•2014年10月27~31日に開催される「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)会議」に向けて作成した気候変動対策レポートの要約
•ボッシュのデナーCEO:
「未開拓のエネルギー節約の可能性を最大限活用することが必要」
•例:きわめて精密な穿孔技術でガソリンを節約


ボッシュ取締役会会長のフォルクマル・デナー



気候変動に関する政府間パネル(IPCC)では、エネルギー効率の向上をもたらす先端技術により、2050年までにエネルギー消費を安定化し、今よりも低減することも不可能ではないと考えています。ボッシュは現時点ですでに、そのための技術ソリューションを数多く提供しています。

シュトゥットガルト:地球温暖化が進んでおり、その最大の要因は、人類の営みに伴う温室効果ガスの排出とされています。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、国際的に重要な最新の評価報告書の中でこのように述べた上で、地球温暖化の進行に立ち向かうために、温室効果ガスの発生を減らす必要があることを提言しています。
そのためのひとつの方法が、エネルギー効率の改善です。ボッシュ取締役会会長のフォルクマル・デナーはこう述べます。「IPCCの知見は、エネルギーの効率的な利用を後押しする新しいソリューションを見つけるという、重要な課題を全世界の人々に投げかけています。この課題に適切に対処できれば、私たちは必ずそれを強みにできるはずですし、地球環境を保護する製品を提供することで気候変動の課題に対処し、快適性の向上をもたらす革新的な進展も生まれます。そしてそれは、ユーザーにとってもコストダウンというメリットにつながります」

政府首脳に行動を促す勧告を提出

2014年10月27日から31日にかけて、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)はコペンハーゲンで会合を開き、各国政府および州政府の首脳に行動を起こすことを求める中身の濃い提言をまとめることになっています。この提言は2014年11月2日に、パン・ギムン国連事務総長立ち会いの場で公表される予定です。続く2014年12月初旬には、国連気候変動枠組条約締約国会議がペルーの首都リマで開かれ、関係国政府首脳は気候変動にどう対処していくかを協議します。
「世界的に見ても、エネルギー効率の改善に向けた開発は十分なスピードで進展しているとは言えません。温暖化による気温の上昇幅を2℃に制限するという目標を達成するためには、エネルギー効率改善の活動に対する私たちの優先度をさらにあげる必要があります」と、デナーは強調しました。大学で物理学を専攻したデナーは、この分野でどのような研究が行われ、どのような成果が上がっているのかによく通じています。

「予防的アクションの勧め」

私たちの今日の行動が未来にどう影響するかを、人々が十分に理解していないことをデナーはもどかしく感じています。「将来への持続性をもたらす行動は、原因と結果の関係を正しく理解することから始まります。なかでも、人々の営みが引き起こす気候変動は重要な例です。私たちは、工場の生産から、個人のクルマの使用にいたるあらゆる行動に伴うエネルギー消費が明日の地球環境に及ぼす影響を、たとえそれが地球の裏側に与える影響であったとしても、正しく理解する必要があります。その透明性が確立されれば、私たちは正しい選択をすることができます。個人であれば、燃費性能の優れたクルマを買う、企業であればエネルギー効率の優れた生産技術や省資源の製品に投資するなどです。何より重要なのは、仮にその効果を十全に把握できなかったとしても、自分たちの行動が引き起こすマイナスの影響が最小限に抑えられるような選択肢を選ぶ努力をすることです。気候変動に関しても、そうした予防的アクションに徹することが大切であることを肝に銘じる必要があります」

ボッシュは地球温暖化対策として、さまざまな革新的ソリューションを用意しています。工場の暖房には、生産プロセスで発生した廃熱を利用しているほか、ガソリン直噴システムは15%の燃料向上に寄与します。また、ボッシュは世界で最もエネルギー効率の優れた衣類乾燥機を提供しています。その効率は、A+++の最高評価を得るのに必要な基準値を10%も上回っています。「未開拓の省エネの余地はたくさんありますが、現時点ではほとんど手つかずと言ってもよいかもしれません」デナーはこのように述べ、さらにこう強調しました。「例えば商業ビルの空調ですが、制御方法を改善すれば、少なくとも30%の省エネを達成できると同時に、快適性も向上します。しかも、このような投資は多くの場合、2~3年で償却できます」

