▲今調べてみたら、一番安いやつでも新車価格1178万円となる最新型のポルシェ911。……いったい全体どういう人がコレをサクッと買えるのか、嫌味でも僻みでもなく、純粋に知りたいです ▲今調べてみたら、一番安いやつでも新車価格1178万円となる最新型のポルシェ911。……いったい全体どういう人がコレをサクッと買えるのか、嫌味でも僻みでもなく、純粋に知りたいです

総務省発表の「平均貯蓄額」と街の風景が全然合ってない?

今年5月にランチア デルタHFインテグラーレという車を売却してからというもの、20年ぶりに車のない生活を続けていた。「車が欲しい!」という気持ちがどうにも盛り上がらなかったのだ。しかし、ここへきてついにムラムラと車欲が復活したため、再び自家用車を持つことを決意し、各方面で宣言した。

しかし「車が欲しい!」と宣言すれば誰かが無償でわたしに車を提供してくれるはずもなく、自分の金を出して自分の車を買うほかない。で、「自分のお金」にはどうしたって上限というものがある。つまり、かなり当たり前の話で恐縮だが「欲しい車=買える車」ではないということだ。

ということで、わたしはいくらの車を買うべきなのだろうか。

己のお財布事情を天下の往来でさらけ出すつもりもないが、まぁ超ざっくり言ってしまえば、家中の貯金箱という貯金箱を破壊しつくせば新車のポルシェ911も買えないことはない。いや、新車の911などあまりに縁遠いためその正確な価格を実は知らないのだが、買えるだろう。たぶん。しかし買ったとしても、その後に来るのは無一文の生活で、無一文の中年男がピカピカのポルシェ911を野っ原の駐車場に停め、貧乏長屋へと帰宅する毎日である。冗談だとしても、まったく笑えない。これはダメだ。

じゃあ500万円ぐらいのBMWとかならいいのか? その場合は購入後も幸いにして無一文にはならない。しかし、ストック&フローの多くを失った中年男がピカピカのBMWを野っ原の駐車場に停め、貧乏長屋へと帰宅するという構図自体は、ポルシェの場合とさほど変わらない。そもそも、大したストックもフローもない人間が500万円の車を買うというのはどうなのか? 我ながら甚だ疑問である。

「じゃ、さらに半額の250万円で」という意見もあろうが、その場合はどうにも「中途半端感」のようなモノがつきまとう。新車にしろ中古車にしろ、250万円というのはどうにも半端だ(※個人の意見です)。「どうせならもっといいヤツが欲しい」という思いが去来するのと同時に、「とはいえ250万円は大金。もっとこう、節約とかした方がいいんじゃないか。いっそ電車にする、とか」というセコい保身の心も生まれてしまうのだ。

そんなこんなで逡巡している毎日なのだが、わたしの逡巡など知ったことかという体で、世の中では(特に東京では)500万円から1000万円ほどの車が数多く走り回っている。まぁ1000万円級はちょっと特殊枠に入れるとしても、500万円級の車は本当に多い。メルセデスのCクラスにアウディA4、ビーエム3シリーズなどの、それぞれの最新型が、一昔前のカローラのような勢いで使われているのだ。

▲東京の街は本当に輸入車が多い。それも、高かったり新しかったりするものが!(写真はイメージです) ▲東京の街は本当に輸入車が多い。それも、高かったり新しかったりするものが!(写真はイメージです)

……皆さん、どこにそんなお金をお持ちなのか? わたしの感覚で言うと、500万円の車を買うなら5000万円ほどの現預金を持っていたいところなのだが、皆さん本当にそんなお金を持ってらっしゃるのか? 総務省が今年5月に発表したデータによれば、日本の2人以上世帯(勤労者世帯)の平均貯蓄額は1244万円で、中央値は735万円。……ということは、約半数の勤労者世帯は735万円以下の現預金しか持っていないということになるはずだが、それでビーエムの新車とか、買っちゃって大丈夫なのだろうか?

「ローンがあるじゃないか。残価設定ローンだってあるし」

そういった指摘もあるだろう。なるほど確かに、過日某輸入車の正規ディーラーを取材した際も「半数ぐらいのお客様は残価設定ローンをお選びになります」と言っていた。なるほどなるほど。しかし、明日をも知れぬ小規模自営業者であるわたしとしては、たとえ数万円/月であっても「エクストラな固定費が数年にわたり発生し続ける」という状況は避けたい。そして「明日をも知れぬ」というのは、最近では立派な会社に正社員としてお勤めのあなたにも割と当てはまる、という話を聞いているのだが、実際はどうなのだろうか。

そんなこんなをツラツラと考えていると、結局今回も、いつもの持論に落ち着きそうな自分を感じている。すなわち、「車買うなら100万円か、せいぜい150万円ってとこだろう」という持論だ。

▲実は筆者が密かに狙っている初代ボクスターの2.7L版。総額150万円ほどでイケる計算です ▲実は筆者が密かに狙っている初代ボクスターの2.7L版。総額150万円ほどでイケる計算です
▲クーペだが後席が広いため、家族使いも全然OKなアルファロメオ アルファGT。これも余裕で150万円以下 ▲クーペだが後席が広いため、家族使いも全然OKなアルファロメオ アルファGT。これも余裕で150万円以下

100万円か150万円ぐらいであれば、わたしのような一般人のストックやフローに与える影響は少ない。ゼロではないが、少ない。自分のお財布に大きな影響を与える何かが勃発しても(そしてそれは結構頻繁に起こったりするものだ)、柔軟に対応することができる。で、これが最も重要なことかもしれないが、「100万円か150万円ぐらいでも結構ステキな車を選ぶことができる」という事実がある。もちろん、車というのは上を見ればキリがないし、そういったモデルを追求してみたいという気持ちが、わたしにないわけではない。しかしツラツラと述べてきた各種リスク要因を勘案すると、個人的な解はどうしても「車買うなら100万円か、せいぜい150万円」になるのだ。

ということで今回のわたしからのオススメは、「100万円か、せいぜい150万円でイケるステキな輸入車」だ。

text/伊達軍曹