MX-30▲マイルドハイブリッド、EV、PHEVと3モデルが出揃ったMX-30。マツダのチャレンジスピリットが具現化された車だ

装備内容もアウトドア・ユースに最適化

マツダのコンパクトクロスオーバーSUV、MX-30にプラグインハイブリッド(PHEV)モデルが追加された。マイルドハイブリッド(ガソリン車)、バッテリーEVに続く3モデル目だ。

モーターに組み合わされた発電用エンジンは、なんとロータリー! バッテリーEVがすでにある中で、なぜPHEVが追加されたのか? なぜ今、ロータリーエンジンを復活させたのか?

この記事ではすでに発売されているMX-30とPHEVモデルの魅力を併せて紹介しつつ、MX-30の中古車市場の状況を紹介する。
 

MX-30 ▲すべてのモデルがモーターを搭載しているMX-30。写真は特別仕様車の「エディションR」
 

マツダ MX-30はどんなモデル?

まずはMX-30とはどんな車か、おさらいしておこう。MX-30はマツダが「電動化戦略をリードするモデル」として世に放ったコンパクトクロスオーバーSUVだ。

2020年10月に、2L 直4ガソリンエンジンを搭載するマイルドハイブリッドモデルを発売。その後、EVモデルを翌年1月に発売、同社初の量産EVとなった。

全長4395mm × 全幅1795mm × 全高1550~1595mmというコンパクトなボディの中には、マツダのチャレンジスピリットが表現されている。例えば、CX-30と共通のプラットフォームを使いながらも、後方のピラー角度を寝かせたクーペ風のスタイルとしつつ、センターピラーレス・観音開き式サイドドアとなる「フリースタイルドア」を採用した。

MX-30 フリースタイルドア ▲フリースタイルドアを採用。開口部の広さはメリットだが、後部ドアのみを開けられないデメリットも。そうした部分にもCX-30とは違うんだゾ、という割り切りが感じられる

そう、この構造はロータリーエンジンを動力として搭載する最後のモデルとなったRX-8を思い出させるものだ。今回、PHEVの発電用パワーユニットとしてロータリーエンジンが復活したが、企画開発の段階からソレが意識されていたことは間違いない……。

また、加減速を適切に制御してコーナリング時の応答性、安定性を高める「G-ベクタリング コントロール プラス(EVモデルは「エレクトリック G-ベクタリング コントロール プラス」)」を搭載。EVモデルではモーターを動力とすることで、さらにレスポンスの良い制御が実現された。電動化時代であっても“走る歓び” を忘れない姿勢はいかにもマツダらしい。

 MX-30 インパネ ▲“フローティング”をテーマに、開放感ある空間に仕上げられた車内。後席も広い
MX-30コンソール ▲コルクをインテリアに採用する例は極めて珍しい。シフトレバー下の空間は吹き抜けになっている

インテリアについてもセンターコンソール部分にコルクを採用するなど、とってもユニークだ。コルクといえば、車に詳しい人はマツダの前身がコルクを製造する「東洋コルク工業」だった歴史を思い浮かべるはず。

また、コルクは木の樹皮を繰り返し利用して製造できることから、今改めて注目されているサステナブルな素材でもある。このようにMX-30は“電動”という新たなフィールドに挑みながら、車好きの心を巧みにくすぐり、ドライバーの感性にも訴える意欲旺盛なモデルなのだ。

 

マツダ MX-30のPHEVはどんなモデル?

