シボレー コルベット Z06▲ミッドシップレイアウトとなった第8世代(C8)コルベット。そのレーシングモデルであるC8.Rをベースとした、伝統のハイパフォーマンスモデル。リアミッドには5.5L V8DOHC自然吸気エンジンを搭載する

奇跡の日本導入! “タダゴトではない”オーラをまとう伝統の高性能モデル

“待望の”という形容詞はまさにこの車のためにあった。

伝統のFRレイアウトからミッドシップへと華麗に変身した第8世代のコルベット。心臓部はもちろんV8 OHVだった。しかし、そのデビューからしばらく経つと、耳を疑うニュースが飛び込んできたのだ。

C8コルベットの高性能版Z06には、何と新開発の5.5L V8 DOHC自然吸気エンジンが積まれる! コルベットとしては久々のツインカムエンジンで、ドライサンプにフラットプレーンクランク、パワーは600ps以上……。早々に自然吸気には見切りをつけ過給器付きダウンサイジングエンジンを積んだマラネッロ製ミッドシップカーをあざ笑うかのようなスペックにスーパーカーマニアは狂喜乱舞した。

もっとも日本への正規輸入は難しいかもしれない。当初はそういう話だった。中でも音が厳しい。折しも本国ではデリバリーが始まり、その強烈なパフォーマンスがSNSの映像となって海を渡ってきた。実物を試したければ並行輸入車を狙うほかないか……。そう諦めかけた頃、“正規輸入されるらしい”という噂がマニアの間で流れ始めた。

2023年5月、とうとうインポーターであるGMジャパンはZ06の日本仕様、つまりは販売できるモデルとして、発表する。いちコルベットファンとしてはGMジャパンの執念と努力に敬意を表するほかない。

もっとも、ただでさえ輸入の難しいこの時期に、生産量が少なく本国で人気のあるモデルを日本仕様に仕立て直して日本に送ろうというのだから供給量は少なくなって当然だ。MY23モデルはわずかに4台で黒い3LTのみ。抽選だった。

MY23モデルのプライスタグは2500万円(北米ではプレミアがつく。バーゲン価格だ)だが、MY24モデル以降は為替や装備の内容によって価格の変更がありうるという。MY24モデル以降では先進安全装備など仕様が少し変わるかもしれない。また、ボディカラーは黒の他に赤や白が選べるという。

もはや待望どころか奇跡の来日決定である。驚きはそれだけに止まらず、なんと貴重なZ06のプレスカーが導入された。5台だろうが4台だろうが極小であることは変わりないという判断だろうか。何とも英断だ。この手のモデルの場合、その凄さをより多くのマニアに知ってもらっておくことも重要で、それが結果的にモデルやブランドの価値を高めるのだから。
 

シボレー コルベット Z06▲ベーシックモデルより全幅を85mm拡大
シボレー コルベット Z06 ▲最高出力646ps/最大トルク623N・mを発揮する5.5L V8 DOHC自然吸気エンジン(LT6)は、C8.Rに搭載されるLT6Rユニットと同じブロックやヘッドを用いている

現車と初めて対峙する。黒赤コンビ(要するにMY23モデルの4台と同じ仕様)は本国でも人気のコーデ。フェンダーはノーマルよりもはっきりと張り出しており、リアアクスルの発する強力なパフォーマンスを隠しきれないでいる。Z07パッケージではないから派手なリアウイングは装備されていない。しかも黒いボディカラーゆえ一見してZ06だと分かる人は少ないはず。しかし “タダゴトではない”空気を感じることだろう。全身から獰猛さがにじみ出ている。

本国仕様のZ06との最大の違いはセンター4本出しではなくスタンダードグレードと同じ左右4本出しのエンドパイプを採用したことだ。それゆえ日本仕様の最高出力は少し下がった。直管仕様のセンター出しだけは日本のレギュレーションに適合しない。残念!

