THE!対決

PART1 走行性能が優れているのはどっち?

Report/島崎七生人 Photo/小林岳夫
マツダ ビアンテ
マツダ ビアンテ 走り|THE!対決
↑背の高いミニバンながら乗員の頭がグラつくような揺れが起きにくく、タイヤから伝わるショックもマイルド。ボディのシッカリ感も高い
マツダ ビアンテ ドライビングポジション マツダ ビアンテ 2列目シート マツダ ビアンテ 3列目シート
日産 セレナ
日産 セレナ 走り|THE!対決
↑街中では、サスペンションはタイヤが硬く思えるようなタッチで、乗り心地はややゴツゴツとした印象。しかし、スピードを上げると、フラットな乗り心地になる
日産 セレナ ドライビングポジション 日産 セレナ 2列目シート 日産 セレナ 3列目シート

外見のインパクトに負けない走行性能のビアンテ

今回のテスト車両は、発売後間もないマツダビアンテと、昨年、ミニバンで販売台数第1位を記録した日産セレナの2台だ。

まずは、ビアンテ。とにかくインパクト絶大なフロントマスクのビアンテは、好き嫌いは別として、乗る前からある種の高揚感を喚起するスタイルであることは確か。前から眺めると“プジョーより大胆なのでは!?”とさえ思えるルックスは、最もポピュラーなクラスのミニバンとは思えない。

しかし、いざ走らせてみると、最新モデルらしい説得力をもっていた。特に良いのは、安定感のある穏やかな乗り心地が実現されている点。背の高いミニバンながら乗員の頭がグラつくような揺れが起きにくく、タイヤから伝わるショックもマイルド。またボディのシッカリ感が高いのも新型車ならでは。

さらによくよく観察してみると、車の不快な揺れを人に伝わらせないよう、座っているシートのクッション自体が効果的に振動を減衰してくれている。ちなみにテスト車両は20S(2WD・FF)グレードで、装着タイヤは205/60R16-92HのダンロップSPスポーツ230。

ハイト系ミニバンとしてはやや低めのポジションも、セダン的な安定感の演出に一役買っている。ステアリングも、過激な操作をしない限り滑らかなタッチを保つ。搭載エンジンは2Lで151ps/19.4kg-mのスペック。これに5速ATが組み合わされる。その実力は1640kgの車重に対し、まったく無理がなく十分…といった印象。エンジン自体ストレスなく回るし、5速ATで効率良く性能を引き出せているのも大きいのだろう。

フル乗車では、新しいビアンテにセレナから“乗り継いで”みると、「移動のツールとして走り(乗り味)はこちらが断然良い」「マツダっぽい乗り味」「ザラザラ感がない乗り心地」などの声が、ほぼ全員から出た。乗り心地に関しては「試乗終盤にかけては眠くなるほどの心地良い乗り味」の好評価も(そのスタッフは、直後、身をもってそれを証明してみせた=ほんとうに眠っていた)。

が、それは乗車位置により温度差も。2列目中央席は「大人なら6名乗車がやはり基本。中央席は車がロールすると、左右シートの段差で身体のバランスがとれなくなる」のシビアな評価が下った。「シートが硬すぎないのがいい」「フル乗車時の乗り味ならこちら」などの感想も。

古さは感じるものの、まずまずの走行性能を有するセレナ

一方のセレナだが、コチラは20Gグレードのやはり2WD(FF)モデル。意表を突いたビアンテから視線を移すと、フェイスリフト済みの現行型は、オーソドックスの極みといったルックスに感じる。エンブレムを隠してしまったら、どこのメーカーの車かわからないほどだが、この匿名性こそが売れ行きを上げるための王道なのか? 

