▲近所のガソリンスタンドの価格。全国平均に比べると東京23区内は高めだ ▲近所のガソリンスタンドの価格。全国平均に比べると東京23区内は高めだ

半年あまりで約20%も下落。ガソリン価格に何が起きた?

ガソリン価格がじりじりと上昇している。資源エネルギー庁の石油製品価格調査によると、6月1日時点でのレギュラーガソリン小売価格の全国平均は「142.9円」。2月9日が直近の安値である「133.5円」だったので、約7%値上がりした計算だ。

しかし、1年前の2014年6月2日の価格は「166円」だったことを覚えているだろうか。この金額からすればまだまだ格安な水準。2014年9月までは「165円」以上で推移していたガソリン価格だが、それからたった半年あまりで約20 %も下落して「133.5円」になっている。いったい、なにがあったのだろうか。

当時、大きく報道されたのでご記憶の方も多いと思うが、原因の最たるものはガソリンの原料である原油価格の急落。代表的な価格指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インター・ミディエート)原油先物価格は、2014年7月末~2015年1月末までで、5割以上も下落した。

原油価格下落の原因はサウジ VS アメリカ!?

下落要因は複合的なものだが、根本にあるのは欧州や中国の景気減速による需要低下。しかし、OPEC(石油輸出国機構)は石油を減産せず、シェールガスによって原油生産量も増加している。結果として、価格が下落したというわけだ。

中には「シェールガスに奪われつつあるシェアをサウジアラビアが取り戻すため」や「アメリカのシェールガスがどの程度の価格低下に耐えられるかをサウジアラビアが試している」といった意見も。さらには、「クリミア併合に踏み切ったロシアの体力をそぐため(ロシアは石油・天然ガスの産油国)」と予測する声も聞かれた。

日本は原油の輸入国。原油価格の下落は、短期的には物価上昇率の低下によるデフレの懸念などあるが、本質的には経済にとってプラス要因が多い。また、円安局面において、輸入価格を抑えてくれる役割も果たしてくれる。

そして、我々、車好きにとって、最も恩恵が大きいのがガソリン代の下落……のはずなのだが。正直、原油価格の下落幅に比べると、ガソリン価格の下落はなんだか物足りない気がする。

▲2003年頃まで100円を下回っていたガソリン価格。国道沿いでは熾烈な価格競争もみられた ▲2003年頃まで100円を下回っていたガソリン価格。国道沿いでは熾烈な価格競争もみられた

といっても、ガソリンスタンドや石油会社が大儲けをしているわけではない。むしろ、石油元売りは、高値のときに仕入れた原油の在庫評価損が発生している。このタイムラグが、ガソリン価格が原油価格に比例して下がらなかった理由のひとつだ。

ガソリン価格の約4割は税金だった

そして、原油価格ほどガソリン価格が下がらないもうひとつの理由が、日本のガソリン価格の内訳にある。

ご存じのとおり、ガソリンには様々な税金がかかっており、細かく分けると、石油税やガソリン税、関税、環境税、消費税などがある。これらがガソリンに占める割合は、なんと価格の約4割にあたるといわれている。加えて、精製コストや流通コストがかかるので、ガソリン代のうち原油価格が占める割合は約4割程度に過ぎない。単純計算だが、160円のガソリン価格のうち影響を受けるのは4割の64円分という計算になる。

ということは、原油価格が5割下落すると、64円が32円になるので、ガソリン価格は160円から32円を差し引いた128円に下落。前述のタイムラグがあるので、最終的には130円前後といったところだろうか。そう考えると、冒頭、原油価格が5割以上も下落したときに、ガソリン価格が166円から133円にしか下落しなかったのも合点がいく。

昨年末にかけての原油価格下落から一転、原油価格は上向きつつあったが、6月5日にはOPECが再び減産見送りを決定した。今後は、また原油価格が下落する可能性も示唆されている。一方、円安による原油の輸入価格の上昇も考えられる。消費者の立場からすれば、このままお手頃な価格が続くと嬉しいのだが……。

text/笹林司