野心的なモデルとなったMX-30だが、唯一、ウイークポイントとされる部分があった。それはEVモデルの航続可能距離だ。フル充電で走れる距離が256km(WLTCモード)と、日産 リーフなどに比べてかなり短いのである。

日常使いでは十分な航続距離だが、週末にちょっと遠出すると残りの充電量が心配……そんな声に応えて発売されたのが、今回のPHEVモデル、MX-30ロータリーEVだ。
 

 MX-30 Rotary-EV ▲MX-30ロータリーEVのディメンションは全高がわずかに高い(タイヤ分)だけで、EV、マイルドハイブリッドモデルとほとんど変わらない
 MX-30 Rotary-EV ▲PHEVモデルであることの主張はバッジとホイールデザインのみ、と控えめ

ハイブリッドシステムに採用されたのは、PHEV化による重量増に対応して高出力化(最高出力125kW)されたモーターと、新開発の8C型ロータリーエンジン。モーターとジェネレーター、エンジンを同軸上に配置することで、パワーユニットをコンパクトな空間に収めることができた。

駆動はモーターのみ、エンジンは発電に専念するシリーズ式ハイブリッドで、EV走行換算距離(外部充電の電力のみを使用したときの航続距離)は107km。毎日の通勤や買い物には十分な距離と言えるだろう。さらに50Lの燃料タンクを備えているから、エンジンで充電しながら遠出できる。EVのウイークポイントが見事に克服されたのだ。

 MX-30 Rotary-EV  エンジンルーム ▲コンパクトな空間にモーターやジェネレーター、エンジンが収まる

今回、発電用エンジンにロータリーを採用したのは、あくまでコンパクトな空間に収め、高出力モーターを搭載するため。レシプロエンジンと違い、バルブ機構やコンロッド、クランクシャフトといった構造をもたず、省スペースで大きなエネルギーを取り出せるロータリーエンジンが最適解だったというわけだ。

「目指したのはEVモデルの乗り味を完全に再現することだった」と、新たにMX-30開発主査に就任した上藤和佳子氏は答えていた。モーターなどの他にエンジン、燃料タンクなどを搭載するPHEVモデルはどうしても重くなる。その重量増を感じさせない走りを実現することが、MX-30ロータリーEVの開発テーマだった。

 MX-30 Rotary-EV  トランク ▲ロータリーEVの荷室には1500WのAC電源を装備。キャンプや災害時でも頼りになる。しかも住宅への電力供給ができるV2Hにも対応
 

中古車で買えるマツダ MX-30は?

MX-30はマイルドハイブリッドモデル、EVモデルとも展開されるグレードは1つで、パッケージオプションや特別仕様車で装備を差別化している。

マイルドハイブリッドモデル
2020年10月に発売され、中古車市場に約170台が流通している。そのほとんどが走行距離1万~2万kmの物件で、中古車平均価格は約230万円だ。

マイルドハイブリッドモデルの新車価格が242万~339.4万円であることを考えると、順当な価格推移と思っていいだろう。2020年式・走行距離1.5万kmの2WD車で、総額165万円というリーズナブルな物件も見つかる。

ちなみに、4WD車はマイルドハイブリッドモデルにしか設定されておらず、中古車市場に流通している物件の約4分の1が4WD車となっている。

 MX-30 マイルドハイブリッド ▲マイルドハイブリッドモデルの長所はリーズナブルで、4WDも設定されていること

▼検索条件

マツダ MX-30(初代)

EVモデル

一方のEVモデルは、中古車市場流通台数が20台前後とまだ少なめ。だが、新車価格が451万~501.6万円と高額なのに対して、中古車平均価格は約360万円とかなりリーズナブル、しかもほとんどの物件が走行距離1万km未満だ。

安いものでは2021年式・走行距離3000kmの「ハイエストセット(新車時価格495万円)」で、総額290万円という物件も。新車の場合はCEV補助金や地方自治体の新車購入補助金が利用できるという特典があるが、それを差し引いても中古車のお買い得感は高い。
 

 MX-30 EV ▲EVモデルは中古車市場での流通台数こそ少ないが、コンディションの良い物件が多い

▼検索条件

マツダ MX-30 EVモデル(初代)

PHEVモデル
2023年11月に登場したPHEVモデルは、残念ながらまだ中古車として流通をしていない。

▼検索条件

マツダ MX-30 ロータリーEV(初代)
※中古車の流通状況により物件が表示されない可能性があります。

※記事内の情報は2023年9月30日時点のものです。
 

文/田端邦彦 写真/篠原晃一、マツダ
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。