オープンモデル▲20年前の2005年に発行されたEDGE誌創刊号にあった記事。現在でも人気が高い国産オープンモデルが多数紹介されていた……

車好きがよくつぶやく「あの時買っときゃ…」というボヤき。「あの時買っときゃ…」にどんなモデルがあったかを確認するために、今年20周年を迎えたEDGE誌の創刊号を開いてみました。

絶版国産スポーツカーが軒並み相場高騰していますが、1980年代後半から1990年代前半に生まれたオープンモデルも例外ではありません。

今のいままで手に入れるチャンスを逃しまくってきた方、かつてあっけなく乗り替えてしまった方、一緒に後悔を楽しみましょう!
 

 

ライトウェイトモデルが盛り上がった1990年代

ビート▲まだ景気がよかったこの時代、今思うと人々に気軽にオープンモデルを楽しむ心の余裕があったように感じます

空前の好景気を迎え、日本中が浮かれた1980年代後半~1990年代前半。この時期には潤沢な予算をかけて、様々なニューモデルが開発されました。レースで勝つことを至上命題に掲げた日産が、持てる最新技術を惜しみなく投入したR32型スカイラインGT-Rや、世界トップレベルの静粛性が与えられたラグジュアリーセダンであるトヨタ セルシオなど、歴史的名車が登場したのは1989年でした。
 

スカイラインGT-R▲レースで勝つために最新技術が惜しみなく投入されたR32型スカイラインGT-R。グループAツーリングカーレースではデビュー以来4年間で29戦全勝という驚異的な強さを見せた
セルシオ▲北米で立ち上がったレクサスブランドのフラッグシップモデルとして発売されたLS。日本ではセルシオの名称でクラウンの上位モデルとして発売された

そして、この時期はライトウェイトな2シーターオープンモデルが盛り上がった時期でもあります。

もちろんこの時期より以前にもオープンモデルは存在していましたが、多くの人から注目を集める存在ではありませんでした。それがこの時期に突然活気を帯びたのは、この後に紹介する歴史的名車が登場したことがきっかけ。そして、好景気により人々の気持ちが前向き・上向きになっていたことから、オープンモデルという遊び心にあふれた車を受け入れる土壌があったのではないでしょうか。

ただ、これももう今から30年以上前の話。当時人気だったオープンモデルも流通量が少なくなり、状態にかなりばらつきが出ています。その結果、状態がいい中古車の相場はかなり高値で推移しています。

「あの頃に買って乗っておきたかった…」

歯ぎしりを抑えながら、当時話題になったオープンモデルを振り返っていきましょう。
 

 

すべてはここから始まった! マツダ ロードスター(NA型)

ロードスター▲1989年9月にデビューし、多くの日本人にオープンカーの楽しさを伝えた初代NA型ロードスター

車との一体感を味わえるモデルとして1960年代に注目を集めたライトウェイトオープンカー。しかし、1980年代にはほぼ絶滅していました。そんな中でマツダが1989年に世に送り出したロードスター(当時は販売チャネルの名を冠してユーノスロードスターという名称でした)が、まさかの大ヒットモデルになります。

マツダもこの車が商業的に成功するとは思っていなかったのでしょう。開発陣に与えられた場所は川沿いにある倉庫の片隅だったといいます。

初代ロードスターが掲げたコンセプトは「人馬一体」。目指したのは純粋な速さではなく、人と車が一体となり意のままに操るという気持ちよさの追求です。1980年代、日本の自動車メーカーは馬力競争を繰り広げていましたが、それに対するアンチテーゼとも言えるコンセプトが支持され、初代ロードスターは歴史に名を残す名車になりました。そして、ロードスターの後を追うように多くのメーカーがライトウェイトオープンを開発していました。
 

ロードスター▲20年前となる2005年のEDGE誌の情報によればNAロードスターの中古車価格帯は10万~120万円くらいだったようです

EDGE誌が創刊した2005年は初代ロードスターが登場してから16年。新車時価格は169万~340万円だったところ、中古車相場はすでにこなれていて、車両本体価格で10万~120万円で流通していたようです。予算80万円あればかなり条件のいい中古車が見つかったはずです。しかし、現在では車両本体価格で70万~590万円(支払総額80万~600万円)、平均価格は183万円まで上昇しています。

