がんちゃんさん(兵庫県)
投稿日: 2013年2月6日
5点
9000回転までブン回るエンジン、日本車史上屈指の精巧さを誇るミッションなど、長所は数多くありますが、「エス」という名前自体、ホンダ四輪の“走りの血統”であり、50周年記念車としてその名を冠したというだけで、偉大なクルマです。ただ、そうしたマニアックな視点よりも、とにかく「屋根が開く」!これが最大の長所でしょう。天気の良い日にオープンにして流せば、生活上のわずらわしい瑣末事など、どうでもよくなります。夜のドライブで屋根を開けようものなら、ダイヤモンドの如くきらめく星空が頭上に迫ります。都会でオープンにしたいなら、オススメはショッピングモールなどの自走式立体駐車場。店舗入口に近い便利な場所に止めたいファミリーカーやらの熾烈な争いを尻目に、一気に屋上フロアまで駆け上がり、ほとんど誰も居ないところに止めてオープンにします。そして上を見上げて下さい。電線も電柱もない美しい空があなたを包み込んでくれます。どれだけ入口に近いかを争うなんてバカバカしいと心の底から納得するはずです。もちろんオープンカーならどれでも可能ですが、「エス」もそうした体験をさせてくれる数少ない一台です。
このクルマに乗るなら、「利便性」という概念は潔く捨てて下さい。見ての通り、2人しか乗れません。荷物はほぼ積めません。買い物はスーパーがせいぜいで、間違っても家電量販店やホームセンターには行けません。いや、行ってもいいですが、電気ポット以上のものは持ち帰れませんので後悔しないように。車内収納でいうと、まずグローブボックスがありません。車検証はバックシートポケットまたは助手席ネットの中です。ドリンクホルダーは1つしかありません。助手席側は自分で工夫しましょう。タバコを吸う方は、灰皿がドリンクホルダーと共用ですので、どちらか一方で我慢して下さい。あと、初期型には時計がどこにもありません。まるで「このクルマに乗るのに時間を気にする必要がありますか?」と言わんばかりです。こういうナイナイ尽くしで、ある意味で「挑戦的な」メーカーの態度をニヤっと笑って受け入れられる人でないと、長く付き合えないでしょう。「不便である。だが、そこがいい。」これはそういうクルマです。
良くも悪くも、「エス」は正真正銘のスポーツカーです。このクルマにとって一番大切なのは「走ること」であって、快適性や利便性ではありません。なにしろハンドルのポジション調整すらできません。理由は「ステアリング支持剛性が下がるから」…一般の方にはナンノコトヤラ意味不明でしょうが、とにかくメーカーの「走ること」に対する情熱(ほとんど執念)がハンパじゃありません。乗ると気迫が伝わります。その意味で、現代日本の商業主義な量産車全体に対する強烈なアンチテーゼなのですが、走り出してしまえばそんなリクツもどうでもよくなってしまいます。何もかも忘れて、夢中になってハンドルと格闘する。「スポーツ」としての運転。そういうことが好きな人のためのクルマです。興味のない人にはただの不便で珍しいクルマでしかありませんが、興味のある人には、同じ時代に存在することを神に感謝したくなるほど貴重な存在です。
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