ホンダ N-VAN▲使い勝手の良い道具として人気の高まる軽バン。特にレジャーユース層から支持を集めているのがN-VAN

現行の軽バンは主に3モデル

軽ワンボックスタイプの商用車、いわゆる軽バンが今人気を博しています。

その理由は、広い荷室と安い維持費。仕事の相棒からレジャーユースまで、幅広いユーザーに支持されている人気ジャンルとなっているのです。

過去には各メーカーがそれぞれオリジナルの車種をリリースしていましたが、現行型のラインナップは大きく分けて下記の3車種です。

・ダイハツ ハイゼットカーゴ
・スズキ エブリイ
・ホンダ N-VAN

この他にも各メーカーで、ハイゼットカーゴとエブリイのOEM車が販売されています。

そのハイゼットカーゴとエブリイはエンジンをフロントシートの下にレイアウトし、後輪を駆動させるFRの設計を採用しています。

一方のN-VANはフロントにエンジンを搭載し、前輪を駆動させるFFとなっているのが最も大きな違いです(4WDは全モデルに設定有り)。

まずは3車種の特徴を紹介しましょう。

ダイハツ ハイゼットカーゴ(現行型)の特徴

ダイハツ ハイゼットカーゴ▲ロングセラーモデルとなっているハイゼットカーゴ

ダイハツ ハイゼットカーゴは3車種の中で最も長い歴史をもつモデルです。

現行型は2004年に登場、2017年にビッグマイナーチェンジを果たし、現在のスタイルとなりました。このタイミングで先進安全装備を拡充されています。

さらに2018年12月の改良では、同クラス初となるMT車にも衝突被害軽減ブレーキが装着され、先進安全装備が充実しています。

デビューから15年以上経過していることもあり、3モデルの中で最も中古車流通量が多く、その平均価格も60万円を下回るなど、選びやすさに分があるモデルでもあります。

ハイゼットはOEMとして、トヨタへはピクシスバンとして、スバルにはサンバーとして供給されています。

基本設計はハイゼットカーゴと共通のため、中古車を狙う際は合わせてチェックするといいでしょう。
 

ダイハツ ハイゼットカーゴ▲荷室長はエブリイよりわずかに短いものの2名乗車時でも1860mmある

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スズキ エブリイ(現行型)の特徴

スズキ エブリイ▲2015年に登場したスズキ エブリイ(現行型)。サイズ感はハイゼットカーゴとほぼ同じ

スズキ エブリイは、2015年に現行モデルが登場と、ハイゼットよりも新しいモデルです。

荷室面積がハイゼットより若干広くなっており、少しでも多くの荷物を積みたいという人にオススメ。

駆動方式はハイゼットと同じくFRですが、一部グレードには2ペダルMTの5速AGSが用意されています。

このAGSというのはMT用のミッションを使用し、変速やクラッチ操作を電動油圧式アクチュエーターで自動操作するもの。

そのため、通常のAT車のようにアクセルを踏みっぱなしで走ろうとするとギクシャクしてしまうので、変速時にアクセルを少し戻すといったMT車のようなアクセルワークをすると気持ち良く楽しく走れます。

このようなAGS特有のクセはあるものの、ATと比較して最大2.4km/L(JC08モード・「660 PA ハイルーフ」で比較)も燃費が良いという長所があります。

運送業などの利用で走行距離が長くなる、というユーザーにとってAGSは外せない選択肢になるでしょう。

また、登場時から先進安全装備を備えており(一部グレードとMT車を除く)、中古車市場に流通する多くの車両が衝突被害軽減ブレーキを備えている点も魅力です。

エブリイもOEMで、日産にはNV100クリッパー、マツダにはスクラムバン、三菱にはミニキャブバンとして供給されています。

エブリイを検討する際は、合わせてチェックをしてみましょう。
 

スズキ エブリイ▲2名乗車時の荷室長が1910mmと3モデルの中で最も長いエブリイ

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ホンダ N-VAN(現行型)の特徴

ホンダ N-VAN▲フロントにエンジンを積むため、ややフロントノーズが長いN-VAN

そして3モデルの中で、唯一FFレイアウトを採用するのがホンダ N-VANです。

その名のとおりホンダのNシリーズの一員であり、N-BOXがベースとなっています。

そのため、着座位置や運転感覚はN-BOXと同等。

さらに、エンジンが室外にあることで静粛性を向上させており、快適な乗り心地も含め、乗用車感覚で乗れるという点が最大の魅力です。

一方、そのレイアウトから、荷室サイズはハイゼットカーゴやエブリイに比べて小さく、少しでも多くの荷物を積みたいと考えている人には不向きといえるでしょう。

また、N-VANは3モデルの中で唯一、OEM供給がされていません。そのため、中古車流通台数が500台以下と少なく、条件によっては選択肢が限られてきます。

さらに、乗用車ベースのN-BOXがベースということもあってか、ハイゼットカーゴやエブリイより新車時価格が20万円程度高く設定されており、中古車平均価格は約130万円と他の軽バンに比べ高くなっています。

