▲いるだけで楽しいと感じる空間を作りたい。とくにガレージを自分の遊び場にしたい……。そんなGさんの思いは、建物内外を彩るアメリカンテイストに表れている。具体的にはアメリカのショップもイメージしたという趣味の空間は、福島さんとともにジックリと時間をかけながら作り上げてきたもの。外壁やシャッターなどの配色へのこだわりや、様々な資料をもとに研究した結果を、福島さんに正確に伝えることで理想的な家が出来上がった▲いるだけで楽しいと感じる空間を作りたい。とくにガレージを自分の遊び場にしたい……。そんなGさんの思いは、建物内外を彩るアメリカンテイストに表れている。具体的にはアメリカのショップもイメージしたという趣味の空間は、福島さんとともにジックリと時間をかけながら作り上げてきたもの。外壁やシャッターなどの配色へのこだわりや、様々な資料をもとに研究した結果を、福島さんに正確に伝えることで理想的な家が出来上がった

建築家との合作で実現した、夢のアメリカン・ガレージ

目指すG邸は、東京都足立区の住宅街にあった。首都高速のインターチェンジから至近で、交通の便はすこぶるよろしい。周辺は、古くからの邸と新しくモダンな家とが混在する街並みだが、そのなかでもG邸はひときわ強い存在感を放っていた。

ミントグリーンのアメリカンな建物だけでも目を引くのに、1階のガレージには赤白ツートーンのVW タイプ2と純白のフィアット 500、そして名車カワサキ W3が収まっていた。乗り物はドイツ、イタリア、日本という国籍だが、全体が醸し出す雰囲気は完全にアメリカン。それもそのはず、 「米軍のベースの上に、アメリカンハウスがあるイメージを実現したかったのです。色合いや雰囲気などは、所ジョージさんの世田谷ベースを参考にしました」と施主のGさん。

そんな夢のガレージハウスの設計を担当したのは、建築家の福島宏記さん。福島さんとGさんは、住宅プロデュース会社を通じて出会った。もともとGさんのガレージハウスに対するイメージが明確だったため、土地が決定してからはトントン拍子に話が進んだという。Gさんの希望は、

①車の出入りを考えて、縦置きではなく車2台が横に並ぶレイアウトに
②車やバイクをいじれる作業場、遊び場としてのスペースにしたい

というもの。お二人が出会ってから着工まで約5ヵ月と、福島さんが手掛ける物件としてはスピーディに運んだという。間取りに関しては、1階のガレージ部分はGさんの自由にする代わりに、2階と3階の居住スペースは奥様がコーディネイトするというように役割を分担。

「このやり方なら、双方不満は出ませんから」とGさん。Gさんがガレージに対して具体的なイメージを持っていたのと同様に、奥様もリビングルームやキッチンに関しては研究をしていたらしい。その結果、ご夫婦で妥協のない住みやすい空間が作り上げられたというわけだ。福島さんも、「お二人とも明確な意図をお持ちだったので、効率よく家造りを進めることができました」 と振り返る。

施主自身のアイデアを至る所にエッセンスとして注入

完成したガレージは、明るく開放的で清潔感に溢れている。そこに身を置くだけで、楽しくなるような空間だ。これは、横に広くスペースを取った場合に邪魔になりがちな柱を、できるだけ少なくしたことによる恩恵だ。木造でありながら車2台やバイク、自転車などを横に並べるために、耐力壁をはじめとした構造についても工夫が施されている。

またガレージ内部は、Gさんの趣味の空間ということもあって、工具類をはじめさまざまなグッズが整然と、しかも空間を演出するアイテムとして並べられている。倉庫前のフェンスは、アメリカのベースの雰囲気を醸し出すために、グレーのフェンスを探した。フェンスはすぐ見つかったが、住宅用ではないため納品されるまで時間がかかるなど苦労もあったようだ。もともとGさんは広告関連のクリエイターだけに、このようなガレージ内外の装飾一つとってもタダモノではないセンスが光っている。