レーシングカーC8.Rとエンジンヘッドやブロックを共有するLT6エンジンが静かに目を覚ましたことは最初の“意外”であった。

ドライブモードをツーリングにして走り出す。街乗りから高速道路まで、標準モデルとなんら変わらぬ快適性を保っていたのが第2の“意外”。8000回転以上回る高出力自然吸気エンジンとはとうてい思えない。逆に言うと、その時点で乗り手をドキドキさせることはなかった。そこにかえってGMのエンジン開発能力の高さを思い知るわけだが。
 

シボレー コルベット Z06 ▲インテリアデザインはベーシックモデルと同様。カーボンとマイクロファイバーを組み合わせたステアリングが備わる

スポーツモードに切り替える。明らかにラウドさを増したエグゾーストサウンドとともに、力の塊が盛り上がる感覚を腰や尻が拾った。

4000回転を過ぎたあたりから、もはやどう猛さを隠しきれない。そこからは一気呵成、力を漲らせたまま8000回転超まで回っていく。もちろん高出力ターボカーのようにドライバーを驚かせるような盛り上がり方ではない。けれども回転数が上がるにつれて力強さと緊張感が増していく感覚は素晴らしく劇的だ。高回転域をキープしても、エンジンは一切“苦しさ”を見せず、むしろ平然と回っている。公道での熱唱などZ06にとっては鼻歌レベル。レーシングユニット直系ゆえの扱いやすさだろう。

逆に言うと、その精緻なエンジンフィールと高回転域での力強さが、公道でそれ以上試すことをためらわせる。このエンジンはもとより、将来的には1000馬力級のハイブリッドユニットを積むことも想定された強靭なボディ&シャシーがC8コルベット最大の魅力だ。つまりミッドシップカーとしての総合性能の高さは現時点でおそらく世界でもNo.1クラス。サーキットでも試してみたいものである。

公道でLT6エンジンの実力を引き出すことは早々に諦めて、ルーフを外し軽くクルージングを楽しんだ。昔の跳ね馬のように背後でむせび泣くサウンドを期待していたけれど、さすがに今の時代、それはない。LT6は大排気量自然吸気のDOHCエンジンでありながら、低回転域からの力強さはもちろん、エグゾーストノートの音質においてもアメリカンV8らしさを漂わせていた。それもまた“意外”ではあったけれど、逆に言うとそういった事実がまたZ06の高性能マシンとしての完成度の高さを物語っているようにも思えた。
 

シボレー コルベット Z06 ▲サーキット走行に対応するためラジエターは5基に増設。フロントとボディサイドのエアインテークから大量のエアが送り込まれる
シボレー コルベット Z06 ▲MY23モデルはアドレナリンレッドのインテリアカラーが採用されている
シボレー コルベット Z06 ▲調整可能なウィッカービル(L字型のフィン)を備えたリアスポイラーを標準装備
シボレー コルベット Z06 ▲フロント20インチ、リア21インチのブラック鍛造アルミホイールには、345mm幅のワイドタイヤ(リア)を装着

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シボレー コルベット(現行型)× 全国
文/西川淳 写真/阿部昌也

自動車評論家

西川淳

大学で機械工学を学んだ後、リクルートに入社。カーセンサー関東版副編集長を経てフリーランスへ。現在は京都を本拠に、車趣味を追求し続ける自動車評論家。カーセンサーEDGEにも多くの寄稿がある。

最後のFRモデル、シボレー コルベットの先代モデル(C7)の中古車市場は?

シボレー コルベット

アメリカを代表するスーパースポーツの7世代目。アルミシャシーやFRP製ボディ、レースからフィードバックされたエアロダイナミクスを活用したエクステリアデザイン、インテリアの仕立てなど、アメリカだけでなくワールドマーケットを意識したモデルだ。伝統のスモールブロックを用いたV8 OHVエンジンは直噴化された6.2Lとなっている。ベーシックグレードと高性能なZ51をラインナップ。ハイパフォーマンスモデルのZ06も用意された。なお、2014年にはATミッションが6速から8速へと変更されている。

2023年10月後半時点で、中古車市場には40台程度が流通。価格帯は530万~1550万円となる。Z51だけでなくハイパフォーマンスモデルのZ06やグランスポーツも多いため、中古車平均価格は980万円となっている。希少なMTモデルも数台だが流通している。
 

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文/編集部、写真/GMジャパン