安全装備面では衝突軽減ブレーキをはじめとした、10の先進機能が備わる「ホンダセンシング」を標準装備。

紹介した3車種の中で唯一、先行車の追従走行ができるアダプティブクルーズコントロールが用意されています。
 

ホンダ N-VAN▲荷室長は1585mmと最も短いN-VAN。長物を積む場合は助手席を倒すことで対応できる

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それぞれの車種を狙うならどのあたりがオススメ?

軽バンを中古車で購入する際、オススメの選択肢は大きく分けて2つ。

1つは価格的にお得感のある新車登録から3~5年経過した、走行距離5万km程度の比較的程度の良い物件です。

軽バンは商用として使われることから、年間走行距離が1万km程度に収まる物件をオススメします。

同じ年式でも職場への移動で使われていたものと、荷物を配送するために使われていたものとでは大きく走行距離が異なり、コンディションも変わってくるためです。

新車時登録から3~5年で走行距離が5万km以下を中心に、予算と相談しつつ1年1万kmを目安に距離の少ない物件からチェックしていくことをオススメします。

そしてもうひとつは、安さはないですがコンディションの良い登録済未使用車のような物件です。

軽バンは需要が安定していることから、中古車としてのリセールバリューが比較的高いジャンルの車です。

そのため、購入後それほど走行距離が延びる使い方をする予定がない、または早めに手放す可能性があるという人は、高く売却できる可能性の高い登録済未使用車を選ぶというのがオススメです。

それでは以下、3モデルの中古車相場の状況を見ていきましょう。

■ダイハツ ハイゼットカーゴ(現行型)

ハイゼットカーゴとエブリイはどちらも1500台以上の流通量があり、OEMモデルも含めれば2000台を超える勢い。それだけに中古車も選び放題と言えるでしょう。

ハイゼットカーゴは流通している中古車のうち約40%にあたる750台程度が、走行距離5万km以下の物件です。

多くはノンターボ(過給機なし)のモデルですが、総額50万円台から見つけることができます。
 

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ダイハツ ハイゼットカーゴ(現行型) × 走行距離5万km以下 × 2015年以降 × 価格昇順 × 全国
 

ハイゼットカーゴの登録済未使用車は全体の約5%、80台ほどしかありません。

納車を急ぎたい、新車より少しでもお得に手に入れたいという人は、グレードやボディカラーなど条件に合うものがあれば早めのアクションが吉です。
 

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ダイハツ ハイゼットカーゴ(現行型) × 登録(届出)済未使用車 × 全国
 

■スズキ エブリイ(現行型)

エブリイはハイゼットカーゴと比べ、走行距離5万km以下の物件が1300台程度と潤沢。

ただし、ハイゼットカーゴより高年式の物件が多いため、予算70万円はみておきたいところです。

そうすれば燃費性能に優れる「AGS」も選択肢に入ってきます。
 

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スズキ エブリイ(現行型) × 走行距離5万km以下 × 2015年以降 × 価格昇順 × 全国
 

登録済未使用車は走行距離5万kmに絞っても、200台強の流通台数があり選択肢は豊富。

最安値帯は総額90万~110万円で、荷室容量の多いハイルーフを中心に探すことができます。
 

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スズキ エブリイ(現行型) × 登録(届出)済未使用車 × 全国

■N-VAN

N-VANは2018年7月デビューのため、流通台数は450台ほどと多くはありませんが、そのほとんどが走行距離5万km以下の物件です。

価格帯は新車時価格が高いということもあり、最安値帯でも100万~120万円という状況となっています。

オススメはレジャーユースを意識し、スタイリッシュさを追求した「+スタイル系」のグレード。7色のカラーバリエーションが用意されています。
 

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ホンダ N-VAN(現行型) × 「+スタイル系」グレード × 全国
 

登録済未使用車は全体の20%ほどを占めていますが、白やシルバー系の色が多くなっています。

もし、それ以外にお目当ての色があれば、早めに動いた方がよさそうです。
 

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ホンダ N-VAN(現行型) × 登録(届出)済未使用車 × 全国