乗り込むとセレナは、ポジションもハイト系ミニバンの標準的な印象。ただしウエストラインが低めの設定のため、実際のポジションほど高い場所に座らされた感じはしない。同時に相対的に天井が高く、せいせいとした気分ですらある。

走らせてみると、今回の対決車種が最新のビアンテということもあり、至る所が全体に少々古めかしい。とくにボディの剛性感は、ビアンテから乗り替えると旧世代の車に感じるのは事実。走行中、常にボディが震えているように感じる。

またサスペンションも、タイヤが硬く思えるようなタッチで、乗り心地はややゴツゴツとした印象。街中では特にそうだ。一方でスピードを上げると、まずまずフラットな乗り味になり、安定感は悪くない。

搭載エンジンは2Lで、スペックは137ps/20.4kg-m。これに組み合わされるのはCVTだ。実際の走りはまずまずの活発さで、2Lながら動力性能の不満は感じない。CVTがメリハリを利かせた制御なので、エンジン性能を躊躇なく引き出している…そんなところだ。試しに100km/h(エンジン回転は2000rpmほど)から、モードスイッチを「S」に切り替えると、エンジン回転が一気に4300rpmに高まり、突如、戦闘態勢に入ったかのようだった。

セレナのフル乗車では、CVTということもあり、さすがにやや強めにアクセルを踏み込むと、スピードよりエンジン回転の上昇を車内の全員が実感。乗り心地も「少人数時に対しフル乗車時も、あまり落ち着かない」。中央席は2、3列目とも「座り心地が良いとはいえない」。

また「3列目にリクライニング機構が付くのは、あればありがたい」とも。「常に走行ノイズを実感する」の指摘もあったが、走りに一家言もつスタッフから「路面のインフォメーションがわかって良い」「シートは硬めだが、むしろ好み」の声も。2列目用に専用のエアコン吹き出し口が用意されるのだが、「位置が近く、直接自分に当てると目が乾く」のコメントが上がった。ほかに「横の窓が広く開放感は絶大」との感想もあった。
今回のまとめ
スポーティ方向の走りにこだわるマツダらしく、ビアンテの走りは快適性と俊敏性を両立させた走りを実現している。まさに同社が掲げる“Zoom-Zoom”を体現しているミニバンである。新しいモデルだけに、セレナにつけた差は大きい。よって、ビアンテの勝ちとする。
今回のテスト車両
マツダ ビアンテ フロント|THE!対決
マツダ ビアンテ リア|THE!対決
マツダ ビアンテ インパネ|THE!対決
マツダ ビアンテ
テスト車両 20S
240.0万円
駆動方式 2WD
トランスミッション 5AT
全長×全幅×全高(mm) 4715×1770×1835
ホイールベース(mm) 2850
車両重量(kg) 1640
最小回転半径(m) 5.4
乗車定員(人) 8
エンジン種類 直4DOHC
総排気量(cc) 1998
最高出力
[kW(ps)/rpm]
111(151)/6200
最大トルク
[N・m(kg-m)/rpm]
190(19.4)/4500
使用燃料 無鉛レギュラー
燃料タンク容量 60L
10・15モード燃費
(km/L)
12.8
実用燃費 (km/L)
e燃費提供
8.5
タイヤサイズ 205/60R16
※実用燃費のデータはe燃費の提供です
日産 セレナ フロント|THE!対決
日産 セレナ リア|THE!対決
日産 セレナ インパネ|THE!対決
日産 セレナ
テスト車両 20G
243.6万円
駆動方式 2WD
トランスミッション CVT
全長×全幅×全高(mm) 4680×1695×1840
ホイールベース(mm) 2860
車両重量(kg) 1620
最小回転半径(m) 5.5
乗車定員(人) 8
エンジン種類 直4DOHC
総排気量(cc) 1997
最高出力
[kW(ps)/rpm]
101(137)/5200
最大トルク
[N・m(kg-m)/rpm]
200(20.4)/4400
使用燃料 無鉛レギュラー
燃料タンク容量 60L
10・15モード燃費
(km/L)
13.2
実用燃費 (km/L)
e燃費提供
9.4
タイヤサイズ 195/65R15
※実用燃費のデータはe燃費の提供です