日産エクストレイル(3代目)▲無骨なスタイルがカッコ良く、オフロードなどでも頼もしい走破性を披露してくれるSUV。でも、魅力はそれだけじゃない!

SUVへの素朴な疑問に答えます

かつての四駆ブームを経て独自の進化を遂げ、現代の車を代表する人気ジャンルとしてすっかり根付いたSUV。でも、SUVってそもそもどんな車のこと? どんな種類があるの?

この記事では、そんなSUVに対する素朴な疑問に答えつつ、目的別にオススメの1台を紹介する。

自分にぴったりのSUVはどれ? と悩んでいる人はぜひ参考にしてほしい。

 

SUVとは? どんな車? 素朴な疑問に答えます!

SUVとは「Sport Utility Vehicle(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)」の頭文字をとったもの。日本では「スポーツ向け多用途車」と訳されることが多いが、本来の意味からすれば「スポーツ用途向けの車」とする方が正しいだろう。

この場合の「スポーツ」は運動のことだけでなく、オフロード走行、アウトドア遊びを含めたアクティブな活動全般ということになる。

もともとは軍用車に起源をもつ本格オフロード車が次第に変化し、1960~1970年代にレジャー志向となっていった時代に、それらをひとくくりにする言葉としてアメリカで生まれた……というのが定説。

SUVのはっきりした定義はないものの、「一般的なセダン、クーペ、ステーションワゴンなどよりも車体床面が高く、オフロード車っぽい外観をもった車」全般に対して使われることが多い。

現代では本格オフロード車から乗用車をベースに車高を高くしたモデルまで、幅広い車種にSUVの呼称が用いられている。アクティブなライフスタイルを送る人にぴったりな車のカテゴリーと言えるだろう。

 

【SUVのサイズは?】コンパクト・ミドル・ラージに分かれる

SUVはボディサイズが様々あるが、大まかに「コンパクト」「ミドル」「ラージ」と3種類のクラスに分けることができる。

■コンパクトSUV
おおむね全長4.5m未満、全幅1.8m未満のSUVがこのクラス。軽自動車はもちろん、5ナンバー車(全長4.7m以下、全幅1.7m以下、全高2m以下、排気量2000cc以下)、3ナンバー車でも小さめサイズの車種まではこのクラスに入る。

小さくて軽いことは、悪路走破性、オンロードでの俊敏さ、燃費のうえでとても大きなメリットになる。乗車定員は4~5名が一般的。

サイズが小さいために小回りが利き、運転しやすいのも魅力だ。価格がリーズナブルなモデルも多く、初心者のファーストSUVとしてもちょうど良いだろう。

スズキ ジムニー(現行型) ▲小さくて軽い、という軽自動車のメリットを、最大に生かして悪路走破性を向上させたスズキ ジムニー(JB64型)

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トヨタ ライズ(現行型) ▲コンパクトクラスとは思えない迫力あるルックスのトヨタ ライズ(初代)

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■ミドルSUV
おおむね全長4.5m以上、全幅1.8m以上となると、このクラスにカテゴライズされることが多い。車内空間、とりわけ後席居住空間が広いのはミドルSUVの大きな特徴だ。3列シートを備えているモデルもある。

トレッドやホイールベースが長いことで走行安定性向上につながり、長距離ドライブも楽。荷室空間も広いので家族でのキャンプなどにも対応できる。

コンパクトSUVよりも最小回転半径は若干大きくなるが、それでも取り回しに苦労することは少ない……と優等生的なクラスだ。

売れ筋であることからバリエーションが豊富で、自分のライフスタイルに合う車種を見つけやすいのもメリットのひとつと言えるだろう。

日産 エクストレイル(現行型) ▲ミドルSUVの中ではかなり大型の部類に入ってきた日産 エクストレイル(4代目)。3列シート仕様もある

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■ラージSUV
全長5m以上、全幅1.9mに迫る、あるいはオーバーするボディサイズになってくると、ラージSUVの仲間入り。乗車定員は7~8人が大半で、中には大人が余裕をもって座れるスペースの3列目シートを備えている車種もある。