軽バンを買う時に注意したいポイント

仕事のパートナーとして使われることが多い軽バンだけに、走行距離や修復歴の有無以外にも見ておきたいところがあります。

多くの軽バンモデルを販売する、カーバンクライト八王子のスーパーバイザー 森戸さんに話を聞きました。
 

小鮒康一(こぶなこういち)

聞いた人

自動車ライター 小鮒康一(フナタン)

スキマ産業系自動車ライター。元大手自動車関連企業から急転直下でフリーランスライターに。中古車販売店勤務経験もあり、実用車からマニアックな車両まで広く浅く網羅。プライベートはマイナー旧車道一直線かと思ったら、いきなり電気自動車を買ってしまう暴挙に出る。愛車は日産 リーフ、初代パルサー、NAロードスター。

CAR BANK RIGHT 八王子フィールド店

教えてくれた人

CAR BANK RIGHT 八王子フィールド店 スーパーバイザー 森戸 迅さん

軽自動車をメインに扱うCAR BANK RIGHT 八王子フィールド店でスパーバイザーを務める「軽のプロ」。特に最近引き合いが増えているという軽バンに精通している。

小鮒
小鮒

まずチェックするはどこでしょうか?

森戸さん
森戸さん

やはり使用頻度の高い荷室の状態です。例えば、建築系の職人さんオーナーが使っていた物件は、荷室の両サイドや天井に棚などを設置していたケースもあり、その固定のためにビス穴が開けられていることがあります。

小鮒
小鮒

なるほど。穴は修復できないので気になる人は避けるべきでしょうね。キズなどの他にチェックしておくべきところはありますか?

軽バン▲荷室スペースは床だけでなく天井部分のチェックも欠かさずに。穴が開いていたり、カビが生えて黒っぽくなっていないか確認する
森戸さん
森戸さん

塗装系の仕事で使われていた物件は、塗料の付着があるケースも見受けられます。これは荷室に限りませんが。塗料のにおいが染みついていることもあるので、においのチェックもしてみてください。また、お弁当屋さんなど食品系の運搬に使われていた物件は天井にカビが発生していることもあるので、室内は上にも目を向けてみてください。

軽バン▲付着してから時間が経過してしまった塗料は落ちにくい。気になる人はフロアマットの下などもチェックした方がよい
小鮒
小鮒

荷物が多いレジャーユースや、仕事で脚立などの長物をルーフ部分に積まれていた物件も多そうですね。

森戸さん
森戸さん

ルーフにキャリアを搭載していた物件であれば、その載せ降ろしで付いたキズやヘコミがあったり、キャリアの足の跡が残っていたりする場合もあるので、そのあたりも要チェックですね。

軽バン▲屋根のサイドや後方部分のキズは気がつきにくく見落としがち
小鮒
小鮒

最近は配送系の仕事をするため、新たに購入される方が多いようですが。

森戸さん
森戸さん

軽貨物の配送ニーズの増加からか、そういった用途で購入される方が多くいます。配送系で使われていた中古車も多く出回っています。そういった物件は荷物の載せ降ろしの回数が多いため、ドアの開閉の頻度も高くなります。スライドドアがスムーズに異音などがせず動くかは、動作確認をしてほしいと思います。

軽バン▲スライドドアは開閉してレール部分の破損がないかチェック
小鮒
小鮒

機関系のメンテナンス面はどうでしょう。

森戸さん
森戸さん

一般的に「法人ワンオーナー」と聞くと、手厚いメンテナンスがされてきたというイメージがありますが、仕事で日常的に使われているため、整備よりも仕事を優先してしまい、オイル交換などがおろそかになっているケースも見受けられます。

小鮒
小鮒

意外ですね。

森戸さん
森戸さん

記録簿のチェックや、エンジンのオイル注入口をチェックして、汚れやスラッジがたまっていないかの確認をしておきましょう。小排気量の軽自動車はエンジンが高回転で使われることが多いので、購入後は5000kmごとにオイル交換をしていくことをオススメします。

軽バン▲オイルキャップを開けてオイルの粘度が高ければ整備を怠っていた可能性が高い
文/小鮒康一 写真/スズキ、ダイハツ、ホンダ、三浦孝明
森戸 迅さん

取材協力

CAR BANK RIGHT 八王子フィールド店

日本最大級のロープライスカーの専門店。国産車、ワンボックス、ミニバン、コンパクトカー、セダン、ステーションワゴン、軽自動車、軽トールワゴン、箱バン、軽バン、軽トラックなど幅広く取扱う。

住所:東京都八王子市小宮町942
電話:042-649-3744