。
このスタイルを気に入り、青山あたりをBXでさっそうと走る女性を見かけたら……惚れてしまいそうです(笑)。
僕は基本的に車は自分で乗って楽しみたいタイプですが、BXの場合は青山のオープンカフェから車道の反対側の路肩に女性が駐車させているところを眺めていたい。この車はそれくらい、街の中で絵になるモデルだと思いますね。
シトロエン BX
ベルトーネに在籍したガンディーニがデザインを担当したことで知られるシトロエン BX。1987年までの前期型はスピードメーターがボビン式となり、マニアから人気。ボディタイプはハッチバックの他、ステーションワゴンもラインナップ。シトロエンならではの乗り味を堪能できるハイドロニューマチックサスペンションを搭載。
■ テリー伊藤(演出家)
1949年12月27日生まれ。東京都中央区築地出身。これまで数々のテレビ番組やCMの演出を手掛ける。現在『ビビット』(TBS系/毎週木曜金曜8:00~)、『サンデー・ジャポン』(TBS系/毎週日曜9:54~)に出演中。単行本『オレとテレビと片腕少女』(角川書店)が発売中。現在は多忙な仕事の合間に慶應義塾大学院で人間心理を学んでいる。
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