日産シルビア ヴァリエッタ

【連載:どんなクルマと、どんな時間を。】
車の数だけ存在する「車を囲むオーナーのドラマ」を紹介するインタビュー連載。あなたは、どんなクルマと、どんな時間を?


2025年11月15日、大磯ロングビーチ第一駐車場で開催された「AOG 湘南里帰りミーティング 2025」。

日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)が主催する、オーテックおよびニスモロードカーのオーナーを対象にした大規模な「オフ会」である。
 

日産シルビア ヴァリエッタ

400台近い車両が集った会場で、ひときわ優雅な佇まいで注目を集めていたのが、S15型シルビアをベースにしたオープントップモデル「シルビア ヴァリエッタ(以下ヴァリエッタ)」だ。
 

日産シルビア ヴァリエッタ

2000年、日本車として初めてフルオープンタイプの電動メタルトップを採用し、鮮烈なデビューを飾った1台である。

宮城県からはるばる自走で参加したオーナーの藤村さんは、約7年前にこの2000年式ヴァリエッタを手に入れたという。
 

射止めたシルビアは、なんと非売品……?

「若い頃にS15型シルビアのクーペを所有していたんですけど、結婚を機に手放してしまったんです。それから何となくモヤモヤした気持ちで過ごしていたんですが、ある日、ろそろスポーツカーも恋しいなと思って、近所の中古車屋に入ったらこれが店の裏に置いてあって……」

一目で心を奪われた藤村さんは、その場で衝動的に購入を申し出る。しかし、店主の答えは「これはうちのデモカーだから販売するつもりはない」というものだった。

だが、一度火がついた情熱は収まらず、藤村さんはそれから約2週間、ほぼ毎日店を訪れては、ヴァリエッタの流麗なボディを眺め続けた。その並々ならぬ熱意が店主の心を動かし、「大事にしてくれるなら、仕入れた価格と同額で譲るよ」と、奇跡的な成約に至ったという。
 

日産シルビア ヴァリエッタ
日産シルビア ヴァリエッタ

藤村さんはヴァリエッタの魅力について「スタイリングの美しさ」を挙げる。

「S15型シルビアは通常のクーペボディでも十分にカッコいいデザインだと思いますが、ヴァリエッタは、よりボディ全体が薄く、低く見えるところが好きです」

ヴァリエッタは制約の多い4座の電動メタルトップ車でありながら、オープン時/クローズ時を問わず、シャープなシルエットを保っている。同時に、この秀逸なデザインのオープンカーが新車価格300万円前後で販売されていたという事実にも驚かされる。

一方で、クーペボディを前提に開発されたモデルをオープン化したという出自ゆえ、乗り味は元のS15型とはかなり異なるキャラクターをもっていると藤村さん。その最たる点は、クーペと比べるとちょい乗りでも分かるほどのボディ剛性の低さ。藤村さんはその乗り味を、愛情まじりに「こんにゃくのよう」と表現する。

「コンビニの駐車場に入ろうとすると歩道のちょっとした段差があったりしますよね。ノーマル状態だと、そこにフロントタイヤを乗り上げると、ボディがたわんでしまってリアのサスペンションが全然動かないぐらい(笑)」

そんな繊細なボディを補完すべく、藤村さんはS15型シルビアの最強グレード「スペックR」用の補強パーツを流用。さらに車高調、ホイール、マフラーを社外品へと換装し、自分好みのドライブフィールを構築している。

走って楽しいのは、やはりワインディングロード。好天の下、ルーフを開放して走るのは至福のとき……というか「開けて走らないとうるさくて乗っていられないんです」と苦笑いしながら明かしてくれた。
 

日産シルビア ヴァリエッタ
日産シルビア ヴァリエッタ

ファミリーカーとしてトヨタ ヴェルファイアも所有しており、普段の移動はこちらがメイン。このヴァリエッタはイベントやツーリングを楽しむための純粋な趣味車だ。

徹底的に磨き上げられたブリリアントブルー(ヴァリエッタのメインカラー)のボディは、秋晴れの陽光を浴びて輝き、オーナーの愛情の深さを物語っていた。

電動メタルトップが故障するとパーツを確保するのが困難など、維持における不安は尽きないという。それでも藤村さんは、この車に憧れているという小さな息子さんにいつかステアリングを託すことを夢見て、この希少なモデルを大切に乗り続けたいとアツく語ってくれた。
 

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日産 シルビア ヴァリエッタ(初代)
文/佐藤旅宇、写真/江藤大作
日産シルビア ヴァリエッタ

藤村さんのマイカーレビュー

日産 シルビア ヴァリエッタ(初代)

●マイカーの好きなところ/クーペより低く見えるシャープな形と、屋根を開けても閉めても完璧なスタイル
●マイカーはどんな人にオススメしたい?/不便さも「味」と思える人 。維持は大変だけど、この唯一無二のカッコよさにほれ込める人なら絶対ハマります
●マイカーのちょっと残念なところ/ボディが「こんにゃく」並みに柔らかい(笑)。段差で車体がしなるし、屋根を閉めるとうるさくて結局フルオープンで走るしかありません

佐藤旅宇

ライター

佐藤旅宇

オートバイ専門誌と自転車専門誌の編集記者を経て2010年よりフリーライターとして独立。様々なジャンルの広告&メディアで節操なく活動中。現在の愛車はフォルクスワーゲン クロスUP!と日産 ラルゴの他、バイク(HONDA)とたくさんの自転車。