デビューから35年以上経過していることもありフルノーマル車を探す難易度は相当高く、修復歴がある中古車も少なくありません。その中で比較的状態のいいものを探そうと思ったら最低でも250万円くらいの予算を見ておきたいところ。

ハイパワーのスポーツモデルに比べたらまだ手に入れやすい価格帯とも言えますが、中古車相場が底値だった20年前に手に入れておくべきだったと悔やめるモデルのひとつです。
 

ロードスター▲過去3年間の中古車平均総額。3年間で30万円以上上昇しています

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マツダ ロードスター(NA型)
 

軽自動車のスーパーカー!? ホンダ ビート(初代)

ビート▲軽自動車でありながらミッドシップレイアウトを採用したビート。NAエンジンで64psを達成!

耐久性が高くて燃費が良く、しかも価格が安い国産車は、1970年代には世界中から支持され、それが政治問題になるほどでした。1980年代になると国産メーカーはプレミアムモデルを海外で成功させる目標を掲げ、北米を中心にプレミアムブランドを立ち上げます。ホンダが1990年に発売した和製スーパーカーのNSXは、北米ではアキュラブランドから発売されました。

そして翌1991年には、NSXの思想を盛り込んだ軽オープンスポーツを発売。それがビートです。

軽自動車のスポーツモデルといえばターボで加給して自主規制の64psを出しますが、ビートはレッドゾーンが8000回転の高回転型NAエンジンで64psを達成。しかも、エンジンを運転席の後ろに配置して後輪を駆動させるMR方式を採用しました。

さらに、ボディは世界初となるフルオープンモノコックボディで、タイヤは前後異サイズ。ブレーキは軽自動車初となる四輪ディスクで、サスペンションは四輪独立懸架式。まさに軽自動車のスーパーカーです。
 

ビート▲20年前となる2005年のEDGE誌の情報によればビートの中古車価格帯は30万~100万円くらいだったようです

EDGE誌が創刊した2005年のビートの中古車相場は30万~100万円だったようです。新車時価格が138.8万円だったことを考えると、デビューから14年経過しているにもかかわらず大健闘という相場と言えるかもしれません。35年ほど経過した現在の中古車相場は車両本体価格で30万~370万円(支払総額40万~380万円)。20年前よりは相場が上昇していますが、NA型ロードスターや後述するスズキ カプチーノに比べるとまだ買いやすい価格帯にある気もします。

総額120万円前後でも走行距離が10万km以下で比較的コンディションが良さそうな物件も散見できます。「あの時買っときゃよかった…」と思っている人、今ならまだいけそうですよ!
 

ビート▲相場の上下動が激しいのは流通する中古車の程度の問題もあると考えられます

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ホンダ ビート(初代)
 

FRスポーツの走りを軽自動車で楽しめる! スズキ カプチーノ(初代)

カプチーノ▲軽自動車でFRスポーツの走りを楽しめるカプチーノ。現在でもカルト的な人気を誇ります

普通車だけでなく軽自動車も熾烈な馬力競争を繰り広げていた1980年代。スズキは1987年に登場したアルトワークスで64psを達成。これが後に軽自動車の出力規制が設けられるきっかけになりました。

そんなスズキがライトウェイトスポーツを出すことを考えた時、その答えは「思いのままに操縦する楽しさを追求」した本格スポーツモデルにすること。そして1991年に登場したのがカプチーノです。

軽自動車は限られたスペースを最大限活用するためにFFレイアウトで開発されるのが一般的です。ところが、カプチーノはスポーツカーの王道であるFRレイアウトを採用しました。結果、カプチーノは軽自動車規格でありながらロングノーズショートデッキのフォルムが与えられました。

搭載エンジンはアルトワークスに搭載したエンジンを縦置きで配置。サスペンションは四輪ダブルウィッシュボーンになります。ルーフは幌ではなくハードトップタイプに。クローズドルーフ、Tバールーフ、タルガトップ、フルオープンという4つのスタイルを楽しめるのが特徴でした。
 

カプチーノ▲20年前となる2005年のEDGE誌の情報によればカプチーノの中古車価格帯は40万~100万円くらいだったようです

EDGE誌が創刊した2005年のカプチーノの中古車相場は40万~100万円。相場的には底値ではあるものの、NAロードスターやビートよりは高めで推移していたようです。現在の中古車相場は車両本体価格で50万~600万円(支払総額60万~610万円)。ただ、最高値のものはAC コブラのレプリカモデルで、実質的な最高値は支払総額で300万円になります。

ビート同様に今でも十分に手が出せそうな価格帯ですが、流通量は少なめ。「あの時買っときゃよかった…」と思っている人は、早めに購入を決断した方が良さそうです。
 

カプチーノ▲近年の中古車相場は安定していたようですが、2025年からはやや上昇傾向に転じています

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スズキ カプチーノ(初代)
 

他にもこの時代だからこそ生まれたモデルがあった!

AZ-1▲平成のABCトリオの一角だったAZ-1。オープンカーではありませんが注目度はかなり高いモデルでした

上記3モデル以外にも、この時代だからこそ生まれたモデルとして忘れることができないのが、マツダ AZ-1です。オープンモデルではありませんが、軽自動車にシザーズドア(ガルウイングドア)を採用した、かなりぶっとんだ車でした。ちなみに、ガルウイングドアを採用した軽自動車は、いまだにAZ-1しか存在しません。

それ以上にすごかったのが走り。エンジンはアルトワークスに採用した直3ターボをスズキが提供し、それをミッドシップに搭載。足回りもアルトワークスのものを流用しています。ステアリングは非常にクイックで、まさに切れ味が鋭い(ともすると危険なほどの)ハンドリング性能を誇りました。
 

AZ-1▲20年前となる2005年のEDGE誌の情報によればAZ-1の中古車価格帯は60万~180万円くらいだったようです

EDGE誌が創刊した2005年のAZ-1の中古車相場は60万~180万円。元々流通量が少ないモデルということもあり、平成のABCトリオと呼ばれたモデルの中では最も高い相場を形成していました。現在の中古車相場は車両本体価格で180万~380万円(支払総額190万~390万円)もします。流通量はたったの14台しかなく、かなりのプレミア相場になっています。
 

AZ-1▲AZ-1は流通量が極端に少ないため相場の上下動が激しくなっています

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マツダ AZ-1(初代)
 

EDGE誌では紹介できなかった、当時のぶっ飛んだオープンモデル

リーザスパイダー▲ダイハツ リーザスパイダー。2人乗りでルーフは手動式になる。原稿執筆時の流通量は残念ながら0台。ただ、まだどこかで元気に走っている可能性も。ということは粘っていればいつかは……
ヴィヴィオタルガトップ▲スバル ヴィヴィオタルガトップ。ルーフは手動で外し、トランク内にしまう仕組み。原稿執筆時の流通量は……残り10台!

当時のEDGE誌では紹介していませんでしたが、この時代にはダイハツ リーザスパイダー(1991年~)やスバル ヴィヴィオタルガトップ(1993年~)というオープンモデルも登場しました。海外のプレミアムモデルだけでなく、ごくごく普通の人が選べる軽自動車でも開放的で気持ちのいい走りを楽しめたモデルです。

開発資金に余裕があった時代だからこそ、このような企画も通ったのでしょう。そしてこの時の経験が後のホンダ S660やダイハツ コペンといったオープンモデルの開発につながっていったはずです。
 

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ダイハツ リーザ―スパイダー(初代)

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スバル ヴィヴィオタルガトップ(初代)
文=高橋 満(BRIDGE-MAN)、写真=トヨタ、日産、マツダ、ホンダ、スズキ、ダイハツ、スバル、編集部
※記事内の情報は2025年11月30日時点のものです。