しかし、竣工後6ヵ月を経た現在でも、Gさんにとってはまだ完成ではない。コツコツとガレージ内外の装飾を手掛け続けており、それはまだしばらく続くようだ。

VW タイプ2は、すでに14年間乗り続けている愛車。以前はこのタイプ2でどこでも出掛けていたため、「街中で車を押すことなんて日常的でした(笑)」とのこと。今では、可能な限りご自身でメンテナンスをしているというから、相当腕を上げていることだろう。もう1台のフィアット 500は、新築と同時期に購入したもので、主に奥様やご子息が使用。ガレージにジャストサイズであることと、デザインやボディカラーが、ガレージの雰囲気にマッチしていることがお気に入りの点。そして、すでに28年もの長きにわたり愛用しているW3は、少しずつレストアをしながら大切に乗り続けている。「自分でできることはすべてやる」という思いでいじり続けていたら、ついにはエンジンまで自分でオーバーホールするまでになったという。まさに、Gさんの器用さと愛車に対する思いが実を結んだのだろう。

そんな愛車たちとの生活を今まで以上に楽しむために、ガレージハウスを建てるに至ったことは必然ともいえるのだが、今後は、「ガレージの中に冷蔵庫やテーブルを置いて、週末には好きな音楽を聴きながらビールも飲める寛げる空間にしたい。また、サンドブラストキャビネットを備えて、本格的なメンテナンスもやりたい。まだまだこれからですね!」と、夢のガレージ完成に向けて、高いモチベーションは衰えていない。

▲一般の住宅用ではなく公園などで使用されているグレーのフェンスは、ベースの雰囲気がタップリ。この本格な標識もGさんがネットで探し当てた▲一般の住宅用ではなく公園などで使用されているグレーのフェンスは、ベースの雰囲気がタップリ。この本格な標識もGさんがネットで探し当てた
▲ガレージ脇にあるサイドシャッターを開放すると、内部の風通しがよくなるとともに作業効率もアップする▲ガレージ脇にあるサイドシャッターを開放すると、内部の風通しがよくなるとともに作業効率もアップする
▲バイクや自転車にも専用の出入り口を設けることで、乗り物はすべて、それぞれ単独で出入りが可能▲バイクや自転車にも専用の出入り口を設けることで、乗り物はすべて、それぞれ単独で出入りが可能
▲ツール台はGさんが自ら調達。壁には自作の木工台設計図や購入予定のパーツリストなどが貼られている ▲ツール台はGさんが自ら調達。壁には自作の木工台設計図や購入予定のパーツリストなどが貼られている
▲換気扇を設置後、建設部材を使用して排気ダクトを製作。内部は左右の手動切り替えフラップを装備するという本格的なもの▲換気扇を設置後、建設部材を使用して排気ダクトを製作。内部は左右の手動切り替えフラップを装備するという本格的なもの
▲フロアには、停車位置を示すマーカーがペイントされている。フロントアクスルを矢印に合わせると、ぴったりガレージに収まる▲フロアには、停車位置を示すマーカーがペイントされている。フロントアクスルを矢印に合わせると、ぴったりガレージに収まる
▲蛍光灯の取り付け位置を整えることで、ガレージ内部に統一感を与えている▲蛍光灯の取り付け位置を整えることで、ガレージ内部に統一感を与えている
▲機能優先のガレージとは異なり、リビングルームは柔らかな自然光が注ぐ快適なスペースとしている▲機能優先のガレージとは異なり、リビングルームは柔らかな自然光が注ぐ快適なスペースとしている

【趣味を最優先したオモチャの家 設計・監理 カスケード アンド パートナーズ一級建築士事務所】
■「使いやすい大きな空間」をテーマに、例えばガレージ内に作業スペースを確保する際でも単に間取りだけを考えるのではなく、作業台を設置することがわかったらその存在を計算に入れて小窓の位置を決めるなど、Gさんの要望をうまく組み立てることを意識したという。また、建物横の壁にサイドシャッターを設けることで作業スペースが効率的に広げられるなど、車好きの福島さんらしいアレンジが随所に活かされたガレージとなっている
■主要用途:専用住宅
■構造:木造
■敷地面積:90.37平米
■建築面積:56.25平米
■延床面積:123.59平米
■住宅プロデュース:ザウス株式会社
■設計・監理:カスケード アンド パートナーズ一級建築士事務所
■施工:株式会社ラムズカンパニー

text/菊谷聡
photo/茂呂幸正


※カーセンサーEDGE 2014年8月号(2014年6月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています