ボルボ V60 ▲大人気の北欧製ミドルサイズステーションワゴンである2代目ボルボ V60も登場から約5年が経過したことで、ついに中古車平均価格がそこそこ下がってきました。そんな状況の中で我々は、何年式のどんなグレードを狙うべきなのか? いやそもそも「2代目ボルボ V60の中古車」は今、買っても大丈夫な1台なのか? そのあたりを徹底的にチェックしてみることにしましょう!

北欧プレミアムステーションワゴンのボルボ V60が安くなっている!

「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」と呼ばれる新世代プラットフォームと、新世代ボルボの特徴である「トールハンマー」デザインのT字型LEDヘッドライトを採用したミドルサイズのステーションワゴン「ボルボ V60」。

いかにも北欧の車らしい上質な存在感とシュアな走りで人気を集めている現行型世代のステーションワゴンですが、その中古車価格が今、けっこう大きく下がっています。

下のグラフをご覧ください。

V60平均価格推移グラフ

2021年の春頃にいったん下げ基調となった後は、おおむね横ばいといえる平均価格を維持していましたが、2023年春頃に再び下げ基調となり、同年9月の中古車平均価格は前年同月より40万円以上お安い433.7万円までダウンしています。

2代目(現行型)ボルボ V60の中古車相場にいったい何が起きたのか? そしてもしも「特に問題は発生していない」ということであったなら、どんなグレードをいくらぐらいの予算感で狙うのが得策となるのか?

次章以降、じっくり検討してみることにいたしましょう。
 

ボルボ V60▲このシュッとしたたたずまいを比較的お安く、安全に手に入れられるなら大変うれしいことだが、果たして実際はどうなのか?

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ボルボ V60(2代目・現行型) × 全国
 

【モデル概要】「新世代ボルボ」の第2弾として登場

まずは2代目ボルボ V60のモデル概要をざっとおさらいしておきます。

初代ボルボ V60は2010年にデビューしたボルボのミッドサイズステーションワゴンで、同時期の「V70」よりもスポーティなイメージが強調されていました。そしてスマッシュヒットを記録した初代の後を受けて2018年9月に登場したのが、今回ご紹介する2代目ボルボ V60です。

プラットフォームは前述のとおり「SPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)」という新世代のもので、ボディサイズは全長4760mm×全幅1850mm×全高1435mm。初代V60よりも全長は12cmほど長くなりましたが、全幅は少し狭くなり、全高も45mm低くなりました。しかし5人乗車時の荷室容量は初代より99Lも広い529Lが確保されています。

エクステリアデザインは、新世代ボルボの特徴のである「トールハンマー」デザインのT字型のLEDヘッドライトを採用し、インテリアは北欧の車らしい「洒落ているが、温かみもあるデザイン」とでもいうべき雰囲気。カーオーディオは「Bowers& Wilkins」または「harman/kardon」も用意されています。
 

ボルボ V60▲こちらが現行型ボルボ V60
ボルボ V60▲スポーティな方向に振った初代とは異なり、オーソドックスな「ステーションワゴンらしいフォルム」が採用されている
ボルボ V60▲グレードによってシート表皮などは異なるが、2代目V60の運転席まわりはおおむねこのようなデザイン
ボルボ V60▲全幅と全高は初代よりも抑えられているが、オーソドックスなワゴンフォルムを採用したため、5名乗車時の荷室容量は初代を約100L上回っている

上陸当初のパワーユニットは最高出力254psの2L直4ガソリンターボ「T5」で、少し遅れて「Twin Engine(ツインエンジン)」と呼ばれる2種類のプラグインハイブリッドを用意。こちらは87psのモーターにスーパーチャージャー付きの2L直4ターボエンジンを組み合わせたもので、「T8 Twin Engine」はエンジンの最高出力が318ps、「T6 Twin Engine」は253psでした。駆動方式はT5がFFで、Twin Engineはいずれも4WD。トランスミッションは全グレードが8速ATです。

「City Safety」と呼ばれる衝突回避・軽減フルオートブレーキシステムや、アダプティブクルーズコントロール、車線維持機能など16種類以上の運転支援機能からなる「IntelliSafe(インテリセーフ)」は全車標準装備です。そしてこの世代から「オンカミング・ミティゲーション Byブレーキング」という、対向車が自車の走行車線に進入し、衝突が避けられないと判断した場合は自動ブレーキにより衝突速度を最大10km/h低下させる機能が追加されています。

2020年10月にはパワートレインを一新し、純ガソリンエンジンを廃止。2L直4ガソリンターボエンジンに48Vハイブリッドシステムを組み合わせた「B4」(最高出力197ps)と「B5」(同250ps)の他、T6 Twin Engineの車名を「リチャージ プラグインハイブリッドT6」に改名。そして318psのエンジンを強力なエンジンを積むプラグインハイブリッド車だったT8 Twin Engineは廃番となりました。

その後2022年7月の仕様変更時に、グレードを最上級の「アルティメット」と標準的な(とはいえかなり充実した装備の)「プラス」の2種類に整理。そして2023年7月に少々の仕様変更を行い、現在に至る――というのが、2代目ボルボ V60の大まかなヒストリーです。
 

Aクラスセダン▲写真は後期型プラグインハイブリッド車の上級グレードである「V60リチャージ アルティメットT6 AWD プラグインハイブリッド」
 

【考察】平均価格ダウンは「車検時期の重なり」が原因か

この1年間で2代目ボルボ V60の中古車平均価格が40万円以上ダウンしたのは「ありがたいこと」ではあるものの、同時に「安いモノには訳がある」というのも世の中の真理ではあるため、ちょっと気になるところではあります。

しかし、結論から申し上げると今回の平均価格ダウンは、何らかのネガティブな要因によって起きたものではなく、単純に「車検タイミングを迎えたゆえの平均価格下落」であるようです。

2代目ボルボ V60のエンジンやトランスミッション、足回りなどに関しては大きな弱点みたいなものは特には存在しないため、普通に点検整備を受けてきた個体でさえあれば、「買ったはいいけど故障続きで閉口する。なる早で売っぱらっちゃいたい」みたいなことにはほぼなりません
 

ボルボ V60▲機械モノゆえ「マイナートラブルすら発生しない」などということは絶対にないが、決して「大きな弱点」のようなものが目立つ車ではない

ならばなぜ中古車の平均価格がけっこう大きく下がったかといえば、「初期モデルの2回目車検時期」と「パワートレイン電動化された後期型の初回車検時期」が、たまたま重なったから――だと考えられます。

初期モデルの発売が2018年9月ですので、平均価格が大きく下がった2023年春頃というのは、初期モデルのユーザーにとっては「そろそろ2回目の車検だけど……正直どうしようかな?」と真剣に考え始めるタイミングです。そして48Vハイブリッドに刷新された世代を2020年10月頃に買った人は、それと同じように「初回車検、通すべきか、乗り替えるべきか……」と悩み始めるタイミングです。

この2つのタイミングが重なったことでV60を手放す人の数がそこそこ増え、その結果として平均価格がダウンした――というだけのことだと推察されますので、今回の下落に対して特に不安を覚える必要はないと言っていいでしょう。

では、次章より今現行型のボルボ V60を中古車で狙うならば、どんな物件がオススメなのか? ケースごとに考えてみたいと思います。

 

中古車のオススメその1|安く買いたいなら「T5モメンタム」

2代目ボルボ V60を「なるべくお安く入手したい」ということであれば、オススメは2018年から2020年まで販売された2Lガソリンターボエンジンを搭載する「T5」のうち、標準グレードに相当する「T5モメンタム」です。

これであれば、走行3万km台までの物件を総額240万~290万円という、きわめて現実的な予算で入手可能です。
 

ボルボ V60▲2Lターボの標準グレードとはいえ、装備は普通以上に充実している「T5モメンタム」

エンジンはシンプルな2L直4ガソリンターボですが、最高出力254ps/最大トルク350N・mを発生する十分パワフルなユニットですので、動力性能の部分で不満を覚えることはほとんどないはず。

そして同じエンジンを積む同時期の上級グレード「T5インスクリプション」と比べると、標準装備の内容は若干劣るのですが、ここについてもさほど大きな問題はありません。そう断言する理由は以下のとおりです。

●安全装備の内容はモメンタムもインスクリプションも同じ(細かいことを言うと、モメンタムは「車間警告機能」だけ省略されていますが)。

●ホイール径はインスクリプションの18インチに対して17インチになるが、乗り心地の面では17インチの方が有利。

●標準のシート表皮はインスクリプション=本革、モメンタム=T-Tec/テキスタイル・コンビネーションだが、実際はモメンタムに「レザーパッケージ」を装着している中古車が非常に多い。

●モメンタムのオーディオはインスクリプションと違ってharman/kardonが標準ではないが、モメンタムの「ハイパフォーマンス・オーディオシステム(170W/10スピーカー)」でも普通に十分以上。

●その他にもこまごまとした差はあるが、モメンタムの標準装備も、並の車と比べれば大いに充実している。


……ということで、この場合のオススメは「総額240万~290万円の比較的低走行なT5モメンタム」ということになるわけです。
 

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ボルボ V60(2代目・現行型) ×T5モメンタム×全国

とはいえどうしても上級のT5インスクリプションがいいという場合は、「走行4万km台までのT5インスクリプションを総額270万~340万円ぐらいで探す」というのが最適解となります。ちょっとだけお高いですが、これはこれで悪くない選択です。
 

ボルボ V60▲T5モメンタムの標準シート表皮は写真の「T-Tec/テキスタイル・コンビネーション」だが、多くの中古車にはオプションの「レザーパッケージ」が装着されているため、ファブリックシートのT5モメンタムを探す方が逆に難しいかも?

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ボルボ V60(2代目・現行型) ×T5インスクリプション×全国
 

中古車のオススメその2|プラグインハイブリッドを狙うなら「ツインエンジン世代」

スーパーチャージャー付きの2L直4ターボエンジンに87psのモーターを組み合わせたプラグインハイブリッドの2代目ボルボ V60も、なかなか魅力的な1台です。

しかし、2022年7月以降の「アルティメット」と「プラス」の2グレードに整理された世代は、まだけっこうお高い相場であったり、そもそも流通台数が少ないというのが現実です。具体的には、上級グレードである「リチャージ アルティメット T6 AWD プラグインハイブリッド」が総額620万円以上というイメージで、標準グレードである「プラス」の方は流通なしです。

もう少し年式を落として、プラグインハイブリッド車の車名が「ツインエンジン」から「リチャージ」に変わった世代、すなわち2020年10月から2022年途中までの世代を見てみると、「リチャージ プラグインハイブリッド T6 AWD インスクリプション」が総額480万円以上といったところで、若干装備を落として新車価格をお安くした「リチャージ プラグインハイブリッド T6 AWDエクスプレッション」も、中古車価格はさほど変わりません。

となるとプラグインハイブリッド車の狙い目となるのは、「ツインエンジン」と名乗っていた2018年から2020年途中までの世代となるでしょう。
 

ボルボ V60▲こちらがT6ツインエンジンAWD

この中で最高出力253psのエンジンをベースとする「T6ツインエンジン AWD インスクリプション」は総額370万円~といったニュアンスで、同318psの強力なエンジンをベースとする「T8ツインエンジン AWD インスクリプション」は総額430万円~といったところです。

この両者であれば比較的イケそうなプライス感ではありますが、どちらも中古車の流通量が少ないのが玉にキズ。特に、ハイパワーなT8ツインエンジン AWDインスクリプションは希少です。

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ボルボ V60(2代目・現行型) ×ツインエンジン×全国
 

ちなみに「ポールスター エンジニアード」の中古車状況はどうなってる?

ボルボ V60といえば、ハイパフォーマンスモデルである「ポールスター エンジニアード」の存在も忘れるわけにはいきません。

ポールスターとは、もともとはボルボのオフィシャルパートナーとしてツーリングカーレースなどで活躍してきたレーシングコンストラクター。そして2014年からはボルボのスポーティなコンプリートモデルに「ポールスター」の名を冠するようになったのですが、2017年以降は「ボルボの高性能エレクトリックカーを扱うブランド」へと方向転換されました。

で、2019年末に30台限定で発売されたセダン「ボルボ S60 T8ポールスター エンジニアード」は即日完売してしまったわけですが、2020年11月に20台のみ発売されたのがステーションワゴン版の「V60 T8ポールスター エンジニアード」で、2022年9月に150台限定で発売されたのが「V60 リチャージ ポールスター エンジニアード」です。
 

Aクラスセダン▲強力なプラグインハイブリッドシステムと、強化された足回りなどを採用している限定車「V60 T8ポールスターエンジニアード」

プラグインハイブリッドのパワートレインはシステム最高出力462psで、強大な出力を受け止めるシャシーは22段階の減衰力調整が可能なオーリンズ製DFVショックアブソーバー&強化スプリングや、ブレンボ製6ピストン前輪ブレーキキャリパー、ストラットタワーバー、19インチの専用鍛造アルミホイールなどで大幅に強化されています。

ということで、「スポーティなボルボ」が好きな人にはたまらない仕様となっているポルスター エンジニアードではあるのですが、2023年10月下旬現在、その中古車流通量は完全に0台! ……これの新車を運良く購入できた人は、ほとんど手放さないのかもしれません。

まぁ無いものは買えませんので、ポールスター エンジニアードについてはいさぎよくあきらめるか、もしくは市場に出てくるその日まで、カーセンサーnetを毎日覗いてみるしかないでしょう!
 

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文/伊達軍曹 写真/ボルボ・カーズ、尾形和美、茂呂幸正
伊達軍曹

自動車ライター

伊達軍曹

外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。現在は「手頃なプライスの輸入中古車ネタ」を得意としながらも、ジャンルや車種を問わず、様々な自動車メディアに記事を寄稿している。愛車はスバル レヴォーグ STIスポーツ。