スズキ カプチーノ

これから価値が上がっていくだろうネオクラシックカーの魅力に迫るカーセンサーEDGEの企画【名車への道】

クラシックカー予備軍たちの登場背景や歴史的価値、製法や素材の素晴らしさを自動車テクノロジーライター・松本英雄さんと探っていく!

松本英雄(まつもとひでお)

自動車テクノロジーライター

松本英雄

自動車テクノロジーライター。かつて自動車メーカー系のワークスチームで、競技車両の開発・製作に携わっていたことから技術分野に造詣が深く、現在も多くの新型車に試乗する。「クルマは50万円以下で買いなさい」など著書も多数。趣味は乗馬。

今では作るのが難しいバブル期を代表する贅沢なコンセプト

——今回はちょっとコアな国産モデルにしました。国産車ですけど、松本さんもきっと乗ったことがあると思います。登場したのは、ちょうどバブルが終わる頃ですね。

松本 それって1990年以降ってことだよね。この連載でもマツダ ユーノス ロードスターを紹介したけど、その年代ってマニアックな素晴らしいスポーツカーが結構あるんだよね。ホンダ NSXやマツダ RX-7(FD)、2代目のトヨタ MR2もそのあたりの年代だね。

——軽のスポーツカーも登場しましたよね?

松本 そうそう、ホンダ ビートやマツダ AZ-1、スズキ カプチーノ。その中でも特に見かけなくなってしまったのはAZ-1かな。もっとも生産台数が4400台程度ととても少なかったからね。今、中古車で現実的なのはビートとカプチーノだと思うなあ。

——松本さんはどちらがお好きなんですか?

松本 ハンドリングだけならビートなんだけど、パッケージング的にそそられるのはカプチーノかな。

——それはなぜですか?

松本 ミッドシップのビートは確かにスポーツカーとして王道と言える。しかも、当時のピニンファリーナのエッセンスが入っているデザインにそそられるのは確か。

——それなのにカプチーノなんですか?

松本 古典的なスポーツカー好きなら、やっぱりFRのカプチーノになるからかな。ロングノーズショートデッキのスタイルは古典的スポーツカーの基本だと思うよ。

——なるほど。もうお分かりかと思いますが、今回はそのカプチーノです。取材車両はこちらのマニアに人気の前期型ですね。

 

スズキ カプチーノ
スズキ カプチーノ

松本 いいねえ! カプチーノはメカニズム的にもそそられるものがあるからね。四輪ダブルウィッシュボーンと四輪ディスクブレーキは今見てもたまらない。

——軽でもすごいんですね。

松本 レイアウトもパワーユニットがフロントでも後ろ寄りに搭載してあってね、フロントミッドシップという点も本物感がある。

——フロントミッドシップなんて、ラグジュアリースポーツのレベルですね。

松本 しかも、パワーユニットはDOHCでインタークーラーターボだからね。これは当時、とび抜けたスペックだと思ったよ。国内自主規制の64psにするため“抑えに抑えた感”があるんだけど、好きな人にはそれが余力感があるように感じられていいんじゃないかな。

——エンジンもすごいんですね。

松本 搭載されている3気筒ユニットF6A型ターボは550㏄からの発展型で、鋳鉄のブロックにクランクシャフトを11mm伸ばして、1989年に変更された軽自動車の規制(排気量上限660cc)に適合させた657㏄に引き上げられているんだよ。一般的にいう前期型はこれを積んでいるんだ。ただ、ロングストローク化によるコンパクトな燃焼室だから、個人的には好きだったけど、なにせ鋳鉄で8ビットの燃料コントロールは細かな燃調ができるとはちょっと言えないよね。情報量が違いすぎるんだよ。

——後期型は違うエンジンなんですか?

松本 そうなんだよ、後期型のK6A型ユニットは16ビットでブロックはアルミ合金製なんだ。これで段違いに細かく燃調が可能になっている。重量もおよそ11kg軽くなったんだよね。当然、ハンドリングも変わってくると思うよ。

 

スズキ カプチーノ

——松本さんはカプチーノに乗ったことはありますか?

松本 もちろんあるよ。ただ、前期型じゃなくて後期型なんだけどね。これが思ったよりも乗りやすくてね。ハンドリングはなんだか少し怖かったな、イメージどおりのトレースとはいかなくて、キレイに曲がれないんだよね……。慣れていないっていうのもあったのかなあ。でもね、FRのトランスミッションはいいよ、カチッと決まってね。きっとクラッチの切れが良かったら、さらにスムーズだったろうね。

——案外と運転が難しい車なんですね。

松本 そうだね。軽自動車のディメンションでFRって、思った以上に乗り手を選ぶのかもしれないね。ハイスペックグレードにはトルセンLSDが装着されていたところも、走りに特化した感じがするよね。ちなみに、カプチーノは前期型のEA11Rと後期型のEA21Rは知られているけど、実は1型から3型まで存在していたんだよ。

——そういえば、カプチーノって輸出もされていたんですか?

松本 英国と他の欧州の国にもしていたそうだね。僕も知らなかったんだけど、英国で認証を取得していて、欧州でも右ハンドル仕様のままなんだよ。

——そこもマニアックですね。

松本 生産台数だけどビートの約3万6000台に対し、カプチーノは1991年から1998年まで7年間生産したにもかかわらず約2万6000台と少なかったんだ。

——話題になった車なのに、意外に少ないんですね。

松本 けれど、今でも日本だけでなく世界中で人気があって、特に人気が高い英国では生産終了後も中古車が輸入され続けているそうなんだよ。

——日本のスポーツカーやマイクロカーって、英国などでは人気がありますよね。アメリカでも、日産のGT-RやマツダのRX-7などを中心としたJDMの人気が高いですし。それって、そういった国産車には“カルト”な面白さがあるっていう証拠だと思います。

松本 そのとおりだね。今スバル インプレッサWRXや三菱 ランサーエボリューションといったラリーで活躍したモデルは本当に高価だしね。

——人気ですよね。

松本 こういった“中身が詰まった”走りに特化したモデルは廃れることはなさそうだね。MADE in JAPANは壊れにくいというイメージが強いこともあって、カプチーノも世界的な注目はこれからまだまだ続くと思うよ。しかも新しいカプチーノが登場したりしたら、また付加価値がついちゃうかもね。

——なるほど。バブル期のマニアックなスポーツカーは貴重なんですね。

松本 今では簡単には作ることができないであろう、バブル期に誕生した“ありえないスペック”の車たちは、確実に車の歴史にその名を刻んだ。

——歴史が重要なんですね。

松本 歴史がなくては、その車は後世に語り継がれなくなってしまうからね。そう考えてみると、バブル期って面白いモデルがどんどん出ていたいい時代でもあったんだね。

 

スズキ カプチーノとは

1989年の東京モーターショーで話題となったプロトタイプのデザインやコンセプトを継承する、1991年登場の2シーターFR軽スポーツ。

4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションなど本格的メカニズムを備え、ボディやシャシーはオリジナルという贅沢な作りだった。

ルーフは量産車で初めて、ハードトップ、Tバールーフ、タルガトップ、フルオープンに変更可能な“4ウェイオープントップ”が採用されている。

スズキ カプチーノ
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スズキ カプチーノ(初代)
文/松本英雄、写真/岡村昌宏
※カーセンサーEDGE 2026年2月号(2025年12月26日発売)の記事をWEB用に再構成して掲載しています