ボディサイズが大きい分、当然車体が重くなるが、その分を補って余りあるパワーユニットを搭載している車種が少なくない。

価格帯も高く、装備内容や内装の仕立ても豪華。取り回しや燃費などの面ではデメリットもあるが、おうようなドライビングフィール、広大な車内空間はラージSUVだけの特権。まさに大陸的スケールのSUVと言えるだろう。

トヨタ ランドクルーザー300(初代) ▲現行の300系トヨタ ランドクルーザー。居住空間の広さ、装備や内装の豪華さ、そして悪路走破性、どれをとってもトップクラス

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【SUVのタイプは?】クロカンとクロスオーバーに分かれる

最近のSUVは多様化しているために単純にタイプ分けすることは難しいが、大まかに「クロスカントリー(クロカン)」タイプ「クロスオーバー」タイプに分けて考えることはできる。それぞれの特徴は以下のとおりだ。

■クロカンタイプ
悪路走行に重きをおいて開発されたSUVのこと。大きく確保されたロードクリアランスと副変速機を備えた本格的な四輪駆動システム、大径タイヤなどを特色とする。

ボディ構造ではハシゴ型の骨格で支える「ラダーフレーム構造」がクロカンタイプの主流となっているが、車体全体で剛性を確保する「モノコック構造」で本格的な悪路走破性能を備えたモデルもある。

悪相走破性能が高い反面、オンロードでの俊敏性や乗り心地、燃費性能については悪化しやすい傾向にある。

かつてに比べると車種こそ少なくなったが、今でも無骨なスタイル、本格的な悪路走破性能にひかれてクロカンタイプを選ぶ人は多い。

ジープ ラングラー(JL型) ▲ジープ ラングラー(JL型)は量産型オフロード4WDのルーツである米軍の軍用車MB/GPWの正統な血統を継ぐSUV

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■クロスオーバータイプ
セダンやクーペ、ステーションワゴン、ミニバンなど他のカテゴリーに属する車種をベースに、車高をアップ。オフロードテイストに仕上げたのがクロスオーバータイプだ。

現在では独自の進化を遂げ、ベース車をもたないオリジナルのクロスオーバーSUVが増えた。クロカンタイプのようなオフロード性能は期待できないものの、乗用車と近い感覚で乗れるのが魅力。高すぎず、低すぎない車高は、乗降性においても有利となる。

トヨタ ハリアー(現行型) ▲クーペライクな独特のフォルムをもつトヨタ ハリアー(4代目)。クロスオーバーSUVの先駆者でもある

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ここまでで現代のSUVに様々なサイズやタイプがあることは、ご理解いただけただろう。

ここからは使用目的に応じたSUVの選び方をガイドしながら、オススメのタイプを選んでみたい。

 

【SUVの選び方①】普段使いなら:燃費の良いコンパクトSUV

近所の買い物から週末のドライブまで、日常の足としてSUVを使いたいなら、取り回しに困らないコンパクトSUVが適しているだろう。

極端にフロア高が高いクロカンタイプはさておき、一般的なSUVはちょうど良い高さで乗り降りもしやすい。もちろん運転も楽チンだ。

さらに毎日乗る車だから、燃費性能もいいに超したことはない。

これらの条件から考えると、2019年に登場したダイハツ ロッキー(2代目)あたりがオススメしたい1台の筆頭候補となる。5ナンバーに収まる全長:3995 mm × 全幅:1695mm × 全高:1620mmというボディサイズは日常使いに最適。

1.2Lガソリンエンジンで発電しながらモーターのみで走る「e-SMART HYBRID」も設定され、28.0km/L(WLTCモード)という好燃費も実現されている。ハイブリッド車はFFのみとなるが、日常的な使用の範囲なら問題にならないだろう。

ちなみに、ロッキーとトヨタ ライズ(初代)は兄弟車で、性能もほぼ同じだ。

ダイハツ ロッキー(現行型) ▲コンパクトな車体に経済的なパワーユニットの組み合わせは、普段の足として使うSUVにぴったり

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【SUVの選び方②】家族で使うなら:3列シートを備えるSUV

家族や仲間みんなで乗る車としてSUVを選ぶ人も増えてきた。3世代家族の人、スポーツのチームメイトなどと一緒に乗るなら、3列シート車が欲しいところだ。

もちろん、大人数で乗るにはミニバンの方が適しているが、いつもフル乗車というわけではないなら、普段のドライバビリティを考えてSUVを選ぶ……という判断は合理的だろう。

