VW タイプⅡが収められた、アメリカの西海岸を思わせる海沿いのガレージハウス【EDGE HOUSE】
2020/11/27
▲家の手前に車を止められる広いスペースがあるので、休日には仕事やサーフィンの仲間を呼んで、南側(写真の裏手)にある庭や、玄関脇にあるアトリウム(中庭)でバーベキューなどを楽しんでいるという照明やドアノブなど細部に至るまで、パームスプリングスに!
ロックを愛し、アメリカ西海岸を象徴するワーゲンバス(フォルクスワーゲン・タイプⅡ)を所有するOさんが、ミッドセンチュリー時代を代表する住宅、アイクラーホーム(ジョセフ・アイクラーが手がけた住宅)のようなガレージハウスを建てたいと思うようになるのは至極当然の話。
仕事でアメリカを訪れた際には、アイクラーホームを見るためにカリフォルニア州パームスプリングスまで足を延ばしたこともある。次第にアイクラーホームのような家を、海外出張時に便利な成田空港近くに建てることを考えるようになった。
しかし、日本でアメリカの西海岸にあるような家を建てるのは簡単ではないことはわかっていた。「以前、自宅の改修をした際に、なかなかこちらの意図が伝わらなかった」苦い経験があったからだ。
タイルの目地部分は少し空けたいのに日本の様式美として隙間なく敷き詰められた。シンプルにしたいので素塗りで、とお願いした壁は、コテ跡をあえて残す日本伝統の左官工事が行われた……。
アイクラーホームどころか海外の住宅様式を知らない職人も多いのだ。そんな時に目に入ったのが、雑誌に載っていた建築空間創作集団coloursの代表、奥野雅也さんが手がけた建物。「そう、これこれ!」とすぐ連絡をとった。
奥野さんは学生時代にカナダやアメリカをヒッチハイクした経験があり、リアルなアメリカのカルチャーをよく知っていた。カリフォルニアに建つ、アイクラーホームも見たことがある。
だからOさんは奥野さんと話をして、また施工した住宅を実際に見せてもらって「この人は、アメリカ西海岸風の家ではなく、本物を知っている人」だと感じたという。
▲外へ大きく張り出した梁がアイクラーホームの特徴の一つ。愛車のワーゲンバスは、ブラジル生産の最終型で、1.6Lを積む水冷式
▲玄関先を照らす照明はアメリカ製。ドアノブの根本の大きな円盤は、西海岸住宅の特徴の一つで、オリジナルで制作されている
▲ワーゲンバスの内装は、ミッドセンチュリーの家具でお馴染みのアレキサンダー・ジラルドやイームズの生地に張り替えられている
▲木製のスライダーもアメリカ製。特徴のあるフォントの「1911」という数字の飾りも、奥野さんがアメリカで見つけてきた軒の長い薄い屋根の平屋、というOさんが思い描く住宅の特徴的な外観はもちろんだが、内装も徹底的にこだわった。
例えばリビングの内壁は、手間はかかるが同じ幅の板を、隙間を空けながらきっちりと打ち付けている。しかもこの内壁は、外壁材と色や幅、ピッチが揃えられている。そのためガラスを隔てて外壁と繋がる玄関先のアトリウム(中庭)は、まるで同じ壁面が外へ繋がっているように見える。
テレビの裏のラワン材は、わざわざ市場まで出掛け、300枚ほどの中から色やカタチ、品質を確認して18枚を厳選。それをわずかな隙間を設けて張る「目透かし張り」で仕上げた。
一年中乾燥しているカリフォルニアと違い、四季があり湿気と雨の多い日本。そのため「見えない部分でたくさん工夫している」と奥野さんはいう。
こうして昨年竣工した、ビーチまで歩けるガレージハウス。そこにOさんはワーゲンバスを置いた。
別の場所に66年式のビートルと87年式のゴルフも保管しているという。「いずれはその2台も持ってこようと思って」、すでに家の裏手にはガレージ棟を建てるスペースや、ガレージ用の木製の門も設けられている。
ここを建ててから、何十年かぶりにサーフィンを始めるようにもなった。砂漠にあるパームスプリングスのような乾いた風ではなく、心地よい潮風がビーチへと誘うガレージハウスで、新しい日常が始まった。
▲ガレージ奥にテーブルと収納が用意されている。白く塗装された内壁は、釘やビスが打てるので棚などを好きなところに備えられる
▲玄関には西海岸の住宅では必須のアトリウム(ガラスで覆われた中庭)を用意。ただし雨の多い日本に合わせ、半分だけ屋根がある
▲イームズやジョージ・ネルソンなどミッドセンチュリー時代の名作家具が並ぶ。奥のダイニングチェアはビンテージのイームズだ
▲海まで歩いて行けるので、庭にはサーフィン後のためのシャワーが備えられている。低い方は一緒に海で遊ぶ2匹の愛犬用だ■所在地:千葉県
■主要用途:専用住宅
■構造:木造軸組構法
■敷地面積:1405 ㎡
■建築面積:311.72 ㎡
■延床面積:167.69 ㎡
■設計・監理:建築空間創作集団colours
■TEL:0475-34-7100
※カーセンサーEDGE 2021年1月号(2020年11月27日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています
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