車両のコースティング機能

ボッシュのスタート/ストップ コースティングは、車両が惰性だけで速度を保てる状況、例えば緩やかな下り坂でエンジンを停止する機能で、ドライバーがアクセル ペダルやブレーキ ペダルに触れると、エンジンは直ちに再始動する仕組みとなっています。ボッシュが実施したテストでは、走行時間の約30%で内燃機関を働かせる必要がないことが証明されました。これはつまり、車両は全走行距離の約3分の1をコースティングで対応できるということを意味しています。

廃熱を発電に利用

「世界中で、そしてドイツでも、大量のエネルギーが廃熱として棄てられています。これは不経済なだけでなく、環境にとって大変有害です。こうした廃熱を熱交換器で回収し、クローズド サイクルを流れる熱媒に伝えて活用する方が、はるかに賢明だと言えるでしょう。たとえ廃熱の温度が低くても、発電タービンを回せるだけの高圧蒸気を発生させる方法もあります」と、デナーは述べます。そのための有機ランキンサイクル(ORC)は、ボッシュの製品ポートフォリオの中にあるエネルギー効率の向上に寄与するソリューションのほんの1例にすぎません。

私たちのエネルギーの未来を探る

ボッシュは、工業生産で消費されるエネルギー量のさらなる低減を目標に掲げ、ダルムシュタット工科大学が主導する「学際的技術と応用研究のための省エネ工場」プロジェクトに、産業パートナー兼研究パートナーとして参加しています。このプロジェクトのメンバーは、エネルギー消費量を最大で40%削減できると考えています。ボッシュはまた、波力エネルギーを発電に利用する方策を探っています。世界中の海岸地帯で広く利用できる持続性のある波力発電技術の確立を目指し、企業4社と2大学が参加する研究ネットワークも発足しました。

この上なく精密な穿孔技術でガソリンを節約

ボッシュは、超短パルスレーザーを使ってきわめて精度の高い穿孔加工を行う新技術を開発し、工業規模で利用できるまで高めました。この方法を使って、例えばガソリン インジェクターのノズルに精密加工を施して、燃焼室内の燃料分布を最適化し、ガソリン直噴システム搭載車の燃費を最高15%向上させることができます。このアイデアを生み出したボッシュとパートナーの合同研究チームは、2013年にドイツ連邦大統領から『ドイツ未来賞』を授与されました。「環境を保護し、同時に持続可能性のあるビジネスを展開すること、それが私たちの企業戦略の基本モットーです。そのため、ボッシュは研究開発資金のほぼ半分を環境にやさしい製品の開発に投じています」とデナーは述べました。

ボッシュの公約:2020年までにCO2排出量を20%削減

ボッシュは、自社の付加価値創出活動に由来するCO2排出量を、2020年までに2007年比で20%削減するという自主目標を打ち出しています。その経過は順調で、2013年のグループのCO2排出量は2007年水準を16%下回るレベルにまで減少しました。

これは、エネルギー効率の優れた新技術を積極的に採用した結果です。例えばボッシュのニュルンベルク工場では、電動機の廃熱の利用により、暖房用ガスと石油の使用の大部分を削減することができ、CO2排出量を年間1,800トン減らすことに成功しました。また、南仏のロデー工場では、ウッドチップ焚きバイオマス ボイラーを導入し、年間600トンのCO2排出量の低減を実現しました。シュトゥットガルトに近いシュヴィーバーディンゲンでも、コージェネ設備の導入により、CO2排出量を年間1,600トン低減しました。デナーはこう強調します。「これらはすべて、ボッシュが気候変動防止を優先目標として掲げており、それを本当の意味で実践していることの表れでもあります」