ファミリーカーとして使うなら、クロカンタイプのような本格的なオフロード性能は必要ない。すると3列シートを備えたクロスオーバーSUVが理にかなっている。ということでオススメの1台はマツダ CX-8(初代)だ。

CX-8のボディサイズは全長:4900mm × 全幅:1840mm × 全高:1730mm。ラージクラスに入る大きさだが、大人が余裕をもって座れるサードシートをもつSUVとしては小さい方だ。この大きさならギリギリ、狭い道での取り回しに苦労せずに済むだろう。

エンジンには2.5L 直4ガソリンと同ターボも用意されているが、イチ押しは2.2L 直4ディーゼルターボ。1800kg以上となる車重をモノともしないトルクと、ガソリンライクなフィーリングが持ち味のエンジンだ。

燃費性能も15.4~15.8 km/L(WLTCモード)と、このクラスのSUVとしては悪くない。

マツダ CX-8(現行型) ▲マツダ CX-8(初代)はスポーティな走りと、3列シート車とは思えないスタイリッシュさが魅力

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【SUVの選び方③】キャンプやスポーツで使うなら:悪路走破性に優れたクロカンタイプ

大自然の中にあるキャンプ場や砂浜、雪道などのアウトドアフィールドへとよく出かけるなら、クロカンタイプのSUVが安心だ。

もちろん、整備された未舗装路程度なら一般的なSUVでも十分だが、泥濘地、深雪路といったオフロードにおいて、クロカンタイプの走破性はクロスオーバータイプの比ではない。

クロカンタイプなら、林道や専用コースなどで積極的にオフロード走行を楽しむ、という遊びにも応じられる。オススメしたい車種はたくさんあるが、ここでは例としてジムニーシエラ(JB74型)トヨタ ランドクルーザープラド(4代目)をピックアップしよう。

ジムニーシエラ(JB74型)は軽自動車であるジムニーと基本設計を共有しながら、エンジンを1.5L 直4ガソリンに載せ替え、オーバーフェンダーを装着して5ナンバー化した車。ギア比の低いローレンジをもつ、本格的なパートタイム式4WDシステム、ラダーフレーム構造の強固なボディ、ストローク量の長い前後リジッド式サスペンションが特徴だ。

車内空間の広さや内装のクオリティなどは軽自動車の域を出ないものの、こと悪路走破性においてはラージクラスの本格クロカンSUVにも決してヒケを取らない。極めてコスパの高い1台と言えよう。

スズキ ジムニーシエラ(現行型) ▲ジムニーシエラ特有のワイドトレッドは、ジムニーのウイークポイントである重心の高さを補ってくれる

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ランドクルーザープラドは国産車の中では希少な、ラージクラス(の中では小さい方)の本格クロカン。フロントサスこそオンロードでの操縦性に配慮した独立懸架式だが、リアサスは伝統的なリジッド式で長大なストローク量を誇る。

4WDシステムは前後不等配分のフルタイム式だが、センターデフをロックして本格的な悪路走行に備えることもできる洗練されたメカニズム。ラダーフレーム構造のボディに代表される耐久性重視の作りは、世界中のへき地で愛用されている実績に表れている。

トヨタ ランドクルーザー プラド(現行型) ▲本格クロカンを欲する人にとってちょうど良いサイズ感と、オンオフ自在のマルチパーパスな走り、広い居住空間がプラドのもち味だ

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トヨタ ランドクルーザープラド(4代目) × 全国

※記事内の情報は2023年3月2日時点のものです。
 

文/田端邦彦 写真/スズキ、ダイハツ、トヨタ、日産、マツダ、ジープ
田端邦彦(たばたくにひこ)

自動車ライター

田端邦彦

自動車専門誌で編集長を経験後、住宅、コミュニティ、ライフスタイル、サイエンスなど様々なジャンルでライターとして活動。車が大好きだけどメカオタクにあらず。車と生活の楽しいカンケーを日々探求している。プライベートでは公園で、オフィスで、自宅でキャンプしちゃうプロジェクトの